普通に発育している座敷童子に取り憑かれたので、とりあえず同棲生活始めます

フクロウ

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一章 第三節

座敷童子、蚊帳の外になる

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 なんとも曖昧な情報に、反応に困ってしまった。メリー自体もしっくりくる言葉が見つからないようで、言語化に戸惑っている。

「なんだよ、それ。帰りたくないから、適当言ってんのか?」

「違うよっ! なんか変なの見かけたのは本当だもん!」

 なんとなく、その妖怪が嘘を言っているかどうかいうのはわかる。それは陰陽師として兼ね備えていなければならない能力だ。
 妖怪というのは人を惑わすのが上手い。だからこそ、言葉の真偽を俺達は直感と経験で判断する。
 
 そして、おそらくメリーは嘘をついていない。ただ、語彙力がなさすぎて状況が把握できない。

「とりあえず、順序建てて話せ。人なのに人じゃないってことは、ソイツの見た目は人間の訳だな? 学生か?」

「あー、うん。周りに友達っぽいのいたから生徒だと思う」

「友達……紛れこんでるのか。ただ、学生として過ごしているのなら、俺が気づくはずなんだが。かぐやは?」

(私も翔也様の学び舎で、何か異物を感じたことはありません)

 おかしな話しだ。人の世に紛れる異物であれば、俺とかぐやがいち早く気づくはず。

 ただし、見つけ出すという意味合いであれば俺達はスペシャリストなのだが、感知をするとなると妖怪の方が優秀なことがある。
 特に、メリーの妖怪としての能力は感知と空間移動という部分に特化している。俺達が見抜けないものに反応している可能性はある。

「そんな曖昧な言い方というのは、妖気は感じなかったってことだよな。霊魂の類いか?」

「いや、霊魂ならあんな風にガッツリ実体化しないっしょー」

「……ふむ。だとしたら、危ういな」

 ある程度話を聞くだけで、どのような怪異かというのはわかる。だが、今回の場合は今いち全容が掴めない。怪異においてわからないというのは、一番危険なのだ。

(……特級妖怪ですか?)

「あり得る話しだ。アイツらに関しては、自身の妖気を完璧に隠すことができる。メリーの表現に一番近いかもしれない」

 どうしたものか。特級ともなると、俺一人で対処できる話しではなくなってくる。それに、今のところ大学で異変はない。悪意がないのであれば緊急性は薄い。

 むしろ、下手に陰陽師の俺が刺激してしまった方が危険性は高まる。

「えっ!? 特級妖怪って、妖気を感じさせないんですか!? じゃあ、今の私と同じ……要するに、私は特級妖怪ーー」

「わら子。今大事な話しをしてるから、ちょっと黙ってろ」

「はい」

 なんか、話しに入れなくて寂しそうに洗濯物をたたんでいるのは横目に見えていた。
 ここぞとばかりに話題に入ってきて一蹴された座敷童子は、また寂しそうに洗濯物をたたみだす。

「……様子みるか」

(そうですね。それか、渚様に応援を頼むかです)

「絶対、やだ」

 とりあえず、現状維持をしながら警戒だけは怠らないようにする。ソイツが動き出したとするなら、不可解な現象が起きたり、行方不明者が出たりするはずだ。その時までに、何かしらの策は準備しておこう。

「えー、つまんないっ! 翔くん、強いんでしょ? ズバッと悪いヤツ、倒しちゃってよ!」

「別に悪者だと決まった訳じゃないだろ。まあ、それなりに役立つ情報だった。警戒は出来るからな。よくやった」

「……!? 私、褒められた……?」

 信じられないとばかりに、メリーは呆然としている。そして、今起きたことがしっかりと頭に繋がると同時にニヤニヤと嫌な笑顔を浮かべ始めた。

「ね、ねえー? 私、偉いことしたんだからご褒美貰っていいよね!」

「ご褒美ってなんだよ」

「ちゅ、ちゅちゅ……チューとか!?」

「帰れ」

「……ほっぺ! ほっぺでいいから!!!!」

 必死すぎる。なんだコイツは。
 童貞の先っちょだけでいいから!と同じ匂いがする。大体、かくやがいるのにそんな要求が通る訳ーー

「だ、だめですっ!!」

 意外にも声があがったのは、隅でせっせと家事に勤しんでいた座敷童子からだった。
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