魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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力の解放

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「それでは、次はこちらから参るとしようか」


──────── ヒュンッ。

!?

ドゴッ・・・ ──────── 。


みぞおちに激痛が走る。
まるで巨大なハンマーか何かで殴られたような鈍い痛み。
そして、痛みを感じた時にはすでにゼリックの身体は闘技場の壁に向かって一直線に飛んでいた。


ヒューーーン ──────── ドーーーン!!


「ぐはぁっ!!」


ゼリックの口から血飛沫が舞う。
口内は鉄の味で充満し、あまりの衝撃に一瞬意識が飛びそうになりながらも懸命に踏み止まる。
そして、次の攻撃に備え慌てて乱れた呼吸を整える。


「ハァ…ハァ…ハァ…」


⦅何が起きた?腹を蹴られたのか?ただの蹴りでこの威力・・・。化け物じゃないか⦆


リングの中央に立つパンサーは涼しい顔をしながら蹴り上げた右足をゆっくりと元の位置へと戻す。
そして、薄っすら笑みを浮かべると苦悶の表情に顔を歪ませるゼリックへと右手を伸ばしクイックイッと挑発したのだった。


⦅クソッ!完全にナメられてる。まだまだ余裕というわけか・・・。でも、僕だって ───────── ⦆


「フゥーーー」


大きく息を吐き、気持ちを整える。
それと同時に身体に異常がないか確認する。
蹴りを受けた部分に痛みはあるが、他に痛みはなく、骨に異常もなさそうだ。
よし!いける! ───── 心の中でそう呟くとゼリックはパンサーの待つリングへと歩み始めた。


「おっ!諦めるかと思ったが、なかなかタフだな」

「まだ何もしていませんからね。僕はあくまでも挑戦者チャレンジャー。ここからが本番ですよ」

「それは楽しみだ」


両者の間に張り詰めた空気が漂う。
そして、それは少しずつその範囲を広げていき、やがて会場全体を包み込んでいく。


「少し息苦しいですわね」

「ほう、まさかここまでとは…。本当にゼリックは強くなったな」

「十八にしては…というところですが」

「ハッハッハッ。戦士長は我が子にも厳しいな」

「パンサーはまだまだ余裕でしょう。何せあやつはまだ“黒い雷”と呼ばれるその実力を見せておりませんからね」

「それでも・・・兄様は絶対に負けません!!」


─────────────────────────


「それでは行きますよ!」

「いつでも」


ヒュンッ ──────── 。

キーン! ─── キーン! ─── キーン! ─── キーン! ─── キーン!


剣戟の音だけが響き渡る。
両者の姿を捉えることはできず、ただただ剣と剣がぶつかり合う音だけが聞こえる。
獣王国が誇る戦士たちでさえやっとのことで追えるほどのスピードであるため、いくら獣人族とはいえ一般の観客たちには何が起こっているのか分かるはずもない。
開始当初はまさかゼリックがここまでパンサーとやり合うと思っていなかったため、戦いを見守る戦士たちは驚きを隠せずにいた。
そして、その速度はさらに上昇していくのだった。


ヒュンッ ──── ヒュンッ ──── ヒュンッ ──── 。

キーン! ──── キーン! ──── キーン!


ビュンッ ──── ビュンッ ──── ビュンッ ──── 。

ギーン! ──── ギーン! ──── ギーン!


ギュンッ ──── ギュンッ ──── ギュンッ ──── 。

ガキーン! ──── ガキーン! ──── ガキーン!


どんどん上がっていくスピードに比例して打ち込まれる斬撃の威力も増していく。
しかし、全力を尽くすゼリックも善戦してはいるものの実力で勝るパンサーを前に少しずつ劣勢に追い込まれていく。


ドカッ! ─── バキッ! ─── ズゴッ! ─── ブシュッ!


「「「「「 ウオォォォォォ!! 」」」」」

「さすが隊長!!」

「“黒い雷”の本領発揮だーーー!!」


試合を見守る戦士団からひときわ大きな歓声が湧き起こる。
彼らの中には善戦するゼリックを純粋に凄いと思う気持ちとまだ戦士団にも所属していない若者にこれ以上好き勝手させることはプライドが許さないという思いが共存していたのだ。


「まぁ~このくらいが妥当だろう」

「天才とはいえゼリックはまだ十八じゃ。現役最強と云われるパンサーを相手にようやったほうじゃろ」

「ほんと、よく頑張った。ここらで決着だな」


その一方で若き天才ゼリックに期待していた一般客もまたその健闘を称えつつもこの戦いの終幕を悟ったのだった。

まだ若い ──────── 。

まだまだ先は長い ──────── 。

そんな声があちこちから聞こえてくる。


⦅うるさい…。黙れ…。まだ終わっていない…⦆


「ハァ…ハァ…ハァ…。やるしか…ないか…」


額から血を流し、身体中ボロボロになりながらも、ゼリックの目はまだ死んでいなかった。
実力差は歴然。
さすがは現役最強と云われるだけのことはある。
自信があったスピード勝負で敗れ、純粋な剣術と体術では到底敵わない。
しかし、そんな誰しもが絶望しそうな状況の中で、むしろ現実を突きつけられたことによってゼリックの頭の中はよりクリアなものとなっていた。


「フゥーーー」


⦅うん?何か吹っ切れたようだな。まぁ~ここから何をしたところで私の勝利は揺るぎない。さっさと終わらせて獣王様にゼリックの近衛隊への入隊を進言しに行くとするか⦆


「グルゥ…グヴゥゥゥゥゥ…」


バチンッ ──────── 。


「ん?なんだ?」


バチンッ…バチッ…バチチチチッ ───────── 。



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