上 下
79 / 158

調査開始

しおりを挟む
灰じぃよりここ数年の間にグリーンアイランドで起こったことの内情と、今なおこの島にいるという龍族“緑龍ラフネリアス”の住処の場所を聞いたスズネたち。
さっそく島に降り続ける妙な魔力を帯びた灰の原因を探るために調査を開始する。
そして一行は、まず“緑龍ラフネリアス”に会って話を聞くためにその住処を目指す。


「ちょっと!どれだけ出てくんのよ!」

「息つく暇も無いっすね」

「これは…なかなか骨が折れますね」


次から次へと現れる魔獣。
どれもこれまでのクエストで見たことのある魔獣ばかりであったのだが、ギルドからの情報通り明らかに凶暴化しておりパワーもスピードも段違いに強くなっていたのだった。


グォォォォォォ ──────── 。

───────── ガキーン!!

ガルルゥゥゥゥゥ ───────── 。


「グッ・・・」

「マクスウェル、そのまま抑えときなさい」


ググッ…ググッ…


「は…早くしてください…長くは…保ちません」

「泣き言言ってんじゃないわよ。」


ヒュンッ ──────── ザンッ!!

────ズルッ・・・ドーーーーーン。


ミリアの一撃によって剣牙の虎サーベルファングが脳天から真っ二つに斬り裂かれる。
そして、その周囲には数十頭の漆黒の狼ブラックウルフが力無く倒れていた。

灰じぃたちと別れてから三十分も経たぬうちに魔獣に囲まれ戦うこととなったスズネたち。
いつものように陣形を組み応戦したのだが、見た目はいつもと変わらないにも関わらずいつもの様に戦闘が進まず、今このグリーンアイランドに住む魔獣たちの変化を肌で実感するのだった。


「疲れたのじゃ~」

「ちょっと休憩しようか」

「まだ登り始めて一時間よ。そのくせ全然進めないじゃない」

「山の中腹に行くまでにいったい何時間かかるんすかね?」

「まぁ~一先ずこの島の魔獣が凶暴化しているという情報は間違いなさそうですね」

「で…でも、確かに凶暴化してはいるようですが、基本的な対処方法は特に変わりないようでした。落ち着いて対応すれば問題はないと思います」


相対した魔獣の多さといつもよりもパワーやスピードが上がっていたため少々面を食らう形となったが、セスリーの冷静な分析によりスズネたちは落ち着きを取り戻したのであった。


「確かにセスリーの言う通りだね」

「これまでに相手してたやつらよりもパワーやスピードが違ったから驚いたけど大丈夫!もう遅れはとらないわ」

「ウチも大丈夫っす。セスリー、冷静な分析ありがとうっす」

「い…いえ、そんな大したことはしていませんよ」

「いや、なかなか良い分析だったぞ。魔眼にもだいぶ慣れてきたようだな。周囲を隈なく観察し全体を俯瞰して見れている証拠だ」

「は…はい。ありがとうございます」


スズネたちに加えクロノからも賞賛を受けたセスリーは恥ずかしさのあまりいつも以上に顔を赤く染める。
そして、それを隠すために両手で顔を覆ったのだが、長く飛び出した耳が真っ赤に色付き力無く垂れ下がるのだった。


カァー、カァー、カァー。

カァー、カァー、カァー。


「さぁ、次が来たみたいですよ」

「何じゃもう来たのか。もう少し休みたかったのじゃ」

「つべこべ言ってないでやるわよ」


一難去ってまた一難。
漆黒の狼ブラックウルフの大群と剣牙の虎サーベルファングをなんとか退けたスズネたちがひと呼吸入れるために休息をとっていると、先程倒した魔獣たちの死臭を嗅ぎつけて死の烏デスクロウの群れが姿を現した。
死の烏デスクロウは、戦場などの死が纏わる場所に姿を現し死体を貪り食うのだが、その場にいる者は全て自分たちの餌を奪う敵と判断し集団で襲い掛かるのだ。


「うげぇ~、死の烏デスクロウっす。あいつら死臭がキツくて嫌いっす」

「シャムロムだけじゃないよ。私もちょっと苦手なんだ」

「やつらも凶暴化に伴い力を増しているでしょうから、皆さん前後左右どこから来てもいいように注意してくださいよ」

「き…気の所為でしょうか?死の烏デスクロウがいつもよりも大きいような気がします」

「気の所為なんかじゃないわ。明らかにデカいわね。あのデカさで滑空速度まで上がってるんだろうから・・・ホント面倒臭いわね」


明らかに餌となる漆黒の狼ブラックウルフの死骸が散らばっているにも関わらず、それらには一切目もくれずスズネたちの上空を大きく旋回し始める死の烏デスクロウ
ざっと数えただけでも十五羽以上いる。
それらがスズネたちに狙いを定め今か今かとタイミングを見計らっているのだ。
対するスズネたちとしては、空を飛び回る相手に対しほとんどのメンバーが近距離まで攻撃手段を持ち合わせていないため、どちらかと言えば苦手としている部類の魔獣なのであった。


