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第二部
@29 拳銃
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ウェイに連れてこられたのは奇妙なところだった。広い地下空間、湿度が高く不快な感じがした。僕は積み上げられた土嚢を見る。ところどころに小さな穴が開いている。
「何かをするには訓練が必要です」
保護眼鏡をつけたウェイが話す。辺りに嗅ぎ慣れない香りが漂っていた。重苦しい壁に囲まれたこの空間は射撃場と呼ばれる。合法的なものなのか僕には聞く勇気がなかった。
「訓練は人間の最大の武器です。我々は自分たちを状況や道具に慣れさすことで最大の力を発揮できるのです」
ウェイは手に持った拳銃の上部分を引く。彼が手を放すと金属音と共にそれは戻った。僕が彼の車で見たのと同じものだ。彼はそれを十メートルほど先の、天井から吊り下げられた丸い的に向けた。
「Open Fire!(射撃をします!)」
ウェイは他に誰もいない周りにそう叫び、空気が揺れるような爆音が響いた。彼は的を撃ち抜いたのだ。床に金色の筒が落ちる。薬莢だ。僕はもうそれが何かを知っている。
「これは9×19mm弾を使用するかなり旧式の拳銃です。現代の銃器のように撃つたびに記録されたり、残弾数を表示したりすることはできませんが機能は充分です」
僕は彼の言う”機能”が何を示しているかということを頭から追い払った。
「どちらからやりますか?」
ウェイは銃を下げて僕らの方を向いた。ユヅハが手を挙げた。
「いいですか、弾が入っていてもいなくても絶対に銃口を自分や他人に向けないでください」
「人を撃つときでも?」
ユヅハの冗談にウェイは微笑んだ。彼はしつこいぐらいに安全のためのルールを説明してからユヅハに銃を手渡した。ユヅハも保護具をつけ、銃を握った。
「撃つまで引き金には指をかけないでください、まずは照準を使ってよく狙って…少し前かがみになった方がいいです」
ユヅハはかなりの時間をかけて照準を合わせた。
「銃をよく握って撃ってください」
銃声が響く。弾丸は的には当たらず、的のかなり右上の土嚢に穴が空いた。ユヅハは結果に不満そうだった。こんどは僕の番だ。
僕も同じように銃を握った。銃把などは樹脂製だったがそれでも重く、小さい頃に遊んだおもちゃの銃とは全く違った。滑り止めのギザギザとした加工が手に食い込む。
僕はウェイに言われた通りに照準を合わせる。二つの点の間に一つの点を合わせ、照星の先端に的の中心を合わせて引き金を引く。視界が震え、手首が上に引っ張られた。
「二人とも初めてにしては上出来です」
薄い煙が立ち込めるなか、ウェイは僕から拳銃を受け取って壁のボタンを押した。吊り下げられた的がレールに沿ってこちらに動き、手前で止まった。的には二つの穴があり、ウェイが撃ち抜いたのは的の中心だった。僕のは的の端の方だった。ほとんど掠めたような形だ。
「射撃の訓練に意味があるとは思えない。人を撃つことは僕たちの計画にはない」
「計画以外の備えも必要」
反論したのはユヅハだった。彼女は銃に魅力を感じているらしく、ウェイの持っている他の銃を触っていた。
「ユヅハの言う通りです。計画外にだって備えるべきです」
僕はユヅハの顔と、彼女の手の中にある銃を交互に眺めた。
「…わかった」
ユヅハの上達は早かった。最初は僕より下手に思えたが、数時間後には歩きながらでも的に当てられるようになっていた。ユヅハは拳銃から空になった弾倉を捨て、新しい弾倉を素早く装填して射撃を再開した。訓練された兵士のような動きに見えた。僕も真似して再装填をしたが、ユヅハやウェイのようには素早くできなかった。
「銃が気に入ったのかい?」
「狙えば当たる。わかりやすくて好き」
「確かに、人間と違って素直だ」
僕は手に持った拳銃を眺めた。これは強力な武器だ。その気になれば指ひとつで他の人間を殺してしまうことができる。僕はこれを使う機会が来ないことを心底願った。
僕とユヅハが話していると頭上からチャイム音が響いた。反応したのはウェイだった。
「来客のようですね。迎えてきます」
どうやらこの場はウェイのものだけではないらしい。ウェイは出入り口に向かう階段を登っていった。しばらくしてウェイと共に下りてきたのは背の低い少女だった。彼女は腹や肩を出した服装だった。
「彼女も計画に参加します」
