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重なる想い
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ガタゴト、ガタゴト ──────── 。
ガタゴト、ガタゴト ──────── 。
「ハァ~、いったいこれで何度目よ」
「わっちの記憶が正しければ三度目じゃな」
「ちょっと!一般人ってこんな頻繁に国王様に呼び出されるわけ?」
「いや…そんな風に僕を見られても・・・。僕だって何も聞かされてなくて驚いているんですから」
三度国王より召喚命令が出されたスズネたちはこれまでと同様に今回も馬車に揺られ、理由も分からぬまま王都メルサを目指すのだった。
「それにしても今回は何なんすかね?ここ最近は特に何かした覚えはないっすけど」
「か…考えられるとすれば獣王国との戦争の件でしょうか?」
「でも、まだBランクに昇格したばかりの私たちみたいな小さなパーティを呼ぶようなことなんてあるのかな?」
謎は深まるばかり。
そもそも王国には聖騎士団という屈強な戦士たちと魔法師団という強力な魔法師たちがいる。
もちろん今回の戦いでも彼らがガルディア王国の主力であり、冒険者たちはあくまでも補佐や後方支援としての役割が大きい。
まぁ~強いて言えばSランクの冒険者やクランに関しては前線に配置される可能性はあるだろう。
しかし、それ以外の冒険者は各都市や街が襲撃を受けた際の守りが主な役割とされている。
ましてやスズネたち宿り木は今回参加する冒険者の中で最も低ランクであるBランクパーティである。
よって、その役割は極々小さなものになると考えられていた。
「分かったわ!」
「えっ!?ミリアは今回召喚された理由が分かったの?」
他のメンバーたちが考え込んでいる中、突然ミリアが何かに気づき声を上げる。
「やっぱり今回呼ばれたのは戦争絡みよ。そして国王様が用があるのはアタシたちじゃないわ」
「あはははは。私たちに用が無いならわざわざなんで呼ぶのよ」
「それは ───── 実際に用件があるのがコイツだからよ!」
そうして語気を強めながらミリアはクロノを指差したのだった。
「あぁ?何で俺になるんだよ。お前らの争いなんざ微塵も興味ねぇ~よ」
「アンタが興味無くても王国側としてはアンタを味方にしておきたいのよ。なんたってアンタは歴代最強の魔王なんだからね」
「だから俺はどっち側にもつかねぇ~よ。勝手にやってろ」
ミリアの予想はそこまで的外れなものではなかった。
しかし、自身にとってどうでもいい小競り合いに対して一切興味を持っていないクロノはいつも以上に面倒臭そうな態度を見せるのだった。
「でも、ミリアの考えはあながち間違いではないかもしれませんよ。クロノの噂というのはもちろん獣王国にも伝わっているでしょうし、実際に戦闘に関わらなくともその姿を見せるだけで相手には十分な牽制になると思います」
「なるほど!その可能性はありそうっすね。魔王クロノがヒト族によって召喚されたという情報が伝わっている以上、戦場に突然魔王が姿を現したら確実に援軍として来たと思わせられるっすからね」
「いや…だから俺はそんな場には行かねぇ~って。雑魚同士好きに争ってろよ」
「で…でも、もしスズネが前線に送り込まれるようなことになればご主人様も行かないわけにはいきませんよね。王国としてはそれが狙いなのかもしれません」
「旦那様が行くのなら当然わっちも行くのじゃ!試したい魔法もあるしのう。楽しみじゃ」
「いや、だから行かねぇ~って!!」
それぞれの予想が飛び交う中、スズネたちを乗せた馬車は順調に王都メルサへと歩みを進めるのであった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ガルディア王国王城 ───── 謁見の間
「おお~よくぞ来てくれた。堅苦しい挨拶は抜きにして楽にしてくれ」
謁見の間に通されたスズネたちを両腕を広げ満面の笑みで迎える国王レオンハルト。
冒険者とはいえあくまでも一般人である彼女たちに対して、非公式な場ではあるものの国王がこのような振る舞いを見せるのは異例中の異例である。
