魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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正面突破

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ドゴーーーーーン!!!

何処からともなく鳴り響く爆音。
それと同時に大地が大きく揺れ動く。
左右に揺られ立っていることも難しい状況の中で咄嗟に周囲の木々に掴まる。


「ちょっ…ちょっと、何なのよこの揺れは」

「何なんすか!何なんすか!」

「うわわわわ…」

「皆さん落ち着いてください」


突然の出来事にパニック状態となるスズネたちを落ち着かせようと声を掛けるユニ。
当然、彼女自身も状況を理解しているわけではない。
それでも、王族として育てられ、どのような状況であろうとも冷静さを失わぬようにという亡き父の言葉を胸に懸命にそう努めていたのだ。
そして、数秒の後ようやく揺れが収まりをみせる。。


「はぁ~…ようやく止まったわね」

「いったい何だったんだろうね」

「誰かがとんでもない魔法でも放ったんすかね?」

「何じゃと!?とんでもない魔法・・・。わっちと勝負しろーーー!!」

「ラ…ラーニャ落ち着いて。魔法かどうかも分からないし、そ…それに私たちは先を急がないと…」

「そうですよラーニャ。僕たちには時間が無いんです。今は一刻も早く城に ──────── 」


魔法と聞いて黙っていられないラーニャが大騒ぎを始め、それを宥めようとする他のメンバーたち。
当然ラーニャも今がそれどころではないことなど重々承知している。
それでも爆音の正体が気になるようでソワソワが止まらない。
その時、そんな彼女の様子を見かねた師匠がそっと声を掛ける。


「おい、ラーニャ。いちいち雑魚に気を取られるな。最強はここにいる。お前は俺の魔法だけを見ておけ」


最愛の男からの言葉。
その威力は絶大であり、ラーニャの表情は一気に明るいものへと変わる。
彼女にはクロノの姿がキラキラと輝いて見え、自分を想うその気持ちを嬉しく思うのであった。
しかし、実際のところはそうではない。
ただでさえ面倒な戦い。
他人同士の争いなど何ひとつとして興味は無い。
“両軍まとめてこの山ごと消し飛ばしてやりたい” ───── そんな思いを抱えながらここまで付いてきたのだが、そこで獣風情が“王”だのとほざき、ヒト族ごときが“最強”だのと言って戦っている。
そんな勘違いをした愚か者どもに誰が“一番”なのかをその身に刻み込んでやらねば気が収まらない。
そして、それを実行するためにはこんな所でチンタラしているわけにはいかないのだ ───── が、そんなことは彼女には関係ないようである。


「フフフフフッ。そうか、そうか。『俺だけを見ろ』。フフフフフッ。旦那様も大胆になったものじゃな」

「はぁ?俺は“魔法を”見てろと」

「まぁ~まぁ~そう照れんでもいいではないか。皆の前でそのようなことを。フフフフフッ」

「・・・・・」


とんでもない勘違いをされたものだが、もう先を急げるのであれば何でもいい。
そう言いたげな表情を見せるクロノと共にその心中を察してあえて声を掛けることを止めたスズネたちなのであった。


「皆さん、王城はもう目と鼻の先です。急ぎましょう」


ユニの言葉に促されて再び山を駆け上がる宿り木。
そうして、とうとう獣王国ビステリアの王城の姿をその目に捉えたのであった。



─────────────────────────


「皆さん、あれが獣王国ビステリアの王城です」


そう言いながらユニが指差した先に現れたのは、周囲を山々に囲まれた窪地の中にそびえ立つ城であった。
そして、城の入口である城門の前には五十名を超える戦士たちが陣取っていたのだった。


