普通に発育している座敷童子に取り憑かれたので、とりあえず同棲生活始めます

フクロウ

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一章 第三節

座敷童子、悪口言われる

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真刀娑婆訶しんとうそわか

「ちょ、ちょちょちょ! 待ってよ、翔くん! なんで、刀| 出してんの!?」

 メリーさんの話を知っているだろうか。
 電話をかけまくってきては、段々近づいていますよの無駄な報告をしてきた挙句、最終的には不法侵入してくる迷惑極まりない都市伝説だ。

 伝説というものは大抵作り話であり、このメリーさんのお話も同様である。どこかの誰かが作り上げた怪談だ。

 さて、問題はここから。

 妖怪というのは、大雑把に解釈すると「自然現象」であり、人の恐怖心から産まれるものが多い。中には、人からの信仰心を失った神の成れの果ての場合もあるが、コイツは前者だ。
 
 こんなくだらない怪談が世に出歩き、人々は恐怖した。その人間の恐怖心から見事に具現化され、現実として存在している。
 
 要するに、メリーさんの話しは作り話なのだが、メリーさんは実在するのだ。そして、こんなよくわからない矛盾のお話はひとまずどうでもいい。
 とりあえず俺は、この怪談を作った人物を殴り飛ばしてやりたい。

「なあ、メリー。何、普通に不法侵入してんだ。今度、人間のルール破ったら容赦しないって言ったよな?」

「だって、今日はちゃんとインターホン鳴らしたしっ! ちゃんとルール守ったのに、居留守使ったのは翔くんの方じゃん!」

「うるせえ、そこに直れ」

「私、悪くないもんっ! 私、悪くないもんっ! 私、悪くないもんっ!!!!」

 喚き散らすメリーに、刀を構える俺。
 流石に状況が把握出来なかったのだろう。ただ、呆然とそれを眺めていた座敷童子にやっとスイッチが入った。

 さすがにこれはマズいとオロオロしながらも、必死に間に入ってくる。

「ちょ、ちょっと待って下さい! 翔也さんも落ち着いて! とりあえず、刀しまいましょ?」

「……は? 何、このちんちくりん。なんで、翔くん家に女がいるの?」

「ち、ちんくり……ん!?」

 どちらかというと、メリーのために間に入ったはず。それなのに、思いがけない悪口をかまされ座敷童子はフリーズする。

 比較的、幼児体型である座敷童子に対して、メリーは長身でスレンダーのモデル体型だ。まあ、あーだこーだ容姿を説明するより一言で表現しよう。ギャルだ。金髪ギャルだ。

 なぜメリーさんの都市伝説が金髪ギャルとして具現化されたのか。みんな恐怖をする中で、何を考えていたのか。本当に謎である。

「ち、ちんちくりんって……私、確かに身長はないですけど、胸は大きいですがっ!? あなたより!」

「……は? 翔くん、背高いからアンタが並んでも滑稽だよ? 身の程知ったら?」

「なんですか!? 居留守されてるアナタの方が身の程知ったほうがいいですよ!」

「ジャレてただけだし。私達、ラブラブだからこういうイチャイチャだし」

「意味わからないこと言わないでーー」

(お前ら、一回黙れ。まとめて、祓うぞ)

 なんとも不毛なやり取りを一発でおさめた。さすが、我らがかぐやさん。見事なる殺気である。

(どうしますか、翔也様。ご要望とあらば、二体まとめて首と胴体を切り離しますが)

「ひっ!?」 「ひっ!?」

 仲良くビビってる。座敷童子は土下座のモーションに入ろうとし、メリーはいつでも空間転移出来るように準備をしている。

 そんな二人の姿を見て、頭に登っていた血が一気に冷めた。ため息をつきながら、俺は具現化していた太刀を呪符へと戻した。

「……はぁ。とりあえずメリーは今回だけは許してやる。二度とルールは犯すなよ。わら子は、土下座やめろ」

「あ、はい」 「あ、はい」

 二人ともとりあえず身の安全が保証されたことに、素で返事をする。こうして見ると、ただの凸凹コンビだ。漫才ユニットでも組んだら絵になるだろう。

「……ってゆーか、翔くん! 本当にこの女何!? まさか、彼女!? 私という存在がいながら、女作ったの!?」

「そもそも、お前は自分の存在をなんだと思ってるんだよ」

「私達、一晩を共にした仲だよねっ!?」

「そうだな。一晩中、説教かましたな」

 メリーは恨めしそうに座敷童子を睨む。よっぽど悔しいのか、今すぐにでも噛みつきそうな勢いだ。

「あのな、一つ言っておくが。わら子は、彼女でもなんでもない。妖怪だ」

「嘘だ、妖気感じないもん! いつも、男ってそーだよね。自分に都合悪くなると、有り得ない嘘平気でついて! 大体、私に居留守使ったのもやましいことがあったからなんでしょ!? ……なんで、翔くん。私はこんなにも翔くんのこと愛してるのに。ねえ、翔くんの好きなところ一つひとつ言っていこうか……ごめんね。きっと不安にさせちゃったんだよね。あのねーー」

 どうしよう。めんどくせえ。
 やっぱり、祓おうかな。
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