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序章
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獣王国ビステリアはガルディア王国内にあって治外法権が認められた国である。
それ故に長い間独自の法やルールの下で生活が営まれてきた。
そして、ガルディア王国とも国交を結んでおり、交易も盛んに行われありとあらゆる物や情報が行き来し、それまでと比べ遥かに豊かな国となり繁栄の時を迎えていた。
しかし、現獣王であるゼリックはそれを良しとはしていなかった。
あくまでもガルディア王国の中での繁栄。
それありきの繁栄。
治外法権にしてもそうである。
なぜ自分たちが生きる上で他者より許しを得なくてはならないのか・・・。
獣王国ビステリアの王は ──────── 俺様だ!!
獣王となり十数年。
ゼリックの中には常にその想いがあった。
そして、それは動物が生まれながらに持ち合わせた本能とでもいうべきモノである。
生きるか死ぬかの自然界の中で誰かに守られた上での平和と安寧。
この矛盾に対してゼリックの本能が『否』という答えを出したのだ。
その想いが年々膨れ上がっていた時にちょうど良いタイミングで事件が起きた。
この大陸の大半を支配するヒト族が自身の治める獣王国の民を傷付け、さらには死に至らしめたのだ。
話し合い?
和平?
笑わせるな!!
この機を逃しては次は無い。
今この時こそ待ちに待った好機。
今やらずしていつやるのか。
獣人族の・・・
己自身の・・・
獣としての・・・
本能がそう言っている。
「おい!お前ら・・・まやかしの平和は終わりだ。俺たち獣人族にとって力こそが絶対的な正義。その大原則に則りガルディアを攻め落とすぞ!!」
───────── コクッ。
獣王の言葉に対して十二支臣全員が無言で頷き同意の意を示す。
そして、急遽開催された会議も終盤に差し掛かり最後にして最大の質問が提示される。
「獣王様、ガルディアと事を構えることは承知しましたが、あの大国を相手にどのように戦うおつもりですか?」
「なんだ?ドルグ。お前まだビビってんのか?」
「いえ、相手が相手ですからね。数の上でも圧倒的に不利な状況での真っ向勝負はさすがに無謀かと愚行したまでです」
まさにドルグの言う通りである。
獣王国がいくら多くの屈強な戦士たちを誇る強国であったとしてもガルディア王国のそれは獣王国の比ではない。
治める領土は言うまでもなく、抱える戦力も桁違いなのだ。
ガルディア王国を守護する聖騎士団だけでも獣王国が誇る戦士全体の倍以上の数となり、そこに冒険者を入れるとその差は数倍にもなる。
誰だって無駄死にするような真似はしたくないわけで、この事実は決して無視出来る問題ではない。
しかし、そんな事はゼリックも十分に理解している。
「ガッハッハッ。さすがの俺様でもそこまで無茶苦茶なことはしねぇ~よ。まぁ~俺様がその気になれば騎士団の三つや四つ潰すくらいは造作もないんだがな」
その言葉と共に放たれた凄まじい圧力に十二支臣たちでさえも圧倒される。
「おいおい獣王よ。そのくらいは俺も出来るぞ。俺にも聖騎士団と・・・十二の剣と戦らせろ!!」
ゼリックの挑発にまんまと乗せられ闘志を剥き出しにするタイガード。
今すぐにでも会議室を飛び出して行きそうなほどの意欲を見せる。
「ガッハッハッ。さすがは獣王国随一の猛獣だな。安心しろ、お前にはすぐに戦いの場を用意してやる」
