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召喚師
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なんとか無事に合同クエストから戻ってきた翌日、ミリアとマクスウェルは世界最強の剣士と謳われる“剣聖ミロク”による剣術の指導を受けるため指定された修練場へと向かった。
そして、スズネはラーニャたち他のメンバーをホームに残し“魔女の森”へと出発したのだった。
───── 《魔女の森》 ─────
「はぁ~なんか久しぶりだね ───── って、別に付いて来なくてもよかったのに。私は一人でも大丈夫だよ」
「はぁ?俺は俺で魔女ババアに用があるから来ただけだ。別にお前のために来たわけじゃ ──── それに、お前一人でどうやって魔獣が出た時に対処すんだよ」
「へへへっ、心配してくれたんだ。ありがとう」
「だからそんなんじゃねぇ~って」
スズネがマーリンの元へ行くと聞き、何故か一緒に付いて来たクロノ。
なんだかんだと言ってやはりスズネのことが心配なのか、それともその言葉通り何か別の目的があるのか。
その心の内は本人しか知りようもない。
それでもスズネから感謝の言葉を送られると満更でもない様子を見せるのであった。
「はぁ~着いたーーー。着いたよクロノ」
「そんなもん見れば分かる」
「今回はラーニャちゃんがいないから本当に着けるか不安だったんだよ。鳥さんもありがとね」
「キュルッキュルルルル」
──────── バサッ。
今回はラーニャが同行していないため魔女の森に入ってからマーリンの家までの道筋が分かる者がいない。
そのため事前にラーニャからマーリンへ連絡がされており、森の入口にマーリンの元へと案内する使い魔が用意されていたのだった。
「久しいな、お前たち。馬鹿弟子から連絡が来た時には何事かと思ったが、まぁ~よく来た」
「マーリンさん、お久しぶりです」
無事にマーリンとの再会を果たしたスズネとクロノ。
ゆっくりとその時を噛み締めたい気持ちもあるが、今回は別の目的があるためさっそく家の中へと案内される。
「突然押し掛けてしまってすみません」
「な~に気に病むことはない。どうせ魔法の研究をしているくらいだからな。それで、今日はいったい何用だ?」
「おい、魔女ババア。テメェーなんやらめちゃくちゃ強い龍族を使役しているらしいな」
家の中へと入りスズネとマーリンが今回訪れた用件について話をしようとした時、突然クロノが凄い剣幕で割り込んできた。
そして、以前ラーニャに聞いたマーリンの召喚獣である龍族について問い詰めだしたのだった。
「なんだ藪から棒に。龍族?モルディザードのことか?」
「そうだ!最強の龍族らしいな。前回戦った時には何故出さなかった。そいつと戦わせろ」
せっかく席に着いて落ち着いたところなのにも関わらず、身を乗り出してマーリンに詰め寄るクロノ。
そんなクロノの様子に少々驚きながらもマーリンは呆れたように話を続ける。
「馬鹿弟子から聞いたのか?残念ながらモルディザードはここにはおらんぞ」
「それなら喚べばいい。お前の召喚獣なんだろ?」
「馬鹿者。こんなところに奴を喚べば森に住む動物や魔獣たちがあまりのプレッシャーにショック死するではないか。そんなことはこのわしが許さん」
その後マーリンによって“黒龍モルディザード”について話がなされた。
モルディザードとは召喚獣として契約してはいるが常に共にいるわけではなく、今も何処で何をしているのかは分からないのだという。
実際ラーニャが会ったと話していた数年前も久々に顔を合わせたらしく、その時も百年以上会っていない状態だったのだとか。
「そういうわけだ。モルディザードのことは諦めろ。そもそも顔を合わせたところで奴は貴様との勝負に乗ったりはせんよ」
「チッ、なんだよ。せっかく少しは骨のある奴と戦れると思ったのによ」
「まぁまぁ、いつかきっと会えるよ」
こうしてクロノの話が終わりいよいよ本題へ。
スズネは自身に新しく備わった『召喚師』という力について質問した。
そして、それを聞いたマーリンは少し考える様子を見せたのだった。
「ふ~む。召喚師か・・・」
「何か知っていますか?」
「そうだな。まぁ~正直なところ分からない」
「そうですか・・・」
「すまんな。なにせわし自身も実際に召喚師というものに会ったのが初めてだからな」
「えっ!?マーリンさんでも会ったことがないんですか?」
「ああ。もちろんあったのも初めてではあるんだが、わしが生きてきたこの三百を超える年月の中で初めて確認されたと言っていい」
それは長い年月を生きありとあらゆる魔法に精通しているマーリンであってもこれまでに『召喚師』という存在を確認したことがなく、それ故にその情報も極端に少ないとのことであった。
それもそのはず、マーリン曰くこれまでの歴史上において『召喚師』というジョブが確認されたのは後にも先にも千年前の対戦時に勇者サーバインと共に魔王に挑んだ、当時“聖女”と呼ばれた魔法師ただ一人なのだという。
マーリン自身もありとあらゆる魔法書や歴史書を読み漁ったが、その者の正体を含めて情報はほとんど残されていなかった。
しかし、そんな中でも僅かに手に入れた情報として『召喚師』と『調教師』の違いを説明してくれた。
=========================
【召喚師】
契約出来る個体数に制限が無い。
お互いの合意があれば契約が可能。
あくまでも契約した者を召喚することになるため、その者が持つ力を百パーセント発揮することが出来る。
【調教師】
契約出来る個体数は調教師本人の魔力量による。
そして、それは契約する者の力量によってその容量は変わってくる。
多くの者が低ランクの魔獣であったとしても二~三体の契約が限界であり、相当量の魔力を保持している者であったとしても二十体前後が限度であると考えられている。
(因みに、現在ガルディア王国内で最大数の魔獣と契約している者で十六体と契約している)
契約した魔獣が出せる力は調教師の力量と契約魔獣との関係性によって変化するため、調教師を多く輩出している家系などでは子供が幼い頃より契約させる魔獣と生活を共にさせることが多い。
=========================
「まぁ~この二つのジョブ最大の違いは使役する者の力をどこまで引き出せるかということだ。先程説明した通り召喚師が百パーセントの力を引き出せるのに対して、調教師はせいぜい八十パーセントが限界だろう」
「なるほど。そんな違いがあるんですね。でも、幼少の頃から一緒に生活をしていても八十パーセントが限界なんですか?」
「ああ、それはそうだろう。たとえ親や兄弟姉妹であったとしても自分自身ではない。あくまでも自分以外の他人だ。そんな相手のことを百パーセント知ることなど不可能だからな」
一通りの説明を終えたマーリンは、そもそも何故その力が目覚めたのかという根本をスズネに尋ねる。
それに対してスズネは今回参加した合同クエストの件について話をし、その時に緑龍ラフネリアスと契約を交わしたことを話した。
そして、その話を聞いたマーリンはまさかそんな大物のなが出てくるとは思っておらず驚きを見せたのだった。
「緑龍ラフネリアスか。またとんでもない大物と契約したものだな。四天龍の一角だぞ」
「アハハハハ…なんかそうみたいですね」
そして、マーリンは大きく息を吐き出すと真剣な眼差しをスズネへと向け静かに話し始めた。
「スズネ、龍族の力はお前が思っている以上に強大だ。その気になればこの国を滅ぼすことさえ出来るだろう。それに加えてお前は魔族の歴史上において最強と云われる魔王クロノをも従えているわけだ。はっきり言って今のガルディア王国にお前に敵う奴はいない」
──────── ゴクリッ。
召喚師となった者はそれほどまでに強力な力を得ることなるため、その力に呑まれないようにと忠告を受ける。
そして、その話を聞き改めて『召喚師』というものがどういった存在なのか、今自分が手にしている力がどれほど強大であるかをヒシヒシと感じるスズネ。
実際にその事実を伝えられることで知るその力の重みを小さな身体で受け止めようと必死に頭と心を巡らせる。
「まぁ~少し脅し過ぎたな。安心しろ。ガルディアの若造どもには無理だろうが、この国にはわしがいる。一人で抱え込まんでもいい」
「マーリンさん」
「おい、俺はお前に従えられてなんかいないからな。勘違いすんなよ」
「クロノ」
二人から言葉を掛けられたスズネは笑顔で暴力による支配を否定する。
「マーリンさん、正直言って今はこの力がどういったものなのかしっかりと理解出来てはいませんが、少なくとも私は力で誰かを従わせるようなことはしたくないです。出来れば種族とか関係なくみんなが笑顔でいられる世界がいいです」
「そうか。わしもそう思うよ」
マーリンの話を聞き改めて『召喚師』というジョブについて知ったスズネ。
その力は人ひとりが使うにはあまりにも強大であり、扱う者によっては全てを破壊することすら容易い。
しかし、スズネはその力を守るために使うことはしても奪うために使うことはしないと約束する。
その答えに対してマーリンは優しく微笑みを返すのだった。
「魔王クロノよ、良い主を持ったな」
「はぁ?誰が主だ。俺はこいつの配下じゃねぇぞ」
「そそそ…そうですよ、マーリンさん。クロノもラフネリアスも大事な仲間であって、お互いを助け支え合うパートナーですから」
「お…お前っ!?何小っ恥ずかしいこと言ってんだよ。そもそもお前がいつ俺を助けんだよ。冗談も大概にしろ」
「そ…そうだよね。ごめんね。私もっともっと頑張るから」
「アッハッハッハッハッ。すでに救われておるではないか」
「うるせぇ」
「えっ!?えっ!?」
照れ臭そうにスズネの発言を否定するクロノ。
それに対して困ったように縋り付くスズネ。
そんな二人の姿を見たマーリンは、先程の自身の発言が杞憂に終わると確信し安堵するのであった。
「マーリンさん、私はこれからどうすればいいんでしょうか?」
「うん?これまで通りでいいさ」
「これまで通りですか?」
「ああ。召喚師という力を手にしたからといって、スズネ ──── お前自身が強くなったわけではない。そして、召喚契約はあくまでも召喚師と魔獣相互の同意があって初めて成立するものだ。それはどちらか一方だけがどうこうしたところでどうすることも出来ない。だからこそスズネ、お前がありのままの自然体でいることが大事なんだ」
「ありのままの私・・・」
「そうだ。相手にありのままをスズネを知ってもらい、その上で先程お前が言ったように互いに仲間となりたいと思った時に契約をすればいい。そして、困った時には遠慮せず助けを求めればいいんだ」
「はい!ありがとうございます」
マーリンの話に納得したスズネは晴々とした表情を見せる。
こうしてマーリンの元を訪れたスズネは当初の目的である『召喚師』について話を聞くことができ、何かひとつ吹っ切れた様子で魔女の森を後にしたのだった。
そして、スズネはラーニャたち他のメンバーをホームに残し“魔女の森”へと出発したのだった。
───── 《魔女の森》 ─────
「はぁ~なんか久しぶりだね ───── って、別に付いて来なくてもよかったのに。私は一人でも大丈夫だよ」
「はぁ?俺は俺で魔女ババアに用があるから来ただけだ。別にお前のために来たわけじゃ ──── それに、お前一人でどうやって魔獣が出た時に対処すんだよ」
「へへへっ、心配してくれたんだ。ありがとう」
「だからそんなんじゃねぇ~って」
スズネがマーリンの元へ行くと聞き、何故か一緒に付いて来たクロノ。
なんだかんだと言ってやはりスズネのことが心配なのか、それともその言葉通り何か別の目的があるのか。
その心の内は本人しか知りようもない。
それでもスズネから感謝の言葉を送られると満更でもない様子を見せるのであった。
「はぁ~着いたーーー。着いたよクロノ」
「そんなもん見れば分かる」
「今回はラーニャちゃんがいないから本当に着けるか不安だったんだよ。鳥さんもありがとね」
「キュルッキュルルルル」
──────── バサッ。
今回はラーニャが同行していないため魔女の森に入ってからマーリンの家までの道筋が分かる者がいない。
そのため事前にラーニャからマーリンへ連絡がされており、森の入口にマーリンの元へと案内する使い魔が用意されていたのだった。
「久しいな、お前たち。馬鹿弟子から連絡が来た時には何事かと思ったが、まぁ~よく来た」
「マーリンさん、お久しぶりです」
無事にマーリンとの再会を果たしたスズネとクロノ。
ゆっくりとその時を噛み締めたい気持ちもあるが、今回は別の目的があるためさっそく家の中へと案内される。
「突然押し掛けてしまってすみません」
「な~に気に病むことはない。どうせ魔法の研究をしているくらいだからな。それで、今日はいったい何用だ?」
「おい、魔女ババア。テメェーなんやらめちゃくちゃ強い龍族を使役しているらしいな」
家の中へと入りスズネとマーリンが今回訪れた用件について話をしようとした時、突然クロノが凄い剣幕で割り込んできた。
そして、以前ラーニャに聞いたマーリンの召喚獣である龍族について問い詰めだしたのだった。
「なんだ藪から棒に。龍族?モルディザードのことか?」
「そうだ!最強の龍族らしいな。前回戦った時には何故出さなかった。そいつと戦わせろ」
せっかく席に着いて落ち着いたところなのにも関わらず、身を乗り出してマーリンに詰め寄るクロノ。
そんなクロノの様子に少々驚きながらもマーリンは呆れたように話を続ける。
「馬鹿弟子から聞いたのか?残念ながらモルディザードはここにはおらんぞ」
「それなら喚べばいい。お前の召喚獣なんだろ?」
「馬鹿者。こんなところに奴を喚べば森に住む動物や魔獣たちがあまりのプレッシャーにショック死するではないか。そんなことはこのわしが許さん」
その後マーリンによって“黒龍モルディザード”について話がなされた。
モルディザードとは召喚獣として契約してはいるが常に共にいるわけではなく、今も何処で何をしているのかは分からないのだという。
実際ラーニャが会ったと話していた数年前も久々に顔を合わせたらしく、その時も百年以上会っていない状態だったのだとか。
「そういうわけだ。モルディザードのことは諦めろ。そもそも顔を合わせたところで奴は貴様との勝負に乗ったりはせんよ」
「チッ、なんだよ。せっかく少しは骨のある奴と戦れると思ったのによ」
「まぁまぁ、いつかきっと会えるよ」
こうしてクロノの話が終わりいよいよ本題へ。
スズネは自身に新しく備わった『召喚師』という力について質問した。
そして、それを聞いたマーリンは少し考える様子を見せたのだった。
「ふ~む。召喚師か・・・」
「何か知っていますか?」
「そうだな。まぁ~正直なところ分からない」
「そうですか・・・」
「すまんな。なにせわし自身も実際に召喚師というものに会ったのが初めてだからな」
「えっ!?マーリンさんでも会ったことがないんですか?」
「ああ。もちろんあったのも初めてではあるんだが、わしが生きてきたこの三百を超える年月の中で初めて確認されたと言っていい」
それは長い年月を生きありとあらゆる魔法に精通しているマーリンであってもこれまでに『召喚師』という存在を確認したことがなく、それ故にその情報も極端に少ないとのことであった。
それもそのはず、マーリン曰くこれまでの歴史上において『召喚師』というジョブが確認されたのは後にも先にも千年前の対戦時に勇者サーバインと共に魔王に挑んだ、当時“聖女”と呼ばれた魔法師ただ一人なのだという。
マーリン自身もありとあらゆる魔法書や歴史書を読み漁ったが、その者の正体を含めて情報はほとんど残されていなかった。
しかし、そんな中でも僅かに手に入れた情報として『召喚師』と『調教師』の違いを説明してくれた。
=========================
【召喚師】
契約出来る個体数に制限が無い。
お互いの合意があれば契約が可能。
あくまでも契約した者を召喚することになるため、その者が持つ力を百パーセント発揮することが出来る。
【調教師】
契約出来る個体数は調教師本人の魔力量による。
そして、それは契約する者の力量によってその容量は変わってくる。
多くの者が低ランクの魔獣であったとしても二~三体の契約が限界であり、相当量の魔力を保持している者であったとしても二十体前後が限度であると考えられている。
(因みに、現在ガルディア王国内で最大数の魔獣と契約している者で十六体と契約している)
契約した魔獣が出せる力は調教師の力量と契約魔獣との関係性によって変化するため、調教師を多く輩出している家系などでは子供が幼い頃より契約させる魔獣と生活を共にさせることが多い。
=========================
「まぁ~この二つのジョブ最大の違いは使役する者の力をどこまで引き出せるかということだ。先程説明した通り召喚師が百パーセントの力を引き出せるのに対して、調教師はせいぜい八十パーセントが限界だろう」
「なるほど。そんな違いがあるんですね。でも、幼少の頃から一緒に生活をしていても八十パーセントが限界なんですか?」
「ああ、それはそうだろう。たとえ親や兄弟姉妹であったとしても自分自身ではない。あくまでも自分以外の他人だ。そんな相手のことを百パーセント知ることなど不可能だからな」
