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帰還
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「はぁ~・・・」
「どうしたんだい?ユニ」
「お父様…いえ、兄様は今頃どうしているのかと思っていただけです」
「アハハハハ。まだゼリックが旅立って一週間だぞ。少なくとも数年は旅をすると言っておったではないか」
「はぁ~、何年も兄様に会えないなんて辛すぎます」
「一週間でこの有り様だと先が思いやられるな」
ゼリックが獣王国ビステリアを出発してから一週間が経ち、王女であるユニは改めて愛する人の存在の大きさを実感しつつ同時に計り知れない消失感を前に気を落としていた。
そしてそれはユニに限ったことではなく、決して口にすることはしないが獣王レオニスを始めとする獣王国に住まう多くの者たちが同じ様に感じていた。
半年後 ──────── 。
一年後 ──────── 。
さらに三年、五年と時は流れた。
その時の流れと共に獣王国の民たちの中からゼリックの存在は少しずつ薄らいでいった。
彼女を除いて ───── 。
「はぁ~・・・」
「どうしたんだい?ユニ。大きな溜め息を吐いて」
「お父様…。兄様はまだ帰ってこないのでしょうか?もう五年ですよ」
「まだ五年じゃないか」
「まぁ~お父様ったら!“まだ”ではありません!“もう”です!!それに、兄様ったらこの五年の間に手紙の一つもくださらないんですよ…」
「まぁ~まぁ~そう言ってやるな。風の噂ではヒト族の国ガルディアで『剣聖』と云われている男に師事していると聞いた。変わらず剣の鍛錬に勤しんでいるのだろう。知らせがないことが良い知らせだ」
「そ…それはそうかもしれませんが・・・。でも、近況くらいは知らせてもらいたいものです」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
祖国である獣王国ビステリアを出てから五年が過ぎようとしていた頃、ゼリックは剣聖ミロクの下での修行を終えようとしていた ──────── 。
修行が開始された当初こそ剣も持たせてもらえなかったのだが、一ヶ月が過ぎた頃より剣を使うことを許可され、ひたすらに素振りと瞑想を繰り返す日々に明け暮れた。
姉弟子であるメリッサからは早すぎると愚痴を言われることもあったが、その当時すでに『剣聖』と謳われていたミロクからしてもゼリックの持つ『才』は特別に見えたのかもしれない。
そして修行開始から三ヶ月後にはメリッサとの乱取りが許可された。
しかし、それは乱取りとは名ばかりのメリッサによる一方的な技の練習であり、受けるばかりのゼリックは反撃することすらさせてもらえなかった。
それでも半年を過ぎる頃には少しずつ反撃出来るようにもなり、修行開始から一年が経つとメリッサと打ち合えるほどになっていた。
そして、その頃からゼリックは冒険者であったメリッサに付いてAランクやSランクの魔獣討伐クエストに参加しさらに腕を磨いていった。
(あくまでもメリッサに付いて行くだけであり、ゼリック自身は冒険者になることはなかった)
そうして獣王国の中にいただけでは絶対に味わうことの出来なかった濃密な時間を過ごしたゼリックは、五年という歳月を経て師匠であるミロクより今後の身の振り方を問われることに。
このままここで修行を続けるのか ──────── 。
それとも、また新たな道へと進むのか ──────── 。
ゼリックの答えは後者であった。
祖国である獣王国ビステリアを出たことによってたくさんの刺激を受けて成長することが出来た。
そうした経験の中で、彼の中にもっと広い世界を見てみたいという想いが日に日に大きく強くなっていったのだ。
そして、そんな愛弟子の想いを察していたからこそ、ミロクはあえてそのような質問をしたのだった。
「ホッホッホッ。それでは達者でな、ゼリック」
「はい。先生には本当にお世話になりました。世界を見て回り、さらにこの剣を強くしていきます」
「カーーーッ、まだまだ早ぇ~よ。俺より弱ぇ~くせに先にやめてんじゃねぇ~よ」
「はぁ~…最後まで小言ですか。確かに僕はまだメリッサさんよりも弱いですが、強くなるために世界を見て回るんです。次に会った時には必ず勝ちますよ!」
「ハッ!この五年で随分な口を利くようになったじゃねぇ~か。まぁ~いい・・・もし次会った時に弱くなってたら ───── 殺す!!」
こうしてミロクの下での修行を終えたゼリックは、その足で大陸中を見て回り、たくさんの人と出会い、いろいろなモノを見て感じていったのだった。
そして、ミロクの下を離れてから五年、祖国を出てから十年の時を数え、ついにゼリックが獣王国ビステリアへと帰還する。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「大変だーーー!急報ーーー!!急報ーーーーー!!!」
「おい、いったいどうしたんだ?」
「ゼリックが…ゼリックが帰ってきた!」
「おお!それは本当か!!すぐに獣王様に知らせてくる」
獣王国ビステリアを出てから十年後。
武者修行のために国外へと出ていたゼリックが十二名の仲間を連れて祖国への帰還を果たす。
そして何を隠そうこの十二名こそが、後に『十二支臣』と呼ばれる者たちなのである。
─────────────────────────
獣王国ビステリア王城 ~ 玉座の間 ~
「おお~ゼリック、よくぞ帰ってきてくれた」
「お久しぶりでございます、獣王様。私どものためにこのような場を設けて頂きありがとうございます」
「何を言うか。私にとってそなたは息子も同然。それに国中の者たちがそなたの帰りを心待ちにしておったのだ」
待ちに待ったゼリックの帰還に笑みを溢し喜ぶ獣王レオニス。
その眼前には久々の再会を喜ぶゼリックと、その後方に十二名に獣人が横並びに並んでいた。
「して、そちらの者たちは?」
「はい。この者たちは私が大陸中を旅した中で出会った仲間たちです」
「お~そうであったか。そなたたちも長旅ご苦労であった。獣王国ビステリアはそなたたちの来訪を歓迎する」
「獣王陛下よりの歓迎の意、痛み入ります」
「それでは堅苦しい挨拶は終わりにしよう。今日は宴だ!」
こうしてゼリックの帰還を祝うために催された獣王国中を巻き込んだお祭り騒ぎの大宴会が三日三晩にかけて開かれたのであった。
「どうしたんだい?ユニ」
「お父様…いえ、兄様は今頃どうしているのかと思っていただけです」
「アハハハハ。まだゼリックが旅立って一週間だぞ。少なくとも数年は旅をすると言っておったではないか」
「はぁ~、何年も兄様に会えないなんて辛すぎます」
「一週間でこの有り様だと先が思いやられるな」
ゼリックが獣王国ビステリアを出発してから一週間が経ち、王女であるユニは改めて愛する人の存在の大きさを実感しつつ同時に計り知れない消失感を前に気を落としていた。
そしてそれはユニに限ったことではなく、決して口にすることはしないが獣王レオニスを始めとする獣王国に住まう多くの者たちが同じ様に感じていた。
半年後 ──────── 。
一年後 ──────── 。
さらに三年、五年と時は流れた。
その時の流れと共に獣王国の民たちの中からゼリックの存在は少しずつ薄らいでいった。
彼女を除いて ───── 。
「はぁ~・・・」
「どうしたんだい?ユニ。大きな溜め息を吐いて」
「お父様…。兄様はまだ帰ってこないのでしょうか?もう五年ですよ」
「まだ五年じゃないか」
「まぁ~お父様ったら!“まだ”ではありません!“もう”です!!それに、兄様ったらこの五年の間に手紙の一つもくださらないんですよ…」
「まぁ~まぁ~そう言ってやるな。風の噂ではヒト族の国ガルディアで『剣聖』と云われている男に師事していると聞いた。変わらず剣の鍛錬に勤しんでいるのだろう。知らせがないことが良い知らせだ」
「そ…それはそうかもしれませんが・・・。でも、近況くらいは知らせてもらいたいものです」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
祖国である獣王国ビステリアを出てから五年が過ぎようとしていた頃、ゼリックは剣聖ミロクの下での修行を終えようとしていた ──────── 。
修行が開始された当初こそ剣も持たせてもらえなかったのだが、一ヶ月が過ぎた頃より剣を使うことを許可され、ひたすらに素振りと瞑想を繰り返す日々に明け暮れた。