計画には他の人間も参加するというのは聞いていた。近くで見ると彼女は顔や腹に派手な刺青を入れていた。鼻や臍には銀色のピアスが輝き、切り揃えられた黒髪と対称的だった。藍色戦線の構成員は皆が皆ウェイのように地味な格好をしていると思っていた僕はすこし意外に感じた。
「你好(ネイホゥ)、あんたたちが例の日本人?」
最初の挨拶以外は英語だった。彼女はFRC人、当たり前だがウェイのように日本語を話せるわけではない。彼女は僕たちと意思疎通をするには英語が最適だと判断したようだった。
「ああ、よろしく」
ウェイが僕にしたように僕は手を差し出した。少女はべぇと舌を出した。彼女は舌にもピアスをつけていた。
「リー・ユエムー」
ウェイが無礼をたしなめるように言った。
「はぁい」
リー・ユエムーと呼ばれた少女はウェイにいたずらっぽい笑顔を見せた。彼女とウェイはきっと親交が深いのだろう。
「ねぇ魏邏陽、銃の扱いについてはもう教えたの?」
「ええ、一通り教えました」
僕とユヅハはリー・ユエムーの前で実際に射撃を行った。ぼろくそに僕たちの腕を批判されるのではないかと思ったがそんなことはなかった。
「充分だわ。基本はできてる。ついてきて。審査所について教える」
僕たちは射撃レーンから離れて彼女の講義を聞くようにした。彼女は卓の上に載っていた弾薬を払い落として大きな紙の地図を置いた。砂漠の航空写真だった。写真を横切るように細く黒い道路が走り、その左右にいくつか建造物が見えた。右側には大きなドームがあり、左側の建物は小さく密集していて小さな村のようだった。
「ゴビ砂漠よ。審査所はここにある」
彼女は右側の方の大きな白いドームを指した。
「もう施設内の構造は摑めているのかい?」
「いや、そこまではまだね。侵入した際に邏陽が内部からハッキングをして、施設の構造情報を手に入れるわ」
「フィネコン社の審査所が地下にあるという可能性は? 地下深くにあったら侵入はかなり難しくなる」
ユヅハは手のひらを横にして地表を表し、もう一方の手をその下で握り、地下空間を表した。
「我々はその可能性は低いと見ています。この地域の地盤は地下に大きな空間を作るのには向いていません。それに審査所を置けるほどの地下空間を作ったとしたら近辺にその際の土砂を捨てるか、トラックなどで運ぶ必要があります。周辺に不自然な土砂の捨て場はありませんし、ここの道路から大量のトラックが土砂を運び去ったという記録はありません」
ウェイの返答にユヅハは納得したようだった。
「こっちの建物たちは村かい?」
僕は写真の左側の密集した建物を指差す。真っ白なドームとは違って屋根は赤レンガや茶色といった色味だった。
「うん、五百人ほどの集落ね」
僕はそれを意外に思った。こういった重要な施設は附近一帯が立入禁止だという先入観があったからだ。
リー・ユエムーはもう一枚紙を取り出した。今度はもっとドームを拡大したものだった。隣接した小さめの建物やその出入り口、停まった車両まで見ることができた。施設は広い敷地を持っているが、軍事基地のような厳重さはなかった。彼女は道路を指差す。
「あんたたちはこの道路からトラックに乗って施設に近づくの」
「怪しまれはしないか?」
「通販業者のふりをして近づくことができるわ。すでに何回か集落の人間が注文時の住所を入力し間違えたという体で接近したことがある」
古典的すぎる方法に思えたが、数回も接近に成功している時点で環華人民銀行も警戒はそこまでしていないのだろうか。
「この施設は表向きには”砂漠気候研究センター”ということになっています。実際にいくつも論文を発表していたのでここが審査所だということを特定するのには苦労しました。上手いやり口です」
どうやら環華人民銀行は厳重な警備よりもここが重要な施設であるということが判明しないことに重きを置いているようだった。
「私たちに時間はあまりないわ。計画の詳細について確認しましょ」
「時間がないって…計画の実行はいつなんだい?」
「十日後よ」
「リー・ユエムー、それは早すぎます」
「十日後に施設に広域の電波妨害装置が搬入されることがわかっているわ。警備のためのものだとしたら…妨害電波の下ではあんたたちは外部との通信ができなくなるわ」
ウェイはそれを聞いて考え込んだ。外部からの情報は重要だ。それが遮断されるというのは不利すぎる。しかし十日後というのは準備期間として短すぎる。
「やるしかない」
ユヅハが言う。
「…わかりました。準備を進めましょう」
「あっそうだ!」
リー・ユエムーが何か大切なことを忘れていたようにそう言った。僕たち全員が彼女の方を向く。
「自己紹介を忘れていたわ。私はレイ…いや李閲慕(リー・ユエムー)よ。あんたたちは?」
彼女の服に漢字が浮かび上がった。きっと表面の模様を変えられる服だが、実際に見るのは初めてだった。
「…仁山 コズだ」
「萩原 ユヅハ」
「何かをするには訓練が必要です」
保護眼鏡をつけたウェイが話す。辺りに嗅ぎ慣れない香りが漂っていた。重苦しい壁に囲まれたこの空間は射撃場と呼ばれる。合法的なものなのか僕には聞く勇気がなかった。
「訓練は人間の最大の武器です。我々は自分たちを状況や道具に慣れさすことで最大の力を発揮できるのです」
ウェイは手に持った拳銃の上部分を引く。彼が手を放すと金属音と共にそれは戻った。僕が彼の車で見たのと同じものだ。彼はそれを十メートルほど先の、天井から吊り下げられた丸い的に向けた。
「Open Fire!(射撃をします!)」
ウェイは他に誰もいない周りにそう叫び、空気が揺れるような爆音が響いた。彼は的を撃ち抜いたのだ。床に金色の筒が落ちる。薬莢だ。僕はもうそれが何かを知っている。
「これは9×19mm弾を使用するかなり旧式の拳銃です。現代の銃器のように撃つたびに記録されたり、残弾数を表示したりすることはできませんが機能は充分です」
僕は彼の言う”機能”が何を示しているかということを頭から追い払った。
「どちらからやりますか?」
ウェイは銃を下げて僕らの方を向いた。ユヅハが手を挙げた。
「いいですか、弾が入っていてもいなくても絶対に銃口を自分や他人に向けないでください」
「人を撃つときでも?」
ユヅハの冗談にウェイは微笑んだ。彼はしつこいぐらいに安全のためのルールを説明してからユヅハに銃を手渡した。ユヅハも保護具をつけ、銃を握った。
「撃つまで引き金には指をかけないでください、まずは照準を使ってよく狙って…少し前かがみになった方がいいです」
ユヅハはかなりの時間をかけて照準を合わせた。
「銃をよく握って撃ってください」
銃声が響く。弾丸は的には当たらず、的のかなり右上の土嚢に穴が空いた。ユヅハは結果に不満そうだった。こんどは僕の番だ。
僕も同じように銃を握った。銃把などは樹脂製だったがそれでも重く、小さい頃に遊んだおもちゃの銃とは全く違った。滑り止めのギザギザとした加工が手に食い込む。
僕はウェイに言われた通りに照準を合わせる。二つの点の間に一つの点を合わせ、照星の先端に的の中心を合わせて引き金を引く。視界が震え、手首が上に引っ張られた。
「二人とも初めてにしては上出来です」
薄い煙が立ち込めるなか、ウェイは僕から拳銃を受け取って壁のボタンを押した。吊り下げられた的がレールに沿ってこちらに動き、手前で止まった。的には二つの穴があり、ウェイが撃ち抜いたのは的の中心だった。僕のは的の端の方だった。ほとんど掠めたような形だ。
「射撃の訓練に意味があるとは思えない。人を撃つことは僕たちの計画にはない」
「計画以外の備えも必要」
反論したのはユヅハだった。彼女は銃に魅力を感じているらしく、ウェイの持っている他の銃を触っていた。
「ユヅハの言う通りです。計画外にだって備えるべきです」
僕はユヅハの顔と、彼女の手の中にある銃を交互に眺めた。
「…わかった」
ユヅハの上達は早かった。最初は僕より下手に思えたが、数時間後には歩きながらでも的に当てられるようになっていた。ユヅハは拳銃から空になった弾倉を捨て、新しい弾倉を素早く装填して射撃を再開した。訓練された兵士のような動きに見えた。僕も真似して再装填をしたが、ユヅハやウェイのようには素早くできなかった。
「銃が気に入ったのかい?」
「狙えば当たる。わかりやすくて好き」
「確かに、人間と違って素直だ」
僕は手に持った拳銃を眺めた。これは強力な武器だ。その気になれば指ひとつで他の人間を殺してしまうことができる。僕はこれを使う機会が来ないことを心底願った。
僕とユヅハが話していると頭上からチャイム音が響いた。反応したのはウェイだった。
「来客のようですね。迎えてきます」
どうやらこの場はウェイのものだけではないらしい。ウェイは出入り口に向かう階段を登っていった。しばらくしてウェイと共に下りてきたのは背の低い少女だった。彼女は腹や肩を出した服装だった。
「彼女も計画に参加します」
計画には他の人間も参加するというのは聞いていた。近くで見ると彼女は顔や腹に派手な刺青を入れていた。鼻や臍には銀色のピアスが輝き、切り揃えられた黒髪と対称的だった。藍色戦線の構成員は皆が皆ウェイのように地味な格好をしていると思っていた僕はすこし意外に感じた。
「你好(ネイホゥ)、あんたたちが例の日本人?」
