魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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雷獣

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バチンッ…バチッ…バチチチチ ──────── 。

⦅ん?なんだアレは?雷か?明らかに空気が変わったな。しかし、あれは・・・⦆


「ハァ…ハァ…ハァ…」


ついに雷獣の力を開放したゼリック。
黄金に輝くオーラと共にバチバチと音を立てるいかづちをその身に纏っている。
しかし、その様子は明らかに息が上がり苦しんでいるようであった。

⦅フゥー、今で開放30%というところか。少し慣らすためにも試運転が必要だな⦆


「あれが雷獣の力か」

「はい。まだ完全には使いこなせてはいないようです。まぁ~三割程度といったところでしょうか」

「あれほどのエネルギーを放っておいてまだ三割か。本当に先が楽しみだな」

「フフフフフッ。お二人ともようやく兄様の凄さをご理解されたようですわね!あの姿になった兄様のスピードには誰もついては来れませんわ!!」

「アハハハハ。それではその実力をしかと拝見させてもらおうか」



─────────────────────────


「さて・・・お待たせしました」

「まだ奥の手があったとは。それでは最終ラウンドといこうか!」


雷獣の力を開放したことにより獣人族特有の闘争本能が剥き出しとなりウズウズし始めるゼリック。
そして、それに呼応するようにパンサーも稀少な雷獣の力を前にしてワクワクした様子を見せるのであった。

雷の化身とも云われる雷獣。
長い獣人族の歴史においてもその存在が確認されたのは後にも先にも一度だけ。
雷獣とは、獣人族にとってまさに伝説であり歴史上の存在なのだ。
それ故にその能力について知る者はおらず、ましてや実際に戦闘している姿を見るとなるとその場にいる全ての者たちが興奮せざるを得ないのであった。


「おお~あれが雷獣の力か…」

「雷を纏っているのか?」

「本当に伝承通りの“雷の化身”であるならばまさに天災だぞ」

「いったいどんな戦いをするんだろうか」


試合を見守る観客たちが固唾を呑む中、いよいよ最終ラウンドのゴングが鳴る。


「フゥーーー・・・」


グググッ ──────── ドガッ!!


先に仕掛けたのはゼリック。
その凄まじい踏み込みの力によって地面がえぐれる。
そして、巨大な爆発音と共に巻き上がった土煙を残しゼリックの姿が消え ───── 次の瞬間、リングの中央で両者が激突する。

キーーーン!! ───── グググググッ。

⦅なんてパワーだ…。先ほどまでとは桁違いだな⦆


「フーーーッ、フーーーッ」


ゼリックの様子は明らかに異常をきたしていた。
息は荒く、眼光は鋭く目は見開いている。
そして、これまでの洗練され整えられた剣筋からは想像出来ないほど荒々しい剣撃を打ち下ろす。
それに対して虚をつかれた形となったパンサーは防戦一方となり懸命にそれを捌いていく。
しかし、徐々にそのスピードに遅れを取るようになり、ついに身体ごと大きく弾き飛ばされたのだった。

───── ズズズッ ───── ザザーーーッ。


「これは・・・認識を改めなければならないな」

「フーッ、フーッ、フーッ」


ドーーーン!! ──────── 。

距離を取り戦局を整え直そうとするパンサーに対して間髪入れずに距離を詰めて息つく暇を与えないゼリック。
まるで稲妻のような猛攻にさすがのパンサーも劣勢に追い込まれていく。

キーーーン ─── キーーーン ─── キーーーン ─── 。


「ウッ…グッ…」


ガン!(バチッ) ─── ガン!(バチッ) ─── ガン!(バチチッ) ─── 。

⦅なんだ?俺の反応が遅れているのか?⦆

バキンッ!! ────── シュタッシュタッシュタッ。


異変を感じ取ったパンサーは力任せにゼリックを払い飛ばした後、急いで後方へ下がり状況を確認する。

グッパッ、グッパッ。

右手を閉じては開きを繰り返す。
微かだが動き出しが鈍い。
どうやら微弱な電撃を受け続けたことにより全身が痺れ反応が遅れていたようだ。


「なるほど。剣に雷を纏わせていたのか」

「さすがに気づきましたか。もう少し削りたかったんですけどね」

「いやいや、その若さで大したものだ。それではこちらも少々本気を出させてもらおうか」


⦅まだ先があるのか…。現役最強は伊達ではないな。でも、雷獣の力もだいぶ身体に馴染んできている。この調子なら ──────── ⦆

しかし、このゼリックの淡い思いは儚くも砕け散ることとなる。


「ハァ~・・・ハァ~・・・ハァ~・・・」


ブンッ ─── ブンッ ─── ブンッ ─── 。


「どうした?息が上がってきているぞ。その状態を保つのも一苦労なようだな」

「ハァ…ハァ…ハァ…。ご心配には…及びませんよ…」


キーーーン! ─── キーーーン! ─── キーーーン! ─── 。

時間の経過と共に攻勢に出ていたゼリックの勢いに陰りが見え始める。
雷獣の力を開放した当初こそ面をくらって後手に回ったパンサーであったが、徐々にそのスピードにも攻撃の威力にも慣れ始め、防戦一方の状況から一転して攻勢に出るのだった。
そして、そこから剣戟の鋭さや身体のキレもゼリックを上回り始めると一気に形勢が逆転したのであった。

ガクッ ──────── 。


「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」


そして雷獣の力を開放してから二十分後、とうとうゼリックの足が止まってしまう。
膝から崩れ落ち、片膝を立てた状態で息も切れぎれとなり誰の目から見ても限界を迎えていた。

静寂が闘技場を包み込む。
誰一人として声を発しようとしない ───── いや、出来ないでいた。
それは獣王であるレオニス、戦士長であり実の父でもあるザックス、そしてゼリックの勝利を信じて疑わなかったユニまでもが同じように口を噤む。
ユニに至っては、唇を噛み、目を潤ませながらこぼれ落ちそうになっている涙を必死に繋ぎ止めている。


ここまでか ──────── 。

誰しもがそう思った。


しかし、そんな絶体絶命の状況の中にあってもゼリックだけはまだ勝負を諦めてはいなかった。

⦅クソッ、このままでは埒が明かない。この人には中途半端な攻撃では意味がない。打開するためには、今の自分が出せる最大限の力でないと ─────── ⦆


「さぁ、今度こそ終わりにし ──────── 」

「グヴゥゥゥゥゥ」

「!?・・・。まだ何かするつもりなのか?もう既に限界だろう」

「グヴゥゥゥゥ ───── ガアァァァァァァ!!!!!」


バチンッ! ─── バチンッ! ─── バチンッ!


先ほどまでよりもさらに大きな輝きを放つオーラ、そして強烈な破裂音と共に周囲を雷が乱れ飛ぶ。
開放度50% ──────── 。
それは現状でのゼリックが制御出来る最大開放状態なのであった。




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