7 / 18
一章 第二節
日常、終わる
しおりを挟む「逆に、翔也さんにとっての幸せってなんなんですか?」
「改めて、幸せって何?と問われると困るものがあるな。……あー」
頭によぎったことがある。
幸せというよりも、願いだ。
そして、その願いはきっとどんな力を持ってしても叶うことはない。それでも、俺の幸せはその願いが叶った先にあるのかもしれない。
そんなことを考えていると、その願いに限りなく関わりが深い座敷童子の顔をずっと見つめていた。
「どうしました? 私のことそんなに見つめて……はっ!? やっぱり私の身体を!? 同棲生活で私の魅力に気づいてしまうことは仕方ないにしても、そ、そんな肉欲を満たしての幸せなんてーー」
(翔也様に指一本でも触れたら、跡形残さず消すぞ。低級妖怪)
「ごめんなさい」
洒落にならないマジの殺気を久々に感じた座敷童子は、さすがに大人しくなる。
助けを求めようとしているのか、俺に視線を送ってくるが、俺は今だに難しい顔をしていたのだろう。
「……どうしました、翔也さん? 大丈夫ですか?」
その表情から流石に空気を読んだのか、心配をされてしまった。人間が妖怪に心配をされるだなんて、本来はあり得ない話だ。
「なんでもねえよ。とりあえず、俺は地道にお前らに説教し続けるわ」
「えっと……どういうことでしょう?」
(それより、早くここから出ていく方法を考えろ。いつまでもここにいられたら、迷惑だ)
まだ色々と疑問が残っているようだったが、かぐやのツンとした態度と発言に意識はそっちに言ったようだ。
少し頬をふくらませながら、座敷童子は反論をする。
「私少しは役にたってますよ! 翔也さんも色々と助かってると言ってくれましたし。少なくとも迷惑なんて……」
(家事がどうとかそういう話をしているのではない。翔也様がどれだけのリスクを負って、お前をここに置いてやってると思っているんだ)
「……リスク?」
かぐやはため息をつく。
そのまま話を続けようとしたが、俺の視線に気づいたのだろう。"あんまり余計なことを話すな"というメッセージを汲んだかぐやは、そのまま何も言わずに口をつぐんだ。
「……もしかして。私、本当に迷惑ですか?」
「別に迷惑じゃねえよ。さっきも言っただろ、助かってるって。余計なこと気にしてなーー」
話の途中で、空気が揺れるのを感じた。
俺の術式に、確実に異物が引っかかった。
これが、何を意味するか。
答えは単純。緊急事態である
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?


夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる