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夢じゃなかった編
23.戻らない(4)
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ジークと共に王都へ凱旋すれば、半魔と陰口は叩かれつつも、魔王を打ち倒した勇者の仲間の一員として、十分な褒賞と栄誉を手にすることができるだろう。
だが、それはどうでもよかった。ルディにとって重要なのは、ジークと一緒にいられることだ。
歴代の勇者たちは、魔王を討伐した後、王家の姫を妻に迎えたり、領土を与えられ貴族になったり、全国民を救ったにふさわしい待遇をうけた。
勇者は聖人が選ばれるわけではなく、ジークも役目を重圧と感じているようだった。そんな彼が辛く苦しい旅路を乗り越えたのは、少なからず褒賞への期待があるはずだ。
だから、フローラの話でそれを思い出したルディは、ジークは帰還を選ぶだろうと考えていた。
彼はルディを愛していると言ってくれた。ルディもジークと生きていきたい。
だがそれを目の当たりにした民衆が、半魔を選んだジークへ眉をひそめることは想像に難くない。感謝と尊敬の眼差しを向けられるべき彼の栄誉が損なわれる。
「ごめんなさい。私は、戻る気にはなれない」
だから、ルディは自分だけ戻らないことに決めた。
それに、最早フローラとゲオルグを、帰り道の間だけでも仲間とは呼べない。
「あの時、二人は私のことを信じなかった」
戻らないというルディの言葉に、ゲオルグがやっと口を開く。
「それは、すまなかった。もう二度と疑いはしない。それをこれから証明して、償っていくから……」
真剣な声音に深い反省の色を感じ取るが、ルディはそれを拒むように目を伏せた。
ゲオルグは真面目な人間だ。言葉通り、これから真摯に償っていってくれるだろう。だが、それではもう修復できないのだ。
「違う。今後同じ状況になったらまた信じてもらえないだろうって、私の方があなたたちを信じられなくなったの」
この先いくら二人がルディを信じてくれたとしても、ルディはそれを受け入れられない。
彼らはルディの人生の中で、ジークの次に深く関わった他人だ。
聖教会の教義上、半魔は存在を許されない。それでも旅の仲間としてやっていけるようルディは辛抱強く努力した。結果旅の後半には当初のような警戒はされなくなり、信じあえる仲間になったと思った。その夢想がここへきて露と消え、ルディにはもう心を通わせる気力がなかった。
明確な拒絶に、ゲオルグは唇を引き結び、悔いるように俯く。
「それに、ジークを助けようとして、集落の人が犠牲になってしまった。戻ることなんて許されない……」
ドラゴンによって無残に食い殺された人たちがいる。
重傷で動けないと見誤らず翼を傷つけておくか、あるいは最初からドラゴンを助けなければ、集落の人々は犠牲にならなかった。
彼らのことを思えば、ルディには大手を振って凱旋をする気など起きない。
「それは故意ではありませんでしたし、あなたは聖剣の勇者を蘇らせました。称えられるべき功績です。ジークと共に戻れば誰もあなたを責めないでしょう」
「そういう問題じゃないの……。ジークと、三人で帰って」
フローラの慰謝にも、ルディの心は動かない。
その時、成り行きを見守っていたジークが口を開いた。
だが、それはどうでもよかった。ルディにとって重要なのは、ジークと一緒にいられることだ。
歴代の勇者たちは、魔王を討伐した後、王家の姫を妻に迎えたり、領土を与えられ貴族になったり、全国民を救ったにふさわしい待遇をうけた。
勇者は聖人が選ばれるわけではなく、ジークも役目を重圧と感じているようだった。そんな彼が辛く苦しい旅路を乗り越えたのは、少なからず褒賞への期待があるはずだ。
だから、フローラの話でそれを思い出したルディは、ジークは帰還を選ぶだろうと考えていた。
彼はルディを愛していると言ってくれた。ルディもジークと生きていきたい。
だがそれを目の当たりにした民衆が、半魔を選んだジークへ眉をひそめることは想像に難くない。感謝と尊敬の眼差しを向けられるべき彼の栄誉が損なわれる。
「ごめんなさい。私は、戻る気にはなれない」
だから、ルディは自分だけ戻らないことに決めた。
それに、最早フローラとゲオルグを、帰り道の間だけでも仲間とは呼べない。
「あの時、二人は私のことを信じなかった」
戻らないというルディの言葉に、ゲオルグがやっと口を開く。
「それは、すまなかった。もう二度と疑いはしない。それをこれから証明して、償っていくから……」
真剣な声音に深い反省の色を感じ取るが、ルディはそれを拒むように目を伏せた。
ゲオルグは真面目な人間だ。言葉通り、これから真摯に償っていってくれるだろう。だが、それではもう修復できないのだ。
「違う。今後同じ状況になったらまた信じてもらえないだろうって、私の方があなたたちを信じられなくなったの」
この先いくら二人がルディを信じてくれたとしても、ルディはそれを受け入れられない。
彼らはルディの人生の中で、ジークの次に深く関わった他人だ。
聖教会の教義上、半魔は存在を許されない。それでも旅の仲間としてやっていけるようルディは辛抱