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天使と悪魔
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「なんだ・・・これは・・・」
激痛に頭を押さえながら、苦悶の表情を見せる魔王クロノ。
「それは無事に契約が完了した証拠じゃよ」
「ジジイ、何を言ってやがる」
「お前はスズネによってここに召喚され、口づけしたことで召喚魔法契約が成されたのじゃ。そして、契約した者同士の間にはパスが繋がれることにより、“相手が真に拒絶すること”に対してブレーキが掛けられ、痛みと共に強制停止させられるんじゃよ。逆に信頼度が上がるとお互いの能力を増大させたり、今あるスキルを進化させることもある」
「はぁ!?契約だと?何を勝手に訳の分からんことを言ってるんだ。そんなものは今すぐに破棄だ!!俺はお前らを皆殺しにしてやる」
「それはダメです」
ビキビキビキビキッ ─────
「ぐわっ」
再び苦悶の表情と共に頭を抱える魔王。
「お前・・・いい加減にしろよ。全員殺してやる」
「ダメです」
笑顔を交えて答えるスズネ。
ビキビキビキビキッ ─────
「ぐわっ」
生まれつき最強ゆえ、ここまでの屈辱を味わったことのない魔王は怒りに震えつつ静かにスズネを睨みつける。
「もう我慢も限界・・・。茶番は終わりだ。」
魔王の周囲に魔力が集まっていく。
そしてそれは洗練され、目には見えずともピンッ張り詰めた空気が会場に広がっていくのだった。
「こ…これは、まずいのう・・・」
会場中に緊張が走る中、もう一人静かに怒る人物がいた。
もう、本当に懲りないな~。
これは一度キツいお灸を据えてやらないと ───── 。
そして、スズネは不敵な笑みを見せる。
「魔王様~」
「なんだ、今さら許しを乞うても無駄だぞ」
「いえいえ、少々おいたが過ぎますよ。お・か・く・ご・を!!」
何かを察した魔王の顔から怒りが消え失せ、動揺と共に顔が真っ青になっていく。
「おい…まさか…止めろ…」
「しっかり反省してくださいね」
ビキビキビキビキッ ─────
ビキビキビキビキッ ─────
ビキビキビキビキッ ─────
ビキビキビキビキッ ─────
ビキビキビキビキッ ─────
・・・・・
満面の笑みと共に繰り返される言葉の度に激痛に苦しむ魔王。
この時、会場中の人間が同じことを思った。
“この子…天使のような笑顔をしているが、やっていることは悪魔の所業だ”と・・・。
「クソ、もう止めろ。お前と関わるとろくなことがなさそうだ。契約なんて知るか、俺はもう帰る。二度と俺に関わるな」
「えっ!?帰っちゃうんですか?せっかく契約できたのにーーーーー」
不満の色を隠すことなく吐き捨てるように言葉を発する魔王に対し、スズネは涙を浮かべ膝から崩れ落ちる。
「だからそんなもの知るか。お前が勝手にやったことだろ」
「それはそうなんですけど、そんなこと言わずにパートナーになってくださいよ~~~」
な・・・なんなんだコイツは。
自分勝手にも程があるだろ・・・
しかも面倒くさい・・・
こんな奴に関わってられるか!!
「お前の都合など俺には関係ない。皆殺しにしてやたいところだが、興が冷めた。今日は契約を破棄して俺は帰る」
なんだこのバカップルのようなやり取りは・・・。
自分たちはいったい何を見させられているんだろうか?と会場中が呆然と二人のやり取りを見ていたところで、ヴォルディモア校長がバツが悪そうに口を開く。
「ゴホン。魔王クロノよ、お前の思いは理解したが、残念ながらそれは無理じゃ」
「はぁ??」
「そもそも一度完了した召喚魔法契約は解除できん。いや、正確には可能かもしれんが、今現在その方法を知っておる者が一人もおらん。そして、契約した者同士はいわば一心同体。スズネに万が一のことがあれば、お前にもその影響が生じるからの。離れておるより近くにおった方がお前にとっても良いんじゃないかのう」
ヴォルディモアの言葉を受け思考を巡らせる魔王だったが、数秒した後に重い口を開く。
「クソッ!!忌々しい・・・もはや呪いの類だな。おい、お前。スズネと言ったか?」
「あっ・・・はい」
「一時(いっとき)だ!!この忌まわしい契約を解除する時まで付き合ってやる。だからお前も俺の目的に協力しろ。いいな」
「う~~~やったーーーーー。ありがとうございます。ありがとうございます。これで無事に私たちはパートナーですね!」
「お前俺の話を聞いてたのか?」
「もちろんです!頑張って一緒に契約解除の方法を探しましょーーー」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「それでは、これをもって今年度のサーバイン戦闘専門学校の卒業式を終了する。尚、スズネと魔王クロノに関しては、王宮へ報告の後、追って対応することとする。それまでは、魔王クロノに “魔導具:拘束の腕輪” を着けた上で、わしの使い魔を監視役として付ける。以上、皆の者今日はただちに帰路につくように」
「スズネ、こちらへ来なさい」
「はい」
─── ピーーーーーッ ───
ヴォルディモア校長が指笛を鳴らすと、上空から雪のように真っ白な一羽のイーグルが舞い降り、校長の左腕に留まる。
「こやつがわしの相棒、セイクリッド・イーグルのエデルじゃ。今日からお前たちの監視役として同行させる。そもそもイーグルの眼には “全てを見通す力” が備わっておるんじゃが、セイクリッド・イーグルには、さらに “”魔を封じる力” が宿っておる。くれぐれも暴れたりせんようにな。身動きが取れずに拘束されてしまうからのう」
「ふん、そんなものでこの俺を封じ込められるかは疑問だがな。まぁ~騒ぐとこの女がうるさいからな、ほどほどにしておいてやるよ」
「いや~それにしてもエデルちゃん、可愛い~~~。イジメちゃ駄目ですからね!」
「そんなくだらんことせんわ」
「えへへ。それなら良かった。それじゃ、私たちも帰ろっか」
───────────────────────────────────
卒業式を終え帰宅しようとするスズネとクロノであったのだが ───── 。
はぁ~それにしても、会場中の視線が痛い・・・
完全に離れて距離をとられてるし・・・
クロノが魔王だから?
こんなに大人しくしてるのになんでだろ?
心細いな~。
そんな周囲のことなどお構い無しに手を振りながら駆け寄ってくる姿がひとつ。
「スッズネー」
満面の笑みをしたミリアだ。
こういう時、周りの空気に左右されず、自分の思いに真っ直ぐ突き進む彼女の存在にスズネは何度も助けられてきた。
「いやーやっぱアンタ最高だわ。まさか魔王を召喚しちゃうなんてね。前代未聞よ!!」
安堵の表情を見せるスズネに対し、新しいおもちゃを与えられた子供のように興奮した様子のミリア。
「ミリア~、めっちゃ緊張したよ~。私ちゃんと出来てたかな??」
いやいや・・・そういう問題ではないと思うよ・・・。
スズネの問い掛けにミリアは苦笑いで返す。
「それはいいとして、え~とクロノさん・・・だっけ?私はミリア、スズネの唯一にして最高の親友よ!ヨロシクね」
「クロノでいい、お前は俺を恐れないのか?」
「う~ん・・・まぁ~ね。恐れたって何も変わらないし、クロノもこれ以上は無闇やたらと攻撃とかする感じもなさそうだしね。それにスズネと契約したんでしょ。それならきっと大丈夫!!」
「類は友を呼ぶ・・・か」
「えっ?何か言った?」
「いや、お前もバカなんだな」
「失礼ね!目の前に現れた物事をしっかり受け止められる心の広さを持っていると言って欲しいわ」
「さっすがミリア、カッコイイ~」
「でしょ~」
「「あはははははははは」」
一向に警戒心を解くことのない周囲の視線をよそに、自分たちの世界を楽しむ二人。
その様子を見て、呆れた表情で頭を抱えるクロノであった。
「それじゃ、私たちも帰ろっか」
「そうだね。それじゃ、また明日。クロノもまた明日ね」
「ふん。好きにしろ」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ただいまー」
スズネの声を聞きつけ、奥からロザリーが出迎えにきた。
