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後編
24.最後の手段-3
しおりを挟む「セーデルルンド先生」
「はい」
授業の後、生徒が数名、教壇の方まで下りてきた。教壇は階段状の教室の一番低い位置にある。
「今週の放課後は忙しいですか?」
一人、前へ出てきた彼は四年生で、ベゼルス部に所属している。他の子どもは違う部活だ。
「そこまで用事は多くありません。どうかしましたか」
以前は、生徒から授業のこと以外で話しかけられることは、ほとんどなかった。最近は少しずつ雑談をするようになってきている。
「ベゼルス部にまた来てもらえませんか」
今月の末日に対校試合が開催されるため、部員は学期末の試験が忙しい中ではあるが、強化練習中だ。イリスも空白期間はあるが、ベゼルスはそれなりの腕前だった。だから部員たちの練習相手として、今月に入ってから既に何度か駆り出されている。
部員たちのためとなっているものの、その実イリスの現実との対峙訓練の一環でもあった。イリスは昔部活に入るほどベゼルスが好きだったが、あの事があってからなぜか楽しめなくなった。これも避けていることとして扱われ、少しずつ挑戦するように、課題として設定されたのだ。そして丁度部活顧問であるアルヴィドが、強化期間だからという名目でイリスを部活に参加させた。
「それは――」
行っていいのだろうか、と逡巡した。
人から誘いを受けることが少ないので、本当に行ってもいいのか、行くべきなのか、と身構えて考え込む癖があった。
「さっきカッセル先生に似た人が歩いてた」
「お客さん?」
「かな? 魔法警察の服だったよ」
おかしな間ができてしまい、付き添ってきている他の学生のお喋りの方が耳に入る。
「――いいでしょう。ですがあまり遅い時間まではいられませんよ。試験期間中でもありますからね」
「はい! 待ってますね」
生徒は笑顔で返事をすると、友人たちと教室を出ていった。
部員の眼鏡に適い続投を求められたことと、ものを頼める程度には声をかけやすい存在になったであろうことは、イリスを少し明るい気持ちにさせた。
最近は忘れていた感情を思い出し、反動の所為か些細なことでも喜ばしく感じるようになっているのだった。
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