しかし、当の本人であるレオンハルトとしては三度目ともなる顔合わせということもあり、もはや知らぬ間柄ではないという思いなのであった。
「今回も急な呼び出しで申し訳なかったな」
「いえ、決してそのようなことは ────── 」
「本当だよ!何回呼び出しゃ気が済むんだ?それにお前らこれから戦争するんだろ。こんな事してる暇があんのか?」
「ちょっとクロノ!国王様に失礼だよ。少しの間静かにしてて」
「チッ」
馬車の中での話もあり国王が本題に入るよりも前に牽制を入れるクロノ。
その不躾な態度に対して慌てた様子でそれを制止するスズネなのであった。
「クハハハハ。これはキツい一撃を受けてしまったな」
あまりにも無礼な態度を見せるクロノに対しても寛大な心で笑って済ませるレオンハルト。
今この場に大臣であるドルーマンがいないことを確認しホッとする宿り木メンバーたち。
もしこの場に彼が居たならば確実に怒号が響き渡っていただろう。
「恐れながら国王様、それで今回私たちはいったいどのようなご用件で召喚されたのでしょうか?」
「おお、そうであったな。今回呼んだのは他でもない・・・。スズネ、そなたと話がしたかったからだ」
「えっ?私ですか?クロノじゃなくて?」
自分が思っていたものとは別の答えが返って来たことに思わず驚いてしまうスズネ。
そして、スズネたちの驚いた様子を見てレオンハルトもまた不思議をそうな顔を見せたのだった。
「うん?クロノ殿か?いや、今回はスズネを城へ招くための召喚命令を出したはずだが・・・」
思い返せばそうである。
これまでの召喚命令はクロノに対するものと宿り木に対するものであった。
そして、今回渡された命令書にはスズネに対する王城への召喚命令と書かれていたのだった。
「それじゃ…本当に私が呼ばれたんですか?」
「うむ。今回の戦争についてそなたと話がしたかったのだ。率直に聞くが、今回の戦争についてどう思う?」
「えっ!?え~っと・・・」
唐突に話を振られたスズネは困惑した様子で仲間たちの顔を見る。
それに対してメンバーたちは笑顔を向けただただ頷くのであった。
そして、それを見て安心し背中を押されたスズネは先日パーティで話し合ったこともあり、率直な想いを話し始めるのだった。
「私は ───── ヒト族にも獣人族にも傷付いてほしくないです。ガルディア王国の国民としては不謹慎な発言なのは重々承知していますが、それでも傷付け合うようなことはしたくありません」
スズネの話を聞き終えると国王レオンハルトと聖騎士長アーサーは沈黙する。
その発言が持つ意味を理解しているからこそ、スズネたちにとってその沈黙はかなり恐ろしいものに感じたのだった。
そして、その数秒にして数分にも感じた沈黙が破られ国王レオンハルトが口を開く。
「やはりそなたを呼んだことは間違いではなかったようだ」
「えっ!?」
「今ここで話すことは完全なる独り言だ。私自身も今回の戦争については何とかして回避したい想いが強い。しかし、獣王国の王である獣王が会談の席に着こうとしないのだ。よって、今は獣王国の王城を無血開城させるために動いているところなのだ」
国王レオンハルトによるまさかの発言を聞き驚きを隠せないスズネたち。
それは冒険者たちの間でも今回の戦争はガルディアの圧勝で終わるだろうとされており、その圧倒的な数の利を使い獣王国を一気に攻め落とすだろうと思われていたからだ。
しかし、実際のところガルディア王国のトップである国王の想いは全く別のところにあったのだ。
そんなレオンハルトの想いに触れ、スズネもまた自身の想いを強くするのであった。
「スズネよ、私はそなたと私の想いは同じところにあると考えている。そこでなんとかこの戦争を早期終結させるために力を貸してもらえないだろうか?」
国のトップである国王としての要請ではなく、ガルディア王国に住まう一人の国民として、そして大事なガルディアの民である獣人族を想う一人の人間として、スズネに協力を願うレオンハルト。
その言葉を聞いたスズネは数秒の沈黙の後、意を決したように真っ直ぐにレオンハルトの目を見てその想いに応える。
