101 / 106
番外編(初夜編)
3.夢の続き作戦(1)
しおりを挟む
二人の初夜が失敗した翌日、ジークは何事もなかったかのように、いつも通り明るく振舞った。一つ変わったのは、控えていた口づけを気軽にするようになった事だ。起床時、外出時、帰宅時、就寝時、何かにつけてする。
ルディもジークが平然としているので、合わせて気にしていないふりをしたが、何をしていてもあの夜のことを思い出してしまう。完全に嫌な思い出になっている。
あれからジークは、ルディが現実での行為に抵抗感がなくなるよう、挿入なしで毎晩訓練をしてくれている。
しかし、いずれあの痛みと恐怖に向き合わなくてはならないと考えると、他の個所への愛撫は問題ないはずなのに、ルディの体は固く強張り、性交全般を受け付けないようになっていた。ほんの少し感じた肉芽からの快感すら、緊張で拾えないようになってしまった。
◆
「今日は床板の資材を買ってくるよ」
「いってらっしゃい」
ルディはいつも通りジークを見送ると、寝室へ戻って全裸になった。
このままではいけない。
彼は求婚してくれた時に子供はいてもいなくてもどちらでもいいと言っていたが、ルディは欲しい。
「まずは落ち着いて……」
毎晩の訓練で、ジークがよく口にする言葉だ。
落ち着かなくては快感を拾えない。快感を得なければ準備ができず、挿入に際し強い痛みが出る。ただし、濡れて準備ができたからといって痛くなくなるとは限らない。
若干余計なことまで考えつつ、ルディは深呼吸しながら自分の体に触れる。
ジークがしてくれているように、胸や秘所に刺激を与えていく。
ルディが彼の不在を見計らって自主練習を行うのはこの日が初めてだ。
ジークと二人での夜の訓練が一向に進まないので、一人の方が逆に緊張せずできるのではないかと思い至ったのだ。
「うーん……」
しかし意気込みすぎているのか、やはり快感を得られない。
自分の指は二本入る。ジークの指はルディより太いので、二本入ると痛い。
せめて中をもう少し拡張したい。
目を閉じて集中しつつ、自分の指をもう一本足そうと試みる。
横並びでは難しそうなので、束ねる形にしてみるが、そうすると指がつりそうで入れられない。
「やっぱり横かな……。いたた」
体勢も影響するのではないかと、姿勢を変えて試してみる。両ひざを立てて座ってみたり、床に立って片足をベッドへかけてみたり。
最終的に四つん這いから上体を振り向けるような姿勢で、臀部側から手をまわして秘所に触れる体勢になった。ただしこれも検証中で別に楽とは感じない。
ルディの失敗は、集中するあまり生き物の気配を察知する半魔としての鋭い感覚がおろそかになっていたことと、テーブルの上に置き忘れられたジークの財布を見落としていたことだ。
「ただいま。忘れものを――」
ガチャリと扉が開き、顔を覗かせたジークは、瞠目して硬直した。
ルディもジークが平然としているので、合わせて気にしていないふりをしたが、何をしていてもあの夜のことを思い出してしまう。完全に嫌な思い出になっている。
あれからジークは、ルディが現実での行為に抵抗感がなくなるよう、挿入なしで毎晩訓練をしてくれている。
しかし、いずれあの痛みと恐怖に向き合わなくてはならないと考えると、他の個所への愛撫は問題ないはずなのに、ルディの体は固く強張り、性交全般を受け付けないようになっていた。ほんの少し感じた肉芽からの快感すら、緊張で拾えないようになってしまった。
◆
「今日は床板の資材を買ってくるよ」
「いってらっしゃい」
ルディはいつも通りジークを見送ると、寝室へ戻って全裸になった。
このままではいけない。
彼は求婚してくれた時に子供はいてもいなくてもどちらでもいいと言っていたが、ルディは欲しい。
「まずは落ち着いて……」
毎晩の訓練で、ジークがよく口にする言葉だ。
落ち着かなくては快感を拾えない。快感を得なければ準備ができず、挿入に際し強い痛みが出る。ただし、濡れて準備ができたからといって痛くなくなるとは限らない。
若干余計なことまで考えつつ、ルディは深呼吸しながら自分の体に触れる。
ジークがしてくれているように、胸や秘所に刺激を与えていく。
ルディが彼の不在を見計らって自主練習を行うのはこの日が初めてだ。
ジークと二人での夜の訓練が一向に進まないので、一人の方が逆に緊張せずできるのではないかと思い至ったのだ。
「うーん……」
しかし意気込みすぎているのか、やはり快感を得られない。
自分の指は二本入る。ジークの指はルディより太いので、二本入ると痛い。
せめて中をもう少し拡張したい。
目を閉じて集中しつつ、自分の指をもう一本足そうと試みる。
横並びでは難しそうなので、束ねる形にしてみるが、そうすると指がつりそうで入れられない。
「やっぱり横かな……。いたた」
体勢も影響するのではないかと、姿勢を変えて試してみる。両ひざを立てて座ってみたり、床に立って片足をベッドへかけてみたり。
最終的に四つん這いから上体を振り向けるような姿勢で、臀部側から手をまわして秘所に触れる体勢になった。ただしこれも検証中で別に楽とは感じない。
ルディの失敗は、集中するあまり生き物の気配を察知する半魔としての鋭い感覚がおろそかになっていたことと、テーブルの上に置き忘れられたジークの財布を見落としていたことだ。
「ただいま。忘れものを――」
ガチャリと扉が開き、顔を覗かせたジークは、瞠目して硬直した。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説


今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる