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後編
35.一年後-6
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自分のものを使えない彼にとって、こうして絶頂の中にいるイリスを抱きしめることが、その代替行為なのかもしれない。
ようやく深く激しい快感の波から自分を取り戻しつつあるイリスは、そう思い、アルヴィドの舌と密着する肌の感触に集中した。何かを彼へ分け与えられたらよいと。
普段はここまでしかできない。だが今は薬酒の影響で、出すことができないアルヴィドは元より、イリスの方もまだ熱は冷めやらない。むしろ、成分が吸収、蓄積され、更に高まりつつある。
興奮のおかげで、イリスは何の恥じらいも、ためらいもなく、大胆なことができた。
「あ……、イリス?」
イリスは唇を離すと、足の方へずり下がり、彼の下腹部へ手を伸ばした。
下生えから覗く、柔らかいままの陰茎に指を這わす。
「あ、……っく」
小動物にでも触れるような手つきに、アルヴィドは切羽詰まった声を漏らした。全く勃たず発散できないだけで、性的な快感はそれなりに得られる。
「ごめんね、私ばっかり……」
傷つき弱ったものを労るように、優しく撫でる。
アルヴィドの心の深いところは、これを使うことを怖がっているのだ。
だから正常な反応を戒めている。
「いつかあなたも、これは怖い事じゃないって、わかるといいわね」
まだ息が少し上がったままの状態で、陰茎をそのままぱくりと口に含んだ。
「いっ、イリス……!?」
にゅる、と口から抜き取られる際に、結果的に一度舐めただけだ。驚いたアルヴィドがイリスをそこから引き剥がしてしまったから。
ただそれだけの刺激だったのだが、それかその直前にイリスのかけた言葉が契機になったのか、彼女の手の中の陰茎に変化が起きた。
「あれ?」
「え……!?」
くたりと寝ていたそれは、ゆっくりと、まるで顔を上げるように、膨らみ立ち上がった。滑らかな尻尾のようだったのに、固く反り立ち、先端が張り出している。
およそ九年ぶりのその生理反応に、イリスだけでなくアルヴィドも瞠目して言葉を失っていた。この時ばかりは二人とも、薬酒の支配を忘れていた。
実のところ、これはイリスの行動によるものではなく、摂取した薬酒の成分が体中を巡り、効果が最大限発揮される時点に至った結果であった。精神的な障壁はそのままに、それを無視して薬が無理やり体を反応させたのだ。
「アルヴィド、痛くない……?」
イリスは勃起した男性器を、あまりまじまじと見たことがない。だから、この唐突な、そして前後で違いすぎる変化に、むしろ不調を心配した。
直接触れては痛みがあるのではないかと、手をさまよわせ、そこから外れて下生えのあたりを宥めるように撫でる。
「うっ……、大丈夫だ。これは、多分正常な状態だ」
「そうなの? こんなに腫れているのに」
問題ないと言われると、途端にイリスは興味深そうにそれを触ろうと手を伸ばす。
アルヴィドは慌ててその手を掴んで引き離した。
「今は、あまり触られると、まずい」
「どうして」
「自分を、抑えられない」
薬の効果が最高潮に達しているアルヴィドは、自分の体が言うことを聞かなくなりつつあると自覚していた。だが、自覚したからといって止まれない。
「ああ、駄目だ……」
観念するような声音で呟きながら、アルヴィドはイリスの手を掴んだまま、押し倒した。
ようやく深く激しい快感の波から自分を取り戻しつつあるイリスは、そう思い、アルヴィドの舌と密着する肌の感触に集中した。何かを彼へ分け与えられたらよいと。
普段はここまでしかできない。だが今は薬酒の影響で、出すことができないアルヴィドは元より、イリスの方もまだ熱は冷めやらない。むしろ、成分が吸収、蓄積され、更に高まりつつある。
興奮のおかげで、イリスは何の恥じらいも、ためらいもなく、大胆なことができた。
「あ……、イリス?」
イリスは唇を離すと、足の方へずり下がり、彼の下腹部へ手を伸ばした。
下生えから覗く、柔らかいままの陰茎に指を這わす。
「あ、……っく」
小動物にでも触れるような手つきに、アルヴィドは切羽詰まった声を漏らした。全く勃たず発散できないだけで、性的な快感はそれなりに得られる。
「ごめんね、私ばっかり……」
傷つき弱ったものを労るように、優しく撫でる。
アルヴィドの心の深いところは、これを使うことを怖がっているのだ。
だから正常な反応を戒めている。
「いつかあなたも、これは怖い事じゃないって、わかるといいわね」
まだ息が少し上がったままの状態で、陰茎をそのままぱくりと口に含んだ。
「いっ、イリス……!?」
にゅる、と口から抜き取られる際に、結果的に一度舐めただけだ。驚いたアルヴィドがイリスをそこから引き剥がしてしまったから。
ただそれだけの刺激だったのだが、それかその直前にイリスのかけた言葉が契機になったのか、彼女の手の中の陰茎に変化が起きた。
「あれ?」
「え……!?」
くたりと寝ていたそれは、ゆっくりと、まるで顔を上げるように、膨らみ立ち上がった。滑らかな尻尾のようだったのに、固く反り立ち、先端が張り出している。
およそ九年ぶりのその生理反応に、イリスだけでなくアルヴィドも瞠目して言葉を失っていた。この時ばかりは二人とも、薬酒の支配を忘れていた。
実のところ、これはイリスの行動によるものではなく、摂取した薬酒の成分が体中を巡り、効果が最大限発揮される時点に至った結果であった。精神的な障壁はそのままに、それを無視して薬が無理やり体を反応させたのだ。
「アルヴィド、痛くない……?」
イリスは勃起した男性器を、あまりまじまじと見たことがない。だから、この唐突な、そして前後で違いすぎる変化に、むしろ不調を心配した。
直接触れては痛みがあるのではないかと、手をさまよわせ、そこから外れて下生えのあたりを宥めるように撫でる。
「うっ……、大丈夫だ。これは、多分正常な状態だ」
「そうなの? こんなに腫れているのに」
問題ないと言われると、途端にイリスは興味深そうにそれを触ろうと手を伸ばす。
アルヴィドは慌ててその手を掴んで引き離した。
「今は、あまり触られると、まずい」
「どうして」
「自分を、抑えられない」
薬の効果が最高潮に達しているアルヴィドは、自分の体が言うことを聞かなくなりつつあると自覚していた。だが、自覚したからといって止まれない。
「ああ、駄目だ……」
観念するような声音で呟きながら、アルヴィドはイリスの手を掴んだまま、押し倒した。
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