「もちろんです!私に出来ることがあるのであれば協力させてください!!」
ガタゴト、ガタゴト ──────── 。
「ハァ~、いったいこれで何度目よ」
「わっちの記憶が正しければ三度目じゃな」
「ちょっと!一般人ってこんな頻繁に国王様に呼び出されるわけ?」
「いや…そんな風に僕を見られても・・・。僕だって何も聞かされてなくて驚いているんですから」
三度国王より召喚命令が出されたスズネたちはこれまでと同様に今回も馬車に揺られ、理由も分からぬまま王都メルサを目指すのだった。
「それにしても今回は何なんすかね?ここ最近は特に何かした覚えはないっすけど」
「か…考えられるとすれば獣王国との戦争の件でしょうか?」
「でも、まだBランクに昇格したばかりの私たちみたいな小さなパーティを呼ぶようなことなんてあるのかな?」
謎は深まるばかり。
そもそも王国には聖騎士団という屈強な戦士たちと魔法師団という強力な魔法師たちがいる。
もちろん今回の戦いでも彼らがガルディア王国の主力であり、冒険者たちはあくまでも補佐や後方支援としての役割が大きい。
まぁ~強いて言えばSランクの冒険者やクランに関しては前線に配置される可能性はあるだろう。
しかし、それ以外の冒険者は各都市や街が襲撃を受けた際の守りが主な役割とされている。
ましてやスズネたち宿り木は今回参加する冒険者の中で最も低ランクであるBランクパーティである。
よって、その役割は極々小さなものになると考えられていた。
「分かったわ!」
「えっ!?ミリアは今回召喚された理由が分かったの?」
他のメンバーたちが考え込んでいる中、突然ミリアが何かに気づき声を上げる。
「やっぱり今回呼ばれたのは戦争絡みよ。そして国王様が用があるのはアタシたちじゃないわ」
「あはははは。私たちに用が無いならわざわざなんで呼ぶのよ」
「それは ───── 実際に用件があるのがコイツだからよ!」
そうして語気を強めながらミリアはクロノを指差したのだった。
「あぁ?何で俺になるんだよ。お前らの争いなんざ微塵も興味ねぇ~よ」
「アンタが興味無くても王国側としてはアンタを味方にしておきたいのよ。なんたってアンタは歴代最強の魔王なんだからね」
「だから俺はどっち側にもつかねぇ~よ。勝手にやってろ」
ミリアの予想はそこまで的外れなものではなかった。
しかし、自身にとってどうでもいい小競り合いに対して一切興味を持っていないクロノはいつも以上に面倒臭そうな態度を見せるのだった。
「でも、ミリアの考えはあながち間違いではないかもしれませんよ。クロノの噂というのはもちろん獣王国にも伝わっているでしょうし、実際に戦闘に関わらなくともその姿を見せるだけで相手には十分な牽制になると思います」
「なるほど!その可能性はありそうっすね。魔王クロノがヒト族によって召喚されたという情報が伝わっている以上、戦場に突然魔王が姿を現したら確実に援軍として来たと思わせられるっすからね」
「いや…だから俺はそんな場には行かねぇ~って。雑魚同士好きに争ってろよ」
「で…でも、もしスズネが前線に送り込まれるようなことになればご主人様も行かないわけにはいきませんよね。王国としてはそれが狙いなのかもしれません」
「旦那様が行くのなら当然わっちも行くのじゃ!試したい魔法もあるしのう。楽しみじゃ」
「いや、だから行かねぇ~って!!」
それぞれの予想が飛び交う中、スズネたちを乗せた馬車は順調に王都メルサへと歩みを進めるのであった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ガルディア王国王城 ───── 謁見の間
「おお~よくぞ来てくれた。堅苦しい挨拶は抜きにして楽にしてくれ」
謁見の間に通されたスズネたちを両腕を広げ満面の笑みで迎える国王レオンハルト。
冒険者とはいえあくまでも一般人である彼女たちに対して、非公式な場ではあるものの国王がこのような振る舞いを見せるのは異例中の異例である。
しかし、当の本人であるレオンハルトとしては三度目ともなる顔合わせということもあり、もはや知らぬ間柄ではないという思いなのであった。
