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悪戦苦闘
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「何百年経とうが我々の恨みは消えはしない。ヒト族の男…しかも冒険者ともなれば八つ裂きでは済まされんぞ」
本性を現した人魚族。
そして突如として現れた十体もの人魚族に囲まれ、圧倒的に不利な状況に追い込まれるマクスウェル。
水中であるため本来の動きが出来ず、さらに水を含んだ衣服がマクスウェルの動きに制限をかける。
一方の人魚たちは、さすが水中において世界最速を誇ると伝承されているだけのことはあり、目で追うのがやっとという猛スピードでマクスウェルの周囲を移動している。
「ヒト族ごときでは我々のスピードに付いて来れまい」
「ヒッヒッヒッ。姉様、コイツは殺しちゃっていいの?」
「当たり前でしょ。ヒト族の男なんて皆殺しよ。でも、まだよ」
「「「「「 殺せ!殺せ!殺せ! 」」」」」
マクスウェルを中心にグルグルと周囲を回りながら殺せ!殺せ!という人魚たちによるコールが沸き起こる。
先程までの穏やかなパルーナ湖から打って変わって異様な雰囲気となり、スズネたちは援護に向かうべくマクスウェルの元へ急ぐ。
しかし、マクスウェルも人魚たちも湖の中にいる。
スズネたちがどうやって近づこうかと思慮しているとラーニャが詠唱を始めた。
「凍寒より生まれし氷砂を以って、凍てつけ ───── 氷風」
ラーニャによる魔法の発動によってパルーナ湖の水面が徐々に凍り始める。
そして、その様子を見ていた人魚たちは慌ててその場から離れ、凍る水面から距離を取るのだった。
「凄いよ、ラーニャちゃん」
「アンタいつの間に氷魔法なんて覚えたのよ」
「ワーッハッハッハッ。どうじゃ、驚いたであろう」
「みんな安心するのは早いっす。確かに凄いっすけど・・・マクスウェルがめちゃくちゃ寒そうにしてるっすよ」
「は…早く助けてあげないと」
人魚族の脅威から解放されたマクスウェルであったが、突如現れた氷に迫られて一気に体温を失い、氷上に上がった後もガタガタと震えていた。
「ふぅ~しょうがないのう、まったく世話のかかるやつじゃ。陽より熱せられし風を以って、彼の者を暖めよ ───── 暖風」
ずぶ濡れになり身体の冷え切ったマクスウェルを暖かな風が包み込む。
そして、あっという間にびしょ濡れになっていた衣服が乾き、それと同時に暖かな風がその身を覆い、寒さを感じなくなったのだった。
「みんなもなのじゃ」
ラーニャが右手を広げスズネたちへ向けると、全員がマクスウェルと同様に暖かな風にその身を包み込まれた。
「何よコレ!?全然寒くないわ」
「湖に足場も出来たし、これでマクスウェル君の所へも行けるね」
「急ぐっす」
広いパルーナ湖の約半分が凍りつき足場が生まれたことで、スズネたちは急いでマクスウェルの元へと駆け寄る。
そして、ラーニャの魔法によってなんとか眼前の危機を脱したマクスウェルではあったが、疲労感は色濃く出ている。
その様子を心配するスズネたちであったが、相対する脅威は消えていない。
自分たちに向けて放たれた魔法から逃れ、その後も変わらず湖を縦横無尽に泳ぎ回る人魚たちは威嚇を続けながら攻撃の機会を伺っている。
「して…ここからどうするんじゃ?」
「足場が出来ても戦いようがないっすよ」
「一度体制を整える?」
「いえ、このまま続けましょう。次いつチャンスがあるかも分かりませんからね。もしアルベルさんが生きているのだとしたら急いだ方がいいでしょう」
「アタシもマクスウェルに賛成だわ。冒険者が来たと知った人魚族が今後何をするか分かんないしね」
今回の依頼内容であるアルベルの捜索。
彼の生死に関して不明である以上、どちらの可能性も考慮しなけれならない。
そして、仮にアルベルが生きているとするならば、冒険者がパルーナ湖に来たことで人魚族としても察するものがあるだろう。
そう考えるとあまり時間を掛けるべきではないと判断したミリアとマクスウェル。
こうしてスズネたちは捜索及び人魚族との戦闘の続行を決めた。
ガン、ガン、ガン ───── 。
ガン、ガン、ガン ───── 。
「ん?何の音っすか?」
ガン、ガン、ガン ───── 。
ガン、ガン ─── バキッ・・・バキバキバキ。
─────── グラグラッ。
「うわっ!?何、何、何??」
「アレ!後ろを見て」
スズネの大きな声を聞き後ろを振り返ったメンバーたちは、衝撃をもってその光景を目の当たりにした。
なんと、スズネたちが目の前で威嚇を続けていた人魚たちに気を取られているうちに、別の人魚たちが水中を移動して下から水面に出来た氷を壊していたのである。
それによってスズネたちがいる場所から半径三メートルほどの面積を残し全ての氷が破壊されてしまったのだった。
まさにパールナ湖に浮かぶ孤島と化してしまう。
「逃すつもりはないってことね。上等よ」
「元よりそのつもりでしたからね。好都合です」
「でも、ピンチには変わりないっすよ~」
再び周囲を高速で泳ぎだした人魚たち。
スズネたちは四方八方、三百六十度、何処から仕掛けてくるか分からない状況に気を引き締める。
スイーーーッ。
スイーーーッ。
ザバーーーン!!