最初の挨拶以外は英語だった。彼女はFRC人、当たり前だがウェイのように日本語を話せるわけではない。彼女は僕たちと意思疎通をするには英語が最適だと判断したようだった。
「ああ、よろしく」
ウェイが僕にしたように僕は手を差し出した。少女はべぇと舌を出した。彼女は舌にもピアスをつけていた。
「リー・ユエムー」
ウェイが無礼をたしなめるように言った。
「はぁい」
リー・ユエムーと呼ばれた少女はウェイにいたずらっぽい笑顔を見せた。彼女とウェイはきっと親交が深いのだろう。
「ねぇ魏邏陽、銃の扱いについてはもう教えたの?」
「ええ、一通り教えました」
僕とユヅハはリー・ユエムーの前で実際に射撃を行った。ぼろくそに僕たちの腕を批判されるのではないかと思ったがそんなことはなかった。
「充分だわ。基本はできてる。ついてきて。審査所について教える」
僕たちは射撃レーンから離れて彼女の講義を聞くようにした。彼女は卓の上に載っていた弾薬を払い落として大きな紙の地図を置いた。砂漠の航空写真だった。写真を横切るように細く黒い道路が走り、その左右にいくつか建造物が見えた。右側には大きなドームがあり、左側の建物は小さく密集していて小さな村のようだった。
「ゴビ砂漠よ。審査所はここにある」
彼女は右側の方の大きな白いドームを指した。
「もう施設内の構造は摑めているのかい?」
「いや、そこまではまだね。侵入した際に邏陽が内部からハッキングをして、施設の構造情報を手に入れるわ」
「フィネコン社の審査所が地下にあるという可能性は? 地下深くにあったら侵入はかなり難しくなる」
ユヅハは手のひらを横にして地表を表し、もう一方の手をその下で握り、地下空間を表した。
「我々はその可能性は低いと見ています。この地域の地盤は地下に大きな空間を作るのには向いていません。それに審査所を置けるほどの地下空間を作ったとしたら近辺にその際の土砂を捨てるか、トラックなどで運ぶ必要があります。周辺に不自然な土砂の捨て場はありませんし、ここの道路から大量のトラックが土砂を運び去ったという記録はありません」
ウェイの返答にユヅハは納得したようだった。
「こっちの建物たちは村かい?」
僕は写真の左側の密集した建物を指差す。真っ白なドームとは違って屋根は赤レンガや茶色といった色味だった。
「うん、五百人ほどの集落ね」
僕はそれを意外に思った。こういった重要な施設は附近一帯が立入禁止だという先入観があったからだ。
リー・ユエムーはもう一枚紙を取り出した。今度はもっとドームを拡大したものだった。隣接した小さめの建物やその出入り口、停まった車両まで見ることができた。施設は広い敷地を持っているが、軍事基地のような厳重さはなかった。彼女は道路を指差す。
「あんたたちはこの道路からトラックに乗って施設に近づくの」
「怪しまれはしないか?」
「通販業者のふりをして近づくことができるわ。すでに何回か集落の人間が注文時の住所を入力し間違えたという体で接近したことがある」
古典的すぎる方法に思えたが、数回も接近に成功している時点で環華人民銀行も警戒はそこまでしていないのだろうか。
「この施設は表向きには”砂漠気候研究センター”ということになっています。実際にいくつも論文を発表していたのでここが審査所だということを特定するのには苦労しました。上手いやり口です」
どうやら環華人民銀行は厳重な警備よりもここが重要な施設であるということが判明しないことに重きを置いているようだった。
「私たちに時間はあまりないわ。計画の詳細について確認しましょ」
「時間がないって…計画の実行はいつなんだい?」
「十日後よ」
「リー・ユエムー、それは早すぎます」
「十日後に施設に広域の電波妨害装置が搬入されることがわかっているわ。警備のためのものだとしたら…妨害電波の下ではあんたたちは外部との通信ができなくなるわ」
ウェイはそれを聞いて考え込んだ。外部からの情報は重要だ。それが遮断されるというのは不利すぎる。しかし十日後というのは準備期間として短すぎる。
「やるしかない」
ユヅハが言う。
「…わかりました。準備を進めましょう」
「あっそうだ!」
リー・ユエムーが何か大切なことを忘れていたようにそう言った。僕たち全員が彼女の方を向く。
「自己紹介を忘れていたわ。私はレイ…いや李閲慕(リー・ユエムー)よ。あんたたちは?」
彼女の服に漢字が浮かび上がった。きっと表面の模様を変えられる服だが、実際に見るのは初めてだった。
「…仁山 コズだ」
「萩原 ユヅハ」
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