普通に発育している座敷童子に取り憑かれたので、とりあえず同棲生活始めます

フクロウ

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一章 第二節

七福涼香の恋路②

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 私は、七福涼香。
 私の世界はいつだって輝いている。

 海風は、私に纏って離れない。
 光は、私の心を照らしてくれる。
 星はただ私にーー

「涼香、戻っておいで」

「んはっ!? ……あれ? どーしたの、しーちゃん」

「どーしたのも何も、なんかぶっ飛んでたから声かけただけよ。何考えてたのよ」

「えっと、星はただ私に向かって微笑んでくれるの」

「あんた、相変わらず思考ヤバいわね」

 大学内のカフェテリアで、素敵なティータイムを過ごしていたところに声をかけてきたのは、橘しおりちゃん。
 
 しーちゃんは、小学校の時からのお友達。
 そして、私の親友です。

「あ、しーちゃん! 聞いて! この前、翔也くんにお昼ご飯食べに行こうって誘ったんだ!」

「へえ、ついに誘ったんだ。そんで?」

「そんで、断られた!」

「なんで、そんなに嬉しそうなのよ……」

 しーちゃんはため息をつきながら、私の前の席に座る。やれやれ感を出しながらも、私の話をなんだかんだいつも聞いてくれる。そんな優しいところが好き。翔也くんと同じくらい好き。翔也くん、好き。

「お昼ご飯は断られたけど……翔也くん、私の名前知ってたの!」

「大学生とは思えないレベルの恋バナの進捗ね」

「しかも、最後に"またね、七福さん"って言われたの! 本当だよ? ボイスレコーダーでその時の会話録音してたんだけど、聞く?」

「いや、録音するなよ」

 翔也くんとの会話は全て録音しておきたい。あの透き通った、落ち着きのある優しい声をいつでも聴ける。何より、私を認識して、私に向けて声を発しているという事実が形として残る。もう、やばい。

「"またね、七福さん"のところなんか鬼リピ!
千回以上聞いたけど、まだドキドキ止まらないんだ!」

「友達からそんな狂気的な行動暴露されても、反応に困るのよ」

「しかも、またねってことはさ……また会おうねってことだよね!? 次のデートのお約束みたいなもんだよね!?」

「ちょっと落ち着きなさい」

 しーちゃんが頭を抱えている。ちょっと私の話しばかりし過ぎてしまったかもしれない。
 恋愛も大事だけど、友情も大事だ。しーちゃんのお話しもちゃんと聞かなければ。

「あ、えっと。ごめんね。えー……その、しーちゃんは最近どう? あ、髪切った?」

「一ミリも切ってない。話のフリ方が雑すぎるのよ。……はぁ。とにかく、あんた暴走する癖あるから気をつけなさいよ」

「大丈夫だよー、私は至って普通の女の子だよ」

「そう言うヤツが一番ヤバいから。あんた黙ってれば可愛いって有名なんだから。勿体無い」

「私は翔也くん以外からの評価なんてどうでもいいもん」

 むしろ勿体ないのはしーちゃんの方だ。
 しーちゃんは格好いい。サラサラの長髪、長身のスレンダーさんで、モデルみたいにスタイルがいい。外人顔負けの整った顔立ちをしていて、ファッション雑誌のトップを飾っていてもおかしくない。
 ……なのに、浮いた話は一つもなく、いつも私を構ってくれている。

「……あと、一つ気になってんだけどさ」

「んー?」

「なんでそんなに、土御門のこと好きなの? 接点なんかなかったじゃない。なのに、一時期からアホみたいに翔也くん、翔也くんって。何かあったの?」

「なんでって……」

  なぜ、こんなにも翔也くんのことが好きなのか。……なんでだろう。いつからだろう。こんなにも胸がはち切れるほどに好きだと思うようになったのは。

 ……わからない。わからないけどーー

「私は、翔也くんが好き。好きだから好きなの。これは絶対間違いない」

「……そっか。まあ、いいんじゃない? あんたが男を好きになるなんて初めてだし。応援はしてるよ」

「えへへ、ありがとー」

 しーちゃんはどこか寂しげな目をしている。気丈なタイプだけど、割と顔には出やすい人だ。腐るほど一緒にいた。姉妹みたいに生きてきた。だから、なんとなくしーちゃんの気持ちはわかる。

 私もしーちゃんに彼氏が出来てしまったら応援はするけれど……きっと同じような目をしてしまうだろう。

「ねえ、しーちゃん。男の子の中の一番は、翔也くん。でも、女の子の一番はしーちゃんだよ。これも絶対間違いない」

「何よ急に……バカね。そういえば、土御門、今日同じ講義だったはずなのに、姿見なかったよ。休みかもね」

「うえっ!? あり得ないよ! あのバカ真面目ガリ勉翔也くんが講義休むなんて!」

「……あんた、本当に土御門好きなの?」

 三度の飯より講義好き。四十度の熱発でも意識朦朧としながら最前席でノートをとることをやめなかった翔也くんが……欠席。

 最近なんか様子がおかしいとは思ってたけど。これは、異常事態だ。

「あわわわ、どうしようどうしよう。大丈夫かな。住所の方は調べてあるから、家に行ってみる……? いや、向かい側の建物から双眼鏡で中の様子を伺うか……?」

「急に犯罪の臭いしだしたんだけど」

「こうしちゃいられない! 私、ちょっと行ってくーー!?」 (ガシッ)

「マジでやめなさい。ほらっ、次の講義始まるからそろそろ行くよ」

 襟首をつかまれ、引きずられるように教室まで連れていかれる。この体格差で抗える訳がない。というより、しーちゃんの顔がマジだから抵抗してはいけない。

 勝てないことを悟った私は、静かにイヤホンを耳にハメ、翔也くんの声を聞くのであった。
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