一通りの説明を終えたマーリンは、そもそも何故その力が目覚めたのかという根本をスズネに尋ねる。
それに対してスズネは今回参加した合同クエストの件について話をし、その時に緑龍ラフネリアスと契約を交わしたことを話した。
そして、その話を聞いたマーリンはまさかそんな大物のなが出てくるとは思っておらず驚きを見せたのだった。
「緑龍ラフネリアスか。またとんでもない大物と契約したものだな。四天龍の一角だぞ」
「アハハハハ…なんかそうみたいですね」
そして、マーリンは大きく息を吐き出すと真剣な眼差しをスズネへと向け静かに話し始めた。
「スズネ、龍族の力はお前が思っている以上に強大だ。その気になればこの国を滅ぼすことさえ出来るだろう。それに加えてお前は魔族の歴史上において最強と云われる魔王クロノをも従えているわけだ。はっきり言って今のガルディア王国にお前に敵う奴はいない」
──────── ゴクリッ。
召喚師となった者はそれほどまでに強力な力を得ることなるため、その力に呑まれないようにと忠告を受ける。
そして、その話を聞き改めて『召喚師』というものがどういった存在なのか、今自分が手にしている力がどれほど強大であるかをヒシヒシと感じるスズネ。
実際にその事実を伝えられることで知るその力の重みを小さな身体で受け止めようと必死に頭と心を巡らせる。
「まぁ~少し脅し過ぎたな。安心しろ。ガルディアの若造どもには無理だろうが、この国にはわしがいる。一人で抱え込まんでもいい」
「マーリンさん」
「おい、俺はお前に従えられてなんかいないからな。勘違いすんなよ」
「クロノ」
二人から言葉を掛けられたスズネは笑顔で暴力による支配を否定する。
「マーリンさん、正直言って今はこの力がどういったものなのかしっかりと理解出来てはいませんが、少なくとも私は力で誰かを従わせるようなことはしたくないです。出来れば種族とか関係なくみんなが笑顔でいられる世界がいいです」
「そうか。わしもそう思うよ」
マーリンの話を聞き改めて『召喚師』というジョブについて知ったスズネ。
その力は人ひとりが使うにはあまりにも強大であり、扱う者によっては全てを破壊することすら容易い。
しかし、スズネはその力を守るために使うことはしても奪うために使うことはしないと約束する。
その答えに対してマーリンは優しく微笑みを返すのだった。
「魔王クロノよ、良い主を持ったな」
「はぁ?誰が主だ。俺はこいつの配下じゃねぇぞ」
「そそそ…そうですよ、マーリンさん。クロノもラフネリアスも大事な仲間であって、お互いを助け支え合うパートナーですから」
「お…お前っ!?何小っ恥ずかしいこと言ってんだよ。そもそもお前がいつ俺を助けんだよ。冗談も大概にしろ」
「そ…そうだよね。ごめんね。私もっともっと頑張るから」
「アッハッハッハッハッ。すでに救われておるではないか」
「うるせぇ」
「えっ!?えっ!?」
照れ臭そうにスズネの発言を否定するクロノ。
それに対して困ったように縋り付くスズネ。
そんな二人の姿を見たマーリンは、先程の自身の発言が杞憂に終わると確信し安堵するのであった。
「マーリンさん、私はこれからどうすればいいんでしょうか?」
「うん?これまで通りでいいさ」
「これまで通りですか?」
「ああ。召喚師という力を手にしたからといって、スズネ ──── お前自身が強くなったわけではない。そして、召喚契約はあくまでも召喚師と魔獣相互の同意があって初めて成立するものだ。それはどちらか一方だけがどうこうしたところでどうすることも出来ない。だからこそスズネ、お前がありのままの自然体でいることが大事なんだ」
「ありのままの私・・・」
「そうだ。相手にありのままをスズネを知ってもらい、その上で先程お前が言ったように互いに仲間となりたいと思った時に契約をすればいい。そして、困った時には遠慮せず助けを求めればいいんだ」
「はい!ありがとうございます」
マーリンの話に納得したスズネは晴々とした表情を見せる。
こうしてマーリンの元を訪れたスズネは当初の目的である『召喚師』について話を聞くことができ、何かひとつ吹っ切れた様子で魔女の森を後にしたのだった。
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