普通に発育している座敷童子に取り憑かれたので、とりあえず同棲生活始めます

フクロウ

文字の大きさ
上 下
9 / 18
一章 第二節

土御門渚

しおりを挟む
 
 土御門渚《つちみかどなぎさ》。土御門本家の長女だ。
 
 黒の長髪をおさげに結っていて、黒の着物、黒の袴、黒の草鞋、全身黒づくめの衣装を身に纏っている。そして、闇の中に恒星のように浮かぶ真っ赤な瞳は恐ろしいほど透き通っている。

 この緋眼と呼ばれる特殊な瞳を持つ陰陽師は術師の中でも特別であり、緋眼持ちの術師は大抵伝説として残っている。

 そして渚も例外ではない。
 土御門家の中……いや、現世の中でトップレベルの術師だ。そしてーー

「もー、つれないなあ。感動の再会なのに、お姉ちゃん悲しいぞ?」

 俺の実姉だ。

「そのおちゃらけた態度が鼻につくんだよ。どうすんだよ、窓破壊しやがって」

「呪符使えばいいじゃーん。まあ、おふざけモードが嫌なら早速本題に入ってもいいけど」

 全く緊張感がなくへらへらしていた渚から、笑顔が消える。その比較的小さな体躯からは想像できないほどの重圧が放たれる。

 そして、その影響をモロにうけたのはこの中で一番非力な存在だ。

「う……うあ。はっ……はあ……」

(落ち着け、低級妖怪。ゆっくり深呼吸していろ)

 妖怪として本能的な部分で恐怖を感じているのだろう。せいぜい人の家屋に取り憑くだけが能力の低級妖怪が、対峙出来るような人物ではない。

 渚の前では身動きできず、呼吸もできず、命乞いさえ出来ないまま祓われる。そんな怪異達をずっと見てきた。

「翔ちゃん。なんで、妖怪と一緒にいるのかなー。しかも、かぐやちゃん使ってソイツ守ったよね」

「なあ、渚。こんな低級妖怪の対応はお前の仕事じゃないだろ。普通の陰陽師でもスルーするレベルだぞ。だからーー」

「質問に答えろよ、翔也」

 真っ赤な瞳で俺の心臓を射抜かれたようだった。全身から冷や汗が一気に噴き出る。そして、ある事実が脳裏によぎる。

 俺は絶対に渚には勝てやしない。

 無言のまま渚を睨みつけるのが精一杯だった。そんな俺を不憫に感じたのか。圧力を緩ませ、渚は残念そうにため息をつく。

「はぁ。まがりなりにも、土御門家出身の陰陽師が妖怪と一緒にいる。ましてや、祓うどころか守るなんて……何してるかわかってるの?」

「……そのために、俺は土御門家を出たんだ。気に食わねえなら、かかってこいよ。バカ姉貴」

「はっ、愚弟だねえ。かぐやちゃんはいいのかな? 大好きな翔也様、このままじゃ死んじゃうよ」

 俺に何を言っても無駄だと諦めたのだろう。
 俺の生殺与奪を脅しに使うターゲットとしては、かぐやが最適だと判断したようだ。

 だが、それは見当違いの話だ。ウチの式神はそんなにヤワではない。

(私は、この妖怪を守れと翔也様に言われました。この身が滅びようと、私はそれを遂行するだけです)

「……おバカな陰陽師には、おバカな式神がつくんだねえ。まあ、いっかー」

 これが実弟に対して与えた唯一のチャンスだったのだろう。それを棒にふったんだ。

 そして、ここから先はもう何を言っても一切通用しない。そんな土御門家の掟は一つ。
 
 問答無用だ。

「じゃあ、死ね」

 真っ赤な瞳が冷たく輝いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...