「み…みなさん、私が狙撃して牽制しますので、近づいてきた敵の対処をお願いします」

「「「「 了解(っす)!! 」」」」


こうしてセスリーが牽制のために死の烏デスクロウに向けて矢を放とうとしたのだがラーニャによって制止される。


「待つのじゃ。あんなうるさい烏ども、さっさと片付けてやるのじゃ!」


少し疲れた様子でそう言葉にしたラーニャはそのまま詠唱を開始する。


「全てを切り裂く雷風よ、その刃を以って敵を切り刻め ───── 雷刃竜巻ライトニングトルネード


ゴゴゴゴゴ ──────── 。


ラーニャが詠唱を終えると同時にスズネたちの前に巨大な竜巻が発生し、次々と死の烏デスクロウを飲み込んでいく。
そして、竜巻の中では雷鳴が響き渡っており、中からは悲鳴にも似た死の烏デスクロウの鳴き声が聞こえる ───── 。
数分の時が経ちラーニャが魔法を解除すると消えた竜巻があった場所には十数羽の死の烏デスクロウの死骸が横たわっていたのだった。


「終わったのじゃ」

「ラーニャちゃん、また強くなったんじゃない」

「フッフッフッ、わっちは絶賛成長中の天才なのじゃ」

「本当に頼りになるっす」

「ラーニャのおかげでだいぶ力を温存出来たから、もう少し休憩したらさっさと中腹まで行きましょう」


ラーニャの活躍もあり死の烏デスクロウの脅威を脱したスズネたちは、一刻も早く“緑龍ラフネリアス”に会うためにとその歩みを速めるのであった。
その後も大爪熊ベアクロー岩石巨人ロックゴーレムなどの魔獣と遭遇しながらもそれらを打ち倒し、なんとか山の中腹まで辿り着いたスズネたちはそこからすぐに灰じぃから聞いた洞窟を探すことに。


「洞窟って何処にあんのよ~」

「教えてもらった感じだとこの辺りのはずなんだけど・・・」

「目印は六芒星のマークって言ってたんすよね?」

「うん。灰じぃさんからはそう聞いてるんだけど見つからないね~」

「わっちの魔力探知でも見つけられんのじゃ」

「わ…私の魔眼でも見つけられないです」


灰じぃから教えられた洞窟の近くまで来ているはずなのだが、結界によって巧妙に隠されている上、肝心の目印すらも見つけられず頭を抱えるスズネたち。
いつ魔獣が現れても不思議ではない状況の中で慌てふためいていたのだが、悩める彼女たちを救うべくあの男があっさりと洞窟を発見する。


「ここだ。六芒星も描いてあるから間違いないだろう。さっさと石盤を掲げて結界を解除しろ」


魔力探知によってすぐさま洞窟の入口を見つけ出しスズネに指示を出すクロノ。
その言葉を聞き慌てた様子で急ぎ灰じぃから預かった石盤を取り出すスズネなのであった。


「こ…こうでいいのかな?」


キーーーーーーン ──────── 。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ─────────。


恐る恐るスズネが石盤を掲げると中央に埋め込まれた翡翠色の魔石が光輝く。
そして、それに呼応するように洞窟に蓋をしていた二つの大きな岩が左右に動き隠されていた入口が姿を現したのだった。


「ホントにあったわね」

「この中に龍がいるんすよね」

「き…緊張します」

「よ~し、それじゃさっそく中に入ってみよう!」


こうして無事に洞窟を発見することが出来たスズネたち。
さっそく中に入ってみるとそこは薄暗く冷たい空気が流れていた。


「なんか…ちょっと肌寒いっすね」

「外と中でここまで温度が変わるとは驚きですね」

「本当に寒いのう。さっさと終わらせて戻るのじゃ」


スズネたちは急激な気温の変化に遭いつつも奥へ奥へと歩みを進めていく。
そして行き着いた先には大きく開けた空間があり、そこにはとてつもなく大きな一頭の龍が横たわっていたのだった。


グググッ ──────── 。


「汝ら…ここへ何をしに来た」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

処理中です...