そう言って不敵な笑みを浮かべるゼリックはその場にいる誰よりも戦いに飢えているように見えた。
「それじゃ作戦を伝える。まずはガルディア王国の各所で問題を引き起こす。だが、そこで完全に戦り合うんじゃねぇーぞ。こちら側に負傷者は一切出させるな、あくまでもガルディア側にだけダメージを与え続けろ」
「ウッキッキッ。そんな事を続けて何になるッキ?」
「殴られ続けて黙っていられる奴なんていない。しかも、それが自国の民ともなれば尚更だ」
「つまりは~相手を~怒らせると~いうことね~」
「そういうことだ。そして、ガルディアがビステリアを攻めるという状況を作り出す」
─────────────────────────
パスカル大山脈によって守られた獣王国ビステリア。
この難攻不落の天然要塞を使わない手はない。
ゼリックの考えは数で勝る相手を自分たちにとって圧倒的に有利な場所に誘い込み叩くというものであった。
こうして獣王ゼリックによって語られたガルディアとの戦争に向けての作戦。
それを聞き終える頃には十二支臣たちの顔付きも会議前の砕けたものから戦う戦士のものへと変貌していた。
「それじゃ手始めにタイガード・サルザール・バルバドール、お前ら適当な村や町に行って暴れてこい。いきなりデカい所は狙うなよ。それ以外のやり方は全て任せる。派手に暴れろ!」
「ガルルルル。任せろ!ガルディアのやつらに俺たち獣人族の恐ろしさを身体の芯まで教え込んでやる」
「ウッキッキッ。獣人族を敵に回したことを後悔させてやるッキ」
「みんなやる気だね~。オイラはどうしたもんか・・・羽を休めながらじっくり考えるよん」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「キャーーーーー」
「止めっ・・・止めてくれ・・・」
「うわぁーーーん。お母さーーーん」
ゴゴゴゴゴッ ──────── 。
ボウッ、ボウッ、ボウッ ──────── 。
パチッ、パチッ、パチッ ──────── 。
獣王ゼリックと十二支臣による会議が行われた翌日からガルディア王国内にある小中の村や町で火の手が上がり始める。
その被害は日に日に拡大していき負傷者だけでなく死者も出る悲惨なものとなっていた。
その現状に頭を抱える国王レオンハルトをよそに少しずつではあるが確実に獣王国による攻勢がガルディア王国全土へと広がりを見せるのであった。
それ故に長い間独自の法やルールの下で生活が営まれてきた。
そして、ガルディア王国とも国交を結んでおり、交易も盛んに行われありとあらゆる物や情報が行き来し、それまでと比べ遥かに豊かな国となり繁栄の時を迎えていた。
しかし、現獣王であるゼリックはそれを良しとはしていなかった。
あくまでもガルディア王国の中での繁栄。
それありきの繁栄。
治外法権にしてもそうである。
なぜ自分たちが生きる上で他者より許しを得なくてはならないのか・・・。
獣王国ビステリアの王は ──────── 俺様だ!!
獣王となり十数年。
ゼリックの中には常にその想いがあった。
そして、それは動物が生まれながらに持ち合わせた本能とでもいうべきモノである。
生きるか死ぬかの自然界の中で誰かに守られた上での平和と安寧。
この矛盾に対してゼリックの本能が『否』という答えを出したのだ。
その想いが年々膨れ上がっていた時にちょうど良いタイミングで事件が起きた。
この大陸の大半を支配するヒト族が自身の治める獣王国の民を傷付け、さらには死に至らしめたのだ。
話し合い?
和平?
笑わせるな!!
