魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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同期

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「君たちはまだ仲良し小好しをやっているのかい?」


!? !?


「ムッ!アンタは ─────── 」


スズネたちに向けて嫌味ったらしい口調で言葉が発せられる。
そして、その声の主へと視線を向けたミリアが明らかに苛立ち嫌悪感に溢れた表情を浮かべた。
そんなミリアをよそに隣に立つスズネは気さくに返事をする。


「あっ!久しぶりだね、アシュロット君。アシュロット君も今回の合同クエストに参加するの?」

「ああ、もちろんさ。なんたって俺はAランククラン“モノリス”期待の新人ルーキーだからね」

「ハンッ、相変わらず嫌味な男ね」

「おいおい、負け惜しみかい?ミリア。まさか『黄金の世代』と呼ばれる僕らの代を首席で卒業した君がどこのクランにも属していないなんて・・・宝の持ち腐れだよ ───── 本当…いったいいつまでそんな愚図と一緒にいるつもりなんだい?」


=========================

《黄金の世代》
スズネたちがサーバイン戦闘専門学校を卒業した年の卒業生たちのことを総称してそう呼んでいる。
何故その年の卒業生を『黄金の世代』と呼ぶのかというと。
そもそもサーバイン校を卒業することの困難さによるところが大きい。
サーバイン校では例年数人の卒業生が出れば良い方であり、卒業者無しということも珍しくはない。
しかし、その年の卒業者数は ───── なんと十五名。
それ故に人々は彼らのことを『黄金の世代』と呼ぶのであった。

=========================


「アンタ…殺されたいの?」

「おいおい、本当のことを言ってやっただけだろ?時間を無駄にしている我がライバルにアドバイスをしてあげているんだ。むしろ感謝してほしいくらいだよ」

「こんの野郎 ─────── 」

「まぁまぁ落ち着いてよミリア」

「親友をバカにされて落ち着いてなんかいられないわよ!」


突然始まった小競り合いに置いてけぼりをくらう他の宿り木メンバーたち。
しかし、スズネたちにとってはいつものこと。
サーバイン校在籍中にも散々行われてきたやり取りである。
剣術において常に一番の成績を収めていたミリア、それと同様にいつも二番だったアシュロット。
そのためアシュロットは何かとミリアをライバル視していたのだ。
そして、そんなミリアの親友であるスズネの成績が悪く、希少な回復魔法を使えるというだけで優遇されていることが気に食わず、事あるごとに突っかかってきていた。
もちろんスズネが優遇されているなどということはなく、いつも教員たちから叱責を受け、それに屈することなく本人が努力を重ねた上で卒業に必要な能力を示したのだが、アシュロットはなかなか認めようとしなかったのだった。


「ミリア、君ほどの才能があれば有力なクランからの勧誘は引くて数多だったはずだ。それらを断り、一からパーティを作るなんて・・・」

「はぁ?そんなのアタシの勝手でしょ」


ハァ~~~ ──────── 。


苛立った様子のミリアが返した言葉に対し、呆れた様に溜め息を吐くアシュロット。
そして、周囲にいた宿り木のメンバーたちに視線を向けると再び嫌味を口にする。


「俺はすでにBランクだぞミリア。今すぐ“モノリス”に来い!強者は強者と共にいるべきだ。こんな愚図に、魔法を使えるかも疑わしいガキ、ノロマそうなドワーフ、気弱で脆弱そうなエルフ、そっちの男はまだマシなようだが ───── 話にならない戦力だ。こんな奴らと一緒では君の才能を無駄にしてしまうぞ!」

「なんじゃ、この阿呆は?わっちの魔法で消し飛ばしていいか?」

「まったく、初対面で失礼なやつっす」

「で…でも、Aランクのクランに所属するBランク冒険者なんですよね。それなら実力も・・・」

「ミリア、そんな安い挑発に乗らないでくださいよ」

「分かってるわよ。クエスト前に他と揉めるようなことするわけないでしょ」


ミリアを怒らせるためにわざと挑発するアシュロット。
ミリアの実力を認めているからこその言葉でもあるようだが、明らかに度が過ぎているように思われる。
そんな悪意のある言葉に反応しないようにとミリアに警告するマクスウェルであったのだが、ミリアとは別の者がそれに反応するのだった。

自分のことをあれこれ言われていた時には笑顔でミリアを宥めていたが、大切な仲間を馬鹿にされ我慢の限界を迎えたようである。
そして、それを表すように小さな身体をプルプルと振るわせていた。
度重なる侮辱を必死で耐えるミリアに向けてアシュロットがさらなる嫌味を言い、怒りで顔を赤くしたスズネが一歩前に踏み出したその時 ────── 。