「うわぁ~…めちゃくちゃいっぱいいるっすよ」

「ユニさん、私たちはこれから何処に向かうんですか?」

「私の予想が正しければ、恐らくゼリックとアーサーは闘技場にいるはずです。誰にも邪魔されずに一対一で戦うのであればそこしかありません。そして・・・」

「ん?そして?」

「いえ…その…」


そこまで話して急にバツが悪そうな表情をみせるユニ。
その様子をスズネたちは不思議そうに眺めた。


「ゼリックたちがいる闘技場へ行くためには城の敷地内を通るのが最短なのですが・・・。まさかあんなに戦士がいるとは思っていませんでした。私のミスです。本当に申し訳ありません」


自身の予想を遥かに超える人数が待ち構えていたことに申し訳なさを感じてスズネたちに対して深々と頭を下げたユニ。
どうやら多くても城門の門番が四~五名、城壁の上に見張りが二~三名ほどだと考えていたようだ。
実際、平時の獣王国ではそれ以下の人数が配置されているのだが、今は戦時である。
そして、それに加えて万が一にもアーサーとの決闘を邪魔させないためにと今回はゼリックがかなり多くの戦士を配置させたのだった。


「そ…そんな!?ユニさん、頭を上げてください。私たちだってただで通れるなんて最初から思っていませんでしたから」

「そうよ!アタシたちだって戦いたくてウズウズしてんだから、一人や二人じゃつまんないわよ」

「いやいや、それはミリアだけっすよ」

「本当にいい加減にしてください。僕たちは獣王ゼリックを止めにきたんですからね。目的を見失わないでくださいよ」

「そんなこと分かってるわよ!でも、結局のところあいつらを蹴散らさないといけないんだから別にいいでしょ」


ここまで敵軍との交戦は一度もない。
それでも今回はあくまでもスズネの護衛としてきているわけで、自ら剣を抜くようなことはなく、ただひたすらに我慢してきた。
そんな中でようやく巡ってきた戦いの機会。
ミリアは冷静さを失わないように極めて努めてはいるものの、その気持ちはかなり前のめりになっていた。


「あ…あの、闘技場に向かうのは分かったんだけど、あの数の敵をどうやって突破するつもりなの?」


ここまで王城を死守する戦士たちと戦うことを前提に話が進んできたのだが、当然そのための作戦など考えられていない。
それを見透かしたようにセスリーが仲間たちに問い掛ける。


「あ?そんなもん ──────── 」

「わっちの魔法で吹き飛ばしてくれるわ!!」

「「「「「 ダメ(だよ・よ・っす・です)!!!!! 」」」」」


クロノのセリフを横取りし、自信満々に胸を張るラーニャ。
確かに魔法で敵を一掃出来るのであれば戦いを最小限に抑えることが出来るのだが、今回は王城の敷地内を通って進まなければならないため、城門や城壁を破壊するわけにはいかない。
それ故にラーニャの提案は満場一致で即却下されたのだった。


「まぁ~普通に考えて正面突破しかないわね」

「そうですね。僕もここは正攻法しかないと思います。僕とミリアとシャムロムが前衛として先行し、ラーニャとセスリーに後方から援護をしてもらい道を開きます。その隙に三人は一気に城門を突破してください」

「でも、それじゃみんなは ──────── 」

「ちょっと、スズネ!アンタ…まさかアタシたちがあんな前線にも行かせてもらえないような残り物に負けるとでも思ってんの?余裕で制圧してやるわよ!!」

「ウチも頑張るっす」

「わ…私も精一杯やります」

「わっちがいれば何の心配もいらんのじゃ」

「みんな・・・」


敵の数は五十を超え、対するこちらの戦力はたった五人。
一見すると無謀ともいえる作戦。
それでも事態は一刻を争う。
迷っている時間などない。
そんな仲間たちの思いを受け取ったスズネは、一人ひとりと視線を合わせた後、静かに頷く。


「よし。みんな行こう!」

「「「「「 おう!!!!! 」」」」」


こうして覚悟を決めた宿り木。
ゼリックとアーサーが戦う闘技場を目指し、王城へ向けて決死の突撃を開始したのであった。




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