「今回も急な呼び出しで申し訳なかったな」
「いえ、決してそのようなことは ────── 」
「本当だよ!何回呼び出しゃ気が済むんだ?それにお前らこれから戦争するんだろ。こんな事してる暇があんのか?」
「ちょっとクロノ!国王様に失礼だよ。少しの間静かにしてて」
「チッ」
馬車の中での話もあり国王が本題に入るよりも前に牽制を入れるクロノ。
その不躾な態度に対して慌てた様子でそれを制止するスズネなのであった。
「クハハハハ。これはキツい一撃を受けてしまったな」
あまりにも無礼な態度を見せるクロノに対しても寛大な心で笑って済ませるレオンハルト。
今この場に大臣であるドルーマンがいないことを確認しホッとする宿り木メンバーたち。
もしこの場に彼が居たならば確実に怒号が響き渡っていただろう。
「恐れながら国王様、それで今回私たちはいったいどのようなご用件で召喚されたのでしょうか?」
「おお、そうであったな。今回呼んだのは他でもない・・・。スズネ、そなたと話がしたかったからだ」
「えっ?私ですか?クロノじゃなくて?」
自分が思っていたものとは別の答えが返って来たことに思わず驚いてしまうスズネ。
そして、スズネたちの驚いた様子を見てレオンハルトもまた不思議をそうな顔を見せたのだった。
「うん?クロノ殿か?いや、今回はスズネを城へ招くための召喚命令を出したはずだが・・・」
思い返せばそうである。
これまでの召喚命令はクロノに対するものと宿り木に対するものであった。
そして、今回渡された命令書にはスズネに対する王城への召喚命令と書かれていたのだった。
「それじゃ…本当に私が呼ばれたんですか?」
「うむ。今回の戦争についてそなたと話がしたかったのだ。率直に聞くが、今回の戦争についてどう思う?」
「えっ!?え~っと・・・」
唐突に話を振られたスズネは困惑した様子で仲間たちの顔を見る。
それに対してメンバーたちは笑顔を向けただただ頷くのであった。
そして、それを見て安心し背中を押されたスズネは先日パーティで話し合ったこともあり、率直な想いを話し始めるのだった。
「私は ───── ヒト族にも獣人族にも傷付いてほしくないです。ガルディア王国の国民としては不謹慎な発言なのは重々承知していますが、それでも傷付け合うようなことはしたくありません」
スズネの話を聞き終えると国王レオンハルトと聖騎士長アーサーは沈黙する。
その発言が持つ意味を理解しているからこそ、スズネたちにとってその沈黙はかなり恐ろしいものに感じたのだった。
そして、その数秒にして数分にも感じた沈黙が破られ国王レオンハルトが口を開く。
「やはりそなたを呼んだことは間違いではなかったようだ」
「えっ!?」
「今ここで話すことは完全なる独り言だ。私自身も今回の戦争については何とかして回避したい想いが強い。しかし、獣王国の王である獣王が会談の席に着こうとしないのだ。よって、今は獣王国の王城を無血開城させるために動いているところなのだ」
国王レオンハルトによるまさかの発言を聞き驚きを隠せないスズネたち。
それは冒険者たちの間でも今回の戦争はガルディアの圧勝で終わるだろうとされており、その圧倒的な数の利を使い獣王国を一気に攻め落とすだろうと思われていたからだ。
しかし、実際のところガルディア王国のトップである国王の想いは全く別のところにあったのだ。
そんなレオンハルトの想いに触れ、スズネもまた自身の想いを強くするのであった。
「スズネよ、私はそなたと私の想いは同じところにあると考えている。そこでなんとかこの戦争を早期終結させるために力を貸してもらえないだろうか?」
国のトップである国王としての要請ではなく、ガルディア王国に住まう一人の国民として、そして大事なガルディアの民である獣人族を想う一人の人間として、スズネに協力を願うレオンハルト。
その言葉を聞いたスズネは数秒の沈黙の後、意を決したように真っ直ぐにレオンハルトの目を見てその想いに応える。
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