「いい加減に目を覚ませ。こんなくだらない連中といちゅっ ───── グッ・・・」


その時部屋にいた全ての冒険者がその光景を目にした ───── 宙を舞い首を押さえながら苦しむアシュロットの姿を。
しかし、さすがはBランク以上の冒険者たち、突然起こったその光景に驚きはしつつも冷静に状況を見定めている。
むしろ一番混乱しているのは、つい今しがたまで怒り心頭だったスズネであった。


「えっ!?えっ!?」


そして、そんなスズネや他の冒険者たちのことなどお構い無しにクロノが口を開く。


「おい、まさかとは思うが…気弱で脆弱なエルフというのは、俺の配下のことじゃないよな?配下への侮辱は主人である俺への侮辱だ。一度死んでみるか?」

「グッ…ガッ…や…めろ」


──────── ガシッ。


宙を舞うアシュロットに向けて伸ばすクロノの右手を掴むスズネ。
そんなスズネに冷めたような視線を向けるクロノ。


「ありがとね、クロノ」

「あぁ?何のことだよ。俺は単に配下を馬鹿にされてムカついただけだ」


そう言うとクロノは右手をスッと下げた。
そして、アシュロットの身体は無事に地面へと戻されたのだった。

こうして一人の負傷者も出すことなく場は収められたかに思われたが、当然恥をかかされる形となったアシュロットは激昂する。
プライドの塊のような男が自分よりも低いランクの者たちにいいようにあしらわれ我慢出来るはずもない。


「フーッ、フーッ。お前ら、俺にこんな事をしておいてただで済むと思うなよ!こっちはAランククランの中でも最上位にいる“モノリス”だぞ。お前らみたいな弱小パーティぐらい簡単に ───── 」


──────── ガンッ!!


「痛っ!?痛ってぇ~な、いったい誰だ!この俺を怒らせるとどうなるか思い知らせてやるよ」


突如後ろから頭を殴られ怒りに震えるアシュロットが振り返ると、そこには槍を持った一人の女性が立っていた。


「あん?誰が誰に何を思い知らせるってぇ?」

「あっ…いえ…まさかナルセナさんだったとは思わなくて・・・」

「アシュロット~、テメェー他の冒険者に迷惑かけてんじゃねぇ~よ!Bランクになったばっかの若輩者が粋がってクランの名を汚してんじゃねぇ~ぞ!!」

「はい!す…すみません」


先程まで自身の強さをひけらかしスズネたちを馬鹿にしていたアシュロットがまるで借りてきた猫のように大人しくなる。

この女性は ───── いったい何者?

そんなことをスズネたちが思っていると、また別の男性が現れスズネたちに深々と頭を下げて謝罪をしたのだった。


「私は“モノリス”に所属しているファイングといいます。今回の合同クエストに参加するメンバーのリーダーをしている者です。先程は部下が失礼しました」

「あ…頭を上げてください。もう大丈夫ですから」


部下であるアシュロットの無礼を謝罪し頭を下げ続けるファイングを前に慌てて頭を上げるように言うスズネ。


「本当にすみません。アシュロットにはこちらで厳しく言っておきますのでご容赦ください」

「はい。元々私たちはサーバインの同期ですから、じゃれ合いみたいなものですよ」

「そう言ってもらえると助かります」

「アタシは許してないけどね」

「わっちもじゃ」

「コラコラ二人とも、もういいじゃない」


馬鹿にされたことをまだ根に持っており不機嫌そうな表情を見せるミリアとラーニャであったのだが、苦笑いを浮かべたスズネによって宥められる。


──────── ドガァ!!


「オラァ!ボサっとしてんな、テメェーも謝罪しろや」


ナルセナという女性にケツを蹴り上げられるアシュロット。
よっぽど彼女が恐いのか一切文句も言わずにただただ言われるがままスズネたちに対して謝罪をするのだった。


「わ…悪かったな」


───────── ガンッ!!


「テメェー、オレのことナメてんのか?オレは謝罪をしろって言ったんだよ」


曖昧な形で謝罪を済ませようとしたアシュロットに対し、槍の柄の部分でさらに強めの一撃を頭にくらわせるナルセナ。
そして、苛立つナルセナからの強烈なプレッシャーを受け、アシュロットは改めてスズネたちに謝罪をする。


「先程は無礼な物言いをして申し訳ありませんでした」


今度はしっかりとした謝罪の言葉と共に深く頭を下げた。


「もう大丈夫だよ、アシュロット君。みんなもいいよね」


アシュロットからの謝罪を受け入れたスズネが他のメンバーたちにも同意を求める。
リーダーであるスズネが謝罪を受け入れたのであれば、いつまでも自分たちが引きずるわけにもいかない。
それぞれに思うところはあっただろうが、みんなスズネの言葉に頷き同意を示す。


こうして久しぶりに再会した同期のアシュロットとのじゃれ合い?を終えたスズネたち。
まずはグリーンアイランドへ行くための経由地点であるプエルト村へ向けて準備を進めるのであった。


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