この機を逃しては次は無い。
今この時こそ待ちに待った好機。
今やらずしていつやるのか。
獣人族の・・・
己自身の・・・
獣としての・・・
本能がそう言っている。
「おい!お前ら・・・まやかしの平和は終わりだ。俺たち獣人族にとって力こそが絶対的な正義。その大原則に則りガルディアを攻め落とすぞ!!」
───────── コクッ。
獣王の言葉に対して十二支臣全員が無言で頷き同意の意を示す。
そして、急遽開催された会議も終盤に差し掛かり最後にして最大の質問が提示される。
「獣王様、ガルディアと事を構えることは承知しましたが、あの大国を相手にどのように戦うおつもりですか?」
「なんだ?ドルグ。お前まだビビってんのか?」
「いえ、相手が相手ですからね。数の上でも圧倒的に不利な状況での真っ向勝負はさすがに無謀かと愚行したまでです」
まさにドルグの言う通りである。
獣王国がいくら多くの屈強な戦士たちを誇る強国であったとしてもガルディア王国のそれは獣王国の比ではない。
治める領土は言うまでもなく、抱える戦力も桁違いなのだ。
ガルディア王国を守護する聖騎士団だけでも獣王国が誇る戦士全体の倍以上の数となり、そこに冒険者を入れるとその差は数倍にもなる。
誰だって無駄死にするような真似はしたくないわけで、この事実は決して無視出来る問題ではない。
しかし、そんな事はゼリックも十分に理解している。
「ガッハッハッ。さすがの俺様でもそこまで無茶苦茶なことはしねぇ~よ。まぁ~俺様がその気になれば騎士団の三つや四つ潰すくらいは造作もないんだがな」
その言葉と共に放たれた凄まじい圧力に十二支臣たちでさえも圧倒される。
「おいおい獣王よ。そのくらいは俺も出来るぞ。俺にも聖騎士団と・・・十二の剣と戦らせろ!!」
ゼリックの挑発にまんまと乗せられ闘志を剥き出しにするタイガード。
今すぐにでも会議室を飛び出して行きそうなほどの意欲を見せる。
「ガッハッハッ。さすがは獣王国随一の猛獣だな。安心しろ、お前にはすぐに戦いの場を用意してやる」
そう言って不敵な笑みを浮かべるゼリックはその場にいる誰よりも戦いに飢えているように見えた。
「それじゃ作戦を伝える。まずはガルディア王国の各所で問題を引き起こす。だが、そこで完全に戦り合うんじゃねぇーぞ。こちら側に負傷者は一切出させるな、あくまでもガルディア側にだけダメージを与え続けろ」
「ウッキッキッ。そんな事を続けて何になるッキ?」
「殴られ続けて黙っていられる奴なんていない。しかも、それが自国の民ともなれば尚更だ」
「つまりは~相手を~怒らせると~いうことね~」
「そういうことだ。そして、ガルディアがビステリアを攻めるという状況を作り出す」
─────────────────────────
パスカル大山脈によって守られた獣王国ビステリア。
この難攻不落の天然要塞を使わない手はない。
ゼリックの考えは数で勝る相手を自分たちにとって圧倒的に有利な場所に誘い込み叩くというものであった。
こうして獣王ゼリックによって語られたガルディアとの戦争に向けての作戦。
それを聞き終える頃には十二支臣たちの顔付きも会議前の砕けたものから戦う戦士のものへと変貌していた。
「それじゃ手始めにタイガード・サルザール・バルバドール、お前ら適当な村や町に行って暴れてこい。いきなりデカい所は狙うなよ。それ以外のやり方は全て任せる。派手に暴れろ!」
「ガルルルル。任せろ!ガルディアのやつらに俺たち獣人族の恐ろしさを身体の芯まで教え込んでやる」
「ウッキッキッ。獣人族を敵に回したことを後悔させてやるッキ」
「みんなやる気だね~。オイラはどうしたもんか・・・羽を休めながらじっくり考えるよん」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「キャーーーーー」
「止めっ・・・止めてくれ・・・」
「うわぁーーーん。お母さーーーん」
ゴゴゴゴゴッ ──────── 。
ボウッ、ボウッ、ボウッ ──────── 。
パチッ、パチッ、パチッ ──────── 。
獣王ゼリックと十二支臣による会議が行われた翌日からガルディア王国内にある小中の村や町で火の手が上がり始める。
その被害は日に日に拡大していき負傷者だけでなく死者も出る悲惨なものとなっていた。
その現状に頭を抱える国王レオンハルトをよそに少しずつではあるが確実に獣王国による攻勢がガルディア王国全土へと広がりを見せるのであった。
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