姉弟子であるメリッサからは早すぎると愚痴を言われることもあったが、その当時すでに『剣聖』と謳われていたミロクからしてもゼリックの持つ『才』は特別に見えたのかもしれない。
そして修行開始から三ヶ月後にはメリッサとの乱取りが許可された。
しかし、それは乱取りとは名ばかりのメリッサによる一方的な技の練習であり、受けるばかりのゼリックは反撃することすらさせてもらえなかった。
それでも半年を過ぎる頃には少しずつ反撃出来るようにもなり、修行開始から一年が経つとメリッサと打ち合えるほどになっていた。
そして、その頃からゼリックは冒険者であったメリッサに付いてAランクやSランクの魔獣討伐クエストに参加しさらに腕を磨いていった。
(あくまでもメリッサに付いて行くだけであり、ゼリック自身は冒険者になることはなかった)
そうして獣王国の中にいただけでは絶対に味わうことの出来なかった濃密な時間を過ごしたゼリックは、五年という歳月を経て師匠であるミロクより今後の身の振り方を問われることに。
このままここで修行を続けるのか ──────── 。
それとも、また新たな道へと進むのか ──────── 。
ゼリックの答えは後者であった。
祖国である獣王国ビステリアを出たことによってたくさんの刺激を受けて成長することが出来た。
そうした経験の中で、彼の中にもっと広い世界を見てみたいという想いが日に日に大きく強くなっていったのだ。
そして、そんな愛弟子の想いを察していたからこそ、ミロクはあえてそのような質問をしたのだった。
「ホッホッホッ。それでは達者でな、ゼリック」
「はい。先生には本当にお世話になりました。世界を見て回り、さらにこの剣を強くしていきます」
「カーーーッ、まだまだ早ぇ~よ。俺より弱ぇ~くせに先にやめてんじゃねぇ~よ」
「はぁ~…最後まで小言ですか。確かに僕はまだメリッサさんよりも弱いですが、強くなるために世界を見て回るんです。次に会った時には必ず勝ちますよ!」
「ハッ!この五年で随分な口を利くようになったじゃねぇ~か。まぁ~いい・・・もし次会った時に弱くなってたら ───── 殺す!!」
こうしてミロクの下での修行を終えたゼリックは、その足で大陸中を見て回り、たくさんの人と出会い、いろいろなモノを見て感じていったのだった。
そして、ミロクの下を離れてから五年、祖国を出てから十年の時を数え、ついにゼリックが獣王国ビステリアへと帰還する。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「大変だーーー!急報ーーー!!急報ーーーーー!!!」
「おい、いったいどうしたんだ?」
「ゼリックが…ゼリックが帰ってきた!」
「おお!それは本当か!!すぐに獣王様に知らせてくる」
獣王国ビステリアを出てから十年後。
武者修行のために国外へと出ていたゼリックが十二名の仲間を連れて祖国への帰還を果たす。
そして何を隠そうこの十二名こそが、後に『十二支臣』と呼ばれる者たちなのである。
─────────────────────────
獣王国ビステリア王城 ~ 玉座の間 ~
「おお~ゼリック、よくぞ帰ってきてくれた」
「お久しぶりでございます、獣王様。私どものためにこのような場を設けて頂きありがとうございます」
「何を言うか。私にとってそなたは息子も同然。それに国中の者たちがそなたの帰りを心待ちにしておったのだ」
待ちに待ったゼリックの帰還に笑みを溢し喜ぶ獣王レオニス。
その眼前には久々の再会を喜ぶゼリックと、その後方に十二名に獣人が横並びに並んでいた。
「して、そちらの者たちは?」
「はい。この者たちは私が大陸中を旅した中で出会った仲間たちです」
「お~そうであったか。そなたたちも長旅ご苦労であった。獣王国ビステリアはそなたたちの来訪を歓迎する」
「獣王陛下よりの歓迎の意、痛み入ります」
「それでは堅苦しい挨拶は終わりにしよう。今日は宴だ!」
こうしてゼリックの帰還を祝うために催された獣王国中を巻き込んだお祭り騒ぎの大宴会が三日三晩にかけて開かれたのであった。
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