「おや、お帰りスズネ。卒業式、特に召喚の儀は無事に終えられたのかい?」
「えーと、まぁ~一応はね・・・ははは」
「なんだい歯切れが悪いねぇ。ところで、後ろにいるイケメンは誰だい?彼氏かい?」
口元をニヤつかせ、揶揄うような素振りを見せるロザリー。
「ち…ち…違うよ、おばあちゃん!こちらは私が召喚で喚び出したクロノだよ」
「クロノ?まるでどこかの魔王様みたいな名前だね」
スズネの紹介に、ロザリーは笑みを含んだ返答をする。
「その通りだ。俺が魔王クロノで間違いない」
「なんだい、やっぱりそうかい。アンタからとんでもない魔力を感じるから、まさかと思ったら・・・」
「おばあちゃんはあまり驚かないんだね」
おおよそ自分が想定していた反応ではなかったため、スズネは不思議そうな顔でロザリーを見る。
「私を誰だと思ってるんだい。魔王くらいで怖がると思ったら大間違いだよ!!」
スズネの心配をよそに、大笑いしながらロザリーは強気に言い放つ。
「私はスズネの祖母でロザリーってんだ。宜しく頼むよ、魔王さん」
「ふん。好きにしろ」
「それにしても、アンタもまたとんでもないのに喚び出されちまったね。“超”が付くほどのマイペースで世話をかけると思うけど、悪い子じゃないんだ。宜しく頼むよ」
そう言うとロザリーは深々と頭を下げた。
「安心しろ。すでに経験済みだ。それに、まぁ~なんだ…この鬱陶しい契約を解除するまでだがな」
少し照れるようにクロノが答える。
「ふふふ、そうかいそうかい。立ち話もなんだ、食事を用意してあるから二人とも手を洗ったらリビングに来な。積もる話は食事をしながらにしよう」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
椅子に腰を掛ける三人。
テーブルの上には、所狭しと彩り豊かな料理の数々が並べられている。
肉料理、魚料理、野菜料理とどれも食欲をそそるいい匂い。
「さぁ~今日はお祝いだよ!!腕によりをかけたからね。二人ともたんとお食べ」
「やったーーー」
「クロノも遠慮せずに食べてね」
「なぜお前が言う」
「それじゃ~二人とも手を合わせて」
「「「いただきまーす」」」
激痛に頭を押さえながら、苦悶の表情を見せる魔王クロノ。
「それは無事に契約が完了した証拠じゃよ」
「ジジイ、何を言ってやがる」
「お前はスズネによってここに召喚され、口づけしたことで召喚魔法契約が成されたのじゃ。そして、契約した者同士の間にはパスが繋がれることにより、“相手が真に拒絶すること”に対してブレーキが掛けられ、痛みと共に強制停止させられるんじゃよ。逆に信頼度が上がるとお互いの能力を増大させたり、今あるスキルを進化させることもある」
「はぁ!?契約だと?何を勝手に訳の分からんことを言ってるんだ。そんなものは今すぐに破棄だ!!俺はお前らを皆殺しにしてやる」
「それはダメです」
ビキビキビキビキッ ─────
「ぐわっ」
再び苦悶の表情と共に頭を抱える魔王。
「お前・・・いい加減にしろよ。全員殺してやる」
「ダメです」
笑顔を交えて答えるスズネ。
ビキビキビキビキッ ─────
「ぐわっ」
生まれつき最強ゆえ、ここまでの屈辱を味わったことのない魔王は怒りに震えつつ静かにスズネを睨みつける。
「もう我慢も限界・・・。茶番は終わりだ。」
魔王の周囲に魔力が集まっていく。
そしてそれは洗練され、目には見えずともピンッ張り詰めた空気が会場に広がっていくのだった。
「こ…これは、まずいのう・・・」
会場中に緊張が走る中、もう一人静かに怒る人物がいた。
もう、本当に懲りないな~。
これは一度キツいお灸を据えてやらないと ───── 。
そして、スズネは不敵な笑みを見せる。
「魔王様~」
「なんだ、今さら許しを乞うても無駄だぞ」
「いえいえ、少々おいたが過ぎますよ。お・か・く・ご・を!!」
何かを察した魔王の顔から怒りが消え失せ、動揺と共に顔が真っ青になっていく。
「おい…まさか…止めろ…」
「しっかり反省してくださいね」
ビキビキビキビキッ ─────
ビキビキビキビキッ ─────
ビキビキビキビキッ ─────
ビキビキビキビキッ ─────
ビキビキビキビキッ ─────
・・・・・
満面の笑みと共に繰り返される言葉の度に激痛に苦しむ魔王。
この時、会場中の人間が同じことを思った。
“この子…天使のような笑顔をしているが、やっていることは悪魔の所業だ”と・・・。
「クソ、もう止めろ。お前と関わるとろくなことがなさそうだ。契約なんて知るか、俺はもう帰る。二度と俺に関わるな」
「えっ!?帰っちゃうんですか?せっかく契約できたのにーーーーー」
不満の色を隠すことなく吐き捨てるように言葉を発する魔王に対し、スズネは涙を浮かべ膝から崩れ落ちる。
「だからそんなもの知るか。お前が勝手にやったことだろ」
「それはそうなんですけど、そんなこと言わずにパートナーになってくださいよ~~~」
な・・・なんなんだコイツは。
自分勝手にも程があるだろ・・・
しかも面倒くさい・・・
こんな奴に関わってられるか!!
「お前の都合など俺には関係ない。皆殺しにしてやたいところだが、興が冷めた。今日は契約を破棄して俺は帰る」
なんだこのバカップルのようなやり取りは・・・。
自分たちはいったい何を見させられているんだろうか?と会場中が呆然と二人のやり取りを見ていたところで、ヴォルディモア校長がバツが悪そうに口を開く。
「ゴホン。魔王クロノよ、お前の思いは理解したが、残念ながらそれは無理じゃ」
「はぁ??」
「そもそも一度完了した召喚魔法契約は解除できん。いや、正確には可能かもしれんが、今現在その方法を知っておる者が一人もおらん。そして、契約した者同士はいわば一心同体。スズネに万が一のことがあれば、お前にもその影響が生じるからの。離れておるより近くにおった方がお前にとっても良いんじゃないかのう」
ヴォルディモアの言葉を受け思考を巡らせる魔王だったが、数秒した後に重い口を開く。
「クソッ!!忌々しい・・・もはや呪いの類だな。おい、お前。スズネと言ったか?」
「あっ・・・はい」
「一時(いっとき)だ!!この忌まわしい契約を解除する時まで付き合ってやる。だからお前も俺の目的に協力しろ。いいな」
「う~~~やったーーーーー。ありがとうございます。ありがとうございます。これで無事に私たちはパートナーですね!」
「お前俺の話を聞いてたのか?」
「もちろんです!頑張って一緒に契約解除の方法を探しましょーーー」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「それでは、これをもって今年度のサーバイン戦闘専門学校の卒業式を終了する。尚、スズネと魔王クロノに関しては、王宮へ報告の後、追って対応することとする。それまでは、魔王クロノに “魔導具:拘束の腕輪” を着けた上で、わしの使い魔を監視役として付ける。以上、皆の者今日はただちに帰路につくように」
「スズネ、こちらへ来なさい」
「はい」
─── ピーーーーーッ ───
ヴォルディモア校長が指笛を鳴らすと、上空から雪のように真っ白な一羽のイーグルが舞い降り、校長の左腕に留まる。
「こやつがわしの相棒、セイクリッド・イーグルのエデルじゃ。今日からお前たちの監視役として同行させる。そもそもイーグルの眼には “全てを見通す力” が備わっておるんじゃが、セイクリッド・イーグルには、さらに “”魔を封じる力” が宿っておる。くれぐれも暴れたりせんようにな。身動きが取れずに拘束されてしまうからのう」
「ふん、そんなものでこの俺を封じ込められるかは疑問だがな。まぁ~騒ぐとこの女がうるさいからな、ほどほどにしておいてやるよ」
「いや~それにしてもエデルちゃん、可愛い~~~。イジメちゃ駄目ですからね!」
「そんなくだらんことせんわ」
「えへへ。それなら良かった。それじゃ、私たちも帰ろっか」
───────────────────────────────────
卒業式を終え帰宅しようとするスズネとクロノであったのだが ───── 。
はぁ~それにしても、会場中の視線が痛い・・・
完全に離れて距離をとられてるし・・・
クロノが魔王だから?
こんなに大人しくしてるのになんでだろ?