「スズネさん、危ない!!」
──────── キーンッ。
突然水中から飛び出した人魚が鋭い爪でスズネに攻撃を仕掛けてきた。
間一髪のところでマクスウェルが間に入り防いだものの、明らかに不利な状況下での戦闘になることを改めて思い知らされる。
「アハハハハ、もはやお前たちに退路はない。このまま続ければ四方より八つ裂きにされておしまいだぞ」
「ねぇねぇ姉様、そろそろコイツら殺っちゃってもいい?」
「まだよ。女王様の言葉は絶対だからね」
「は~い。でもね…姉様、他の子たちは我慢の限界そうよ」
「グゥゥゥゥゥ」
「アハハハハ。何よそれ、怖~い」
マクスウェルを湖へと引きずり込んだリーダー格の人魚を除き、他の者たちは今にも襲い掛かって来そうな様相である。
しかし、時折談笑している姿もあることから、先程の攻撃はあくまでもおふざけ程度にしか思っていないのだろう。
それでも勝手な行動をすることはなく統率されているところを見るに、リーダー格の人魚が他の者たちから慕われていることが分かる。
「お前たちもこんな所で死にたくはないだろう?大人しくその男を置いていけ。そうすれば残りのやつらは見逃してやる」
「はぁ?喧嘩売ってんの?仲間を売れるわけないでしょ。御託はいいからさっさとかかって来なさいよ」
売り言葉に買い言葉。
こんな調子ではなかなか話も進まない。
「姉様、ここまで言ってダメなら無理ですよ」
「そうですよ姉様、所詮ヒト族にはお優しい姉様のお考えなど理解出来ないのでしょう」
「姉様~殺そ、殺そ」
他の人魚族に促され頭を悩ませるリーダー格の人魚であったが、瞳を閉じて数秒考えたのち結論を出す。
「ハァ~残念ながらみんなの言う通りなようね・・・少し痛い目をみてもらいましょう。みんなお待たせ、水辺において私たち人魚族を敵に回すということがどういうことなのか思い知らせてあげなさい」
「「「「「 はい、姉様!! 」」」」」
ここから人魚族による怒涛の攻撃が始まる。
水中を本気で泳ぐ人魚のスピードがスズネたちの想定していたよりもずっと速く、さらに水面に姿を現している者もいれば、水中に姿を隠して移動する者もいるためなかなか的を絞ることが出来ない。
「アハハハハ」
「次は私の番だよ」
「ダメですよ。次はウチの番です」
「アハハハハ、誰でもいいから早くしてよ~」
苦戦するスズネたちを前に笑みを浮かべたり、笑い声を上げながら攻撃してくる人魚たち。
どこからどう見ても完全にナメられており、彼女たちにとっては遊びの一環のようである。
そんな余裕綽々な人魚たちに対して必死に抵抗するスズネたちであったが、狭く不安定な足場によって本来の動きが制限され本領を発揮出来ない。
その様子を見てさらに楽しそうに騒ぎ出す人魚たちは、その攻勢を一切緩めることはなく、スズネたちは防戦一方に追い込まれるのであった。
「防戦一方ね、このままだとジリ貧よ」
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「とりあえず、みんなを回復するね ───── 癒しの光」
疲弊した仲間たちに対しスズネが回復魔法を施したが、体力は回復しても打開策を見出せていない状況に変わりはなかった。
そして、ここでラーニャが思いもよらない解決策を言い放つ。
「一つ思ったんじゃが、相手が水中にいるのであればわっちの雷魔法で電撃をくらわせればいいのではないか?」
確かに・・・。
相手が水の中にいるのであれば雷系の魔法は効果的である。
そして、それは相対する人魚族がどれだけのスピードを有していたとしても関係のないことでもある。
他のメンバーたちもなるほどと思い、ラーニャの出した案に賛同しようとしたその時、クロノがそれを止めさせる。
「止めておけ」
「どうしてなのじゃ?今の状況を打開するためには最善の策ではないか」
「そうよ。敵も一網打尽に出来ていいじゃない」
ラーニャとミリアの言葉を聞き、ハァ~とあからさまに大きな溜め息を吐き出し項垂れたクロノ。
そして、その真意を話し始めた。
「水系統の相手に雷魔法は有効だ。その点に間違いはない。しかし、時と場所を考えろ。こんな湖の真ん中に雷なんて落としてみろ…あの人魚どもどころかこの湖に住む全ての命を刈り取ることになるぞ」
「確かに、そうなってはパルーナ湖は死んだも同然です。トットカ村の人たちも困ることになります」
「クエストをクリアすることだけが全てじゃないもんね。クリアもしつつ湖も村も守ろう!!」
「でも、それだと状況は変わんないっすよ」
せっかく見出しかけた光明を奪われ振り出しに戻ったスズネたちであったが、悩めるスズネたちに珍しくクロノがアドバイスをくれる。
「ハァ~お前らは魔人との戦いで何を学んだんだよ。俺と魔人の戦闘を見てただろ?しょうがねぇ~からちょっと手解きしてやるよ」
こうしてスズネたちは圧倒的に不利な人魚たちとの戦闘の最中にクロノによる対人魚戦のレクチャーを受けることとなったのだった。
本性を現した人魚族。
そして突如として現れた十体もの人魚族に囲まれ、圧倒的に不利な状況に追い込まれるマクスウェル。
水中であるため本来の動きが出来ず、さらに水を含んだ衣服がマクスウェルの動きに制限をかける。
一方の人魚たちは、さすが水中において世界最速を誇ると伝承されているだけのことはあり、目で追うのがやっとという猛スピードでマクスウェルの周囲を移動している。
「ヒト族ごときでは我々のスピードに付いて来れまい」
「ヒッヒッヒッ。姉様、コイツは殺しちゃっていいの?」
「当たり前でしょ。ヒト族の男なんて皆殺しよ。でも、まだよ」
「「「「「 殺せ!殺せ!殺せ! 」」」」」
マクスウェルを中心にグルグルと周囲を回りながら殺せ!殺せ!という人魚たちによるコールが沸き起こる。
先程までの穏やかなパルーナ湖から打って変わって異様な雰囲気となり、スズネたちは援護に向かうべくマクスウェルの元へ急ぐ。
しかし、マクスウェルも人魚たちも湖の中にいる。
スズネたちがどうやって近づこうかと思慮しているとラーニャが詠唱を始めた。
「凍寒より生まれし氷砂を以って、凍てつけ ───── 氷風」
ラーニャによる魔法の発動によってパルーナ湖の水面が徐々に凍り始める。
そして、その様子を見ていた人魚たちは慌ててその場から離れ、凍る水面から距離を取るのだった。
「凄いよ、ラーニャちゃん」
「アンタいつの間に氷魔法なんて覚えたのよ」
「ワーッハッハッハッ。どうじゃ、驚いたであろう」
「みんな安心するのは早いっす。確かに凄いっすけど・・・マクスウェルがめちゃくちゃ寒そうにしてるっすよ」
「は…早く助けてあげないと」
人魚族の脅威から解放されたマクスウェルであったが、突如現れた氷に迫られて一気に体温を失い、氷上に上がった後もガタガタと震えていた。
「ふぅ~しょうがないのう、まったく世話のかかるやつじゃ。陽より熱せられし風を以って、彼の者を暖めよ ───── 暖風」
ずぶ濡れになり身体の冷え切ったマクスウェルを暖かな風が包み込む。
そして、あっという間にびしょ濡れになっていた衣服が乾き、それと同時に暖かな風がその身を覆い、寒さを感じなくなったのだった。
「みんなもなのじゃ」
ラーニャが右手を広げスズネたちへ向けると、全員がマクスウェルと同様に暖かな風にその身を包み込まれた。
「何よコレ!?全然寒くないわ」
「湖に足場も出来たし、これでマクスウェル君の所へも行けるね」
「急ぐっす」
広いパルーナ湖の約半分が凍りつき足場が生まれたことで、スズネたちは急いでマクスウェルの元へと駆け寄る。
そして、ラーニャの魔法によってなんとか眼前の危機を脱したマクスウェルではあったが、疲労感は色濃く出ている。
その様子を心配するスズネたちであったが、相対する脅威は消えていない。
自分たちに向けて放たれた魔法から逃れ、その後も変わらず湖を縦横無尽に泳ぎ回る人魚たちは威嚇を続けながら攻撃の機会を伺っている。
「して…ここからどうするんじゃ?」
「足場が出来ても戦いようがないっすよ」
「一度体制を整える?」
「いえ、このまま続けましょう。次いつチャンスがあるかも分かりませんからね。もしアルベルさんが生きているのだとしたら急いだ方がいいでしょう」
「アタシもマクスウェルに賛成だわ。冒険者が来たと知った人魚族が今後何をするか分かんないしね」
今回の依頼内容であるアルベルの捜索。
彼の生死に関して不明である以上、どちらの可能性も考慮しなけれならない。
そして、仮にアルベルが生きているとするならば、冒険者がパルーナ湖に来たことで人魚族としても察するものがあるだろう。
そう考えるとあまり時間を掛けるべきではないと判断したミリアとマクスウェル。
こうしてスズネたちは捜索及び人魚族との戦闘の続行を決めた。
ガン、ガン、ガン ───── 。
ガン、ガン、ガン ───── 。
「ん?何の音っすか?」
ガン、ガン、ガン ───── 。
ガン、ガン ─── バキッ・・・バキバキバキ。
─────── グラグラッ。
「うわっ!?何、何、何??」
「アレ!後ろを見て」
スズネの大きな声を聞き後ろを振り返ったメンバーたちは、衝撃をもってその光景を目の当たりにした。
なんと、スズネたちが目の前で威嚇を続けていた人魚たちに気を取られているうちに、別の人魚たちが水中を移動して下から水面に出来た氷を壊していたのである。
それによってスズネたちがいる場所から半径三メートルほどの面積を残し全ての氷が破壊されてしまったのだった。
まさにパールナ湖に浮かぶ孤島と化してしまう。
「逃すつもりはないってことね。上等よ」
「元よりそのつもりでしたからね。好都合です」
「でも、ピンチには変わりないっすよ~」
再び周囲を高速で泳ぎだした人魚たち。
スズネたちは四方八方、三百六十度、何処から仕掛けてくるか分からない状況に気を引き締める。
スイーーーッ。
スイーーーッ。
ザバーーーン!!
「スズネさん、危ない!!」
──────── キーンッ。
突然水中から飛び出した人魚が鋭い爪でスズネに攻撃を仕掛けてきた。
間一髪のところでマクスウェルが間に入り防いだものの、明らかに不利な状況下での戦闘になることを改めて思い知らされる。
「アハハハハ、もはやお前たちに退路はない。このまま続ければ四方より八つ裂きにされておしまいだぞ」
「ねぇねぇ姉様、そろそろコイツら殺っちゃってもいい?」
「まだよ。女王様の言葉は絶対だからね」
「は~い。でもね…姉様、他の子たちは我慢の限界そうよ」
「グゥゥゥゥゥ」
「アハハハハ。何よそれ、怖~い」
マクスウェルを湖へと引きずり込んだリーダー格の人魚を除き、他の者たちは今にも襲い掛かって来そうな様相である。
しかし、時折談笑している姿もあることから、先程の攻撃はあくまでもおふざけ程度にしか思っていないのだろう。
それでも勝手な行動をすることはなく統率されているところを見るに、リーダー格の人魚が他の者たちから慕われていることが分かる。
「お前たちもこんな所で死にたくはないだろう?大人しくその男を置いていけ。そうすれば残りのやつらは見逃してやる」
「はぁ?喧嘩売ってんの?仲間を売れるわけないでしょ。御託はいいからさっさとかかって来なさいよ」
売り言葉に買い言葉。
こんな調子ではなかなか話も進まない。
「姉様、ここまで言ってダメなら無理ですよ」
「そうですよ姉様、所詮ヒト族にはお優しい姉様のお考えなど理解出来ないのでしょう」
「姉様~殺そ、殺そ」
他の人魚族に促され頭を悩ませるリーダー格の人魚であったが、瞳を閉じて数秒考えたのち結論を出す。
「ハァ~残念ながらみんなの言う通りなようね・・・少し痛い目をみてもらいましょう。みんなお待たせ、水辺において私たち人魚族を敵に回すということがどういうことなのか思い知らせてあげなさい」
「「「「「 はい、姉様!! 」」」」」
ここから人魚族による怒涛の攻撃が始まる。
水中を本気で泳ぐ人魚のスピードがスズネたちの想定していたよりもずっと速く、さらに水面に姿を現している者もいれば、水中に姿を隠して移動する者もいるためなかなか的を絞ることが出来ない。
「アハハハハ」
「次は私の番だよ」
「ダメですよ。次はウチの番です」
「アハハハハ、誰でもいいから早くしてよ~」
苦戦するスズネたちを前に笑みを浮かべたり、笑い声を上げながら攻撃してくる人魚たち。
どこからどう見ても完全にナメられており、彼女たちにとっては遊びの一環のようである。
そんな余裕綽々な人魚たちに対して必死に抵抗するスズネたちであったが、狭く不安定な足場によって本来の動きが制限され本領を発揮出来ない。
その様子を見てさらに楽しそうに騒ぎ出す人魚たちは、その攻勢を一切緩めることはなく、スズネたちは防戦一方に追い込まれるのであった。
「防戦一方ね、このままだとジリ貧よ」
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「とりあえず、みんなを回復するね ───── 癒しの光」
疲弊した仲間たちに対しスズネが回復魔法を施したが、体力は回復しても打開策を見出せていない状況に変わりはなかった。
そして、ここでラーニャが思いもよらない解決策を言い放つ。
「一つ思ったんじゃが、相手が水中にいるのであればわっちの雷魔法で電撃をくらわせればいいのではないか?」
確かに・・・。
相手が水の中にいるのであれば雷系の魔法は効果的である。
そして、それは相対する人魚族がどれだけのスピードを有していたとしても関係のないことでもある。
他のメンバーたちもなるほどと思い、ラーニャの出した案に賛同しようとしたその時、クロノがそれを止めさせる。
「止めておけ」
「どうしてなのじゃ?今の状況を打開するためには最善の策ではないか」
「そうよ。敵も一網打尽に出来ていいじゃない」
ラーニャとミリアの言葉を聞き、ハァ~とあからさまに大きな溜め息を吐き出し項垂れたクロノ。
そして、その真意を話し始めた。
「水系統の相手に雷魔法は有効だ。その点に間違いはない。しかし、時と場所を考えろ。こんな湖の真ん中に雷なんて落としてみろ…あの人魚どもどころかこの湖に住む全ての命を刈り取ることになるぞ」
「確かに、そうなってはパルーナ湖は死んだも同然です。トットカ村の人たちも困ることになります」
「クエストをクリアすることだけが全てじゃないもんね。クリアもしつつ湖も村も守ろう!!」
「でも、それだと状況は変わんないっすよ」
せっかく見出しかけた光明を奪われ振り出しに戻ったスズネたちであったが、悩めるスズネたちに珍しくクロノがアドバイスをくれる。
「ハァ~お前らは魔人との戦いで何を学んだんだよ。俺と魔人の戦闘を見てただろ?しょうがねぇ~からちょっと手解きしてやるよ」
こうしてスズネたちは圧倒的に不利な人魚たちとの戦闘の最中にクロノによる対人魚戦のレクチャーを受けることとなったのだった。
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