心細いな~。
そんな周囲のことなどお構い無しに手を振りながら駆け寄ってくる姿がひとつ。
「スッズネー」
満面の笑みをしたミリアだ。
こういう時、周りの空気に左右されず、自分の思いに真っ直ぐ突き進む彼女の存在にスズネは何度も助けられてきた。
「いやーやっぱアンタ最高だわ。まさか魔王を召喚しちゃうなんてね。前代未聞よ!!」
安堵の表情を見せるスズネに対し、新しいおもちゃを与えられた子供のように興奮した様子のミリア。
「ミリア~、めっちゃ緊張したよ~。私ちゃんと出来てたかな??」
いやいや・・・そういう問題ではないと思うよ・・・。
スズネの問い掛けにミリアは苦笑いで返す。
「それはいいとして、え~とクロノさん・・・だっけ?私はミリア、スズネの唯一にして最高の親友よ!ヨロシクね」
「クロノでいい、お前は俺を恐れないのか?」
「う~ん・・・まぁ~ね。恐れたって何も変わらないし、クロノもこれ以上は無闇やたらと攻撃とかする感じもなさそうだしね。それにスズネと契約したんでしょ。それならきっと大丈夫!!」
「類は友を呼ぶ・・・か」
「えっ?何か言った?」
「いや、お前もバカなんだな」
「失礼ね!目の前に現れた物事をしっかり受け止められる心の広さを持っていると言って欲しいわ」
「さっすがミリア、カッコイイ~」
「でしょ~」
「「あはははははははは」」
一向に警戒心を解くことのない周囲の視線をよそに、自分たちの世界を楽しむ二人。
その様子を見て、呆れた表情で頭を抱えるクロノであった。
「それじゃ、私たちも帰ろっか」
「そうだね。それじゃ、また明日。クロノもまた明日ね」
「ふん。好きにしろ」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ただいまー」
スズネの声を聞きつけ、奥からロザリーが出迎えにきた。
「おや、お帰りスズネ。卒業式、特に召喚の儀は無事に終えられたのかい?」
「えーと、まぁ~一応はね・・・ははは」
「なんだい歯切れが悪いねぇ。ところで、後ろにいるイケメンは誰だい?彼氏かい?」
口元をニヤつかせ、揶揄うような素振りを見せるロザリー。
「ち…ち…違うよ、おばあちゃん!こちらは私が召喚で喚び出したクロノだよ」
「クロノ?まるでどこかの魔王様みたいな名前だね」
スズネの紹介に、ロザリーは笑みを含んだ返答をする。
「その通りだ。俺が魔王クロノで間違いない」
「なんだい、やっぱりそうかい。アンタからとんでもない魔力を感じるから、まさかと思ったら・・・」
「おばあちゃんはあまり驚かないんだね」
おおよそ自分が想定していた反応ではなかったため、スズネは不思議そうな顔でロザリーを見る。
「私を誰だと思ってるんだい。魔王くらいで怖がると思ったら大間違いだよ!!」
スズネの心配をよそに、大笑いしながらロザリーは強気に言い放つ。
「私はスズネの祖母でロザリーってんだ。宜しく頼むよ、魔王さん」
「ふん。好きにしろ」
「それにしても、アンタもまたとんでもないのに喚び出されちまったね。“超”が付くほどのマイペースで世話をかけると思うけど、悪い子じゃないんだ。宜しく頼むよ」
そう言うとロザリーは深々と頭を下げた。
「安心しろ。すでに経験済みだ。それに、まぁ~なんだ…この鬱陶しい契約を解除するまでだがな」
少し照れるようにクロノが答える。
「ふふふ、そうかいそうかい。立ち話もなんだ、食事を用意してあるから二人とも手を洗ったらリビングに来な。積もる話は食事をしながらにしよう」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
椅子に腰を掛ける三人。
テーブルの上には、所狭しと彩り豊かな料理の数々が並べられている。
肉料理、魚料理、野菜料理とどれも食欲をそそるいい匂い。
「さぁ~今日はお祝いだよ!!腕によりをかけたからね。二人ともたんとお食べ」
「やったーーー」
「クロノも遠慮せずに食べてね」
「なぜお前が言う」
「それじゃ~二人とも手を合わせて」
「「「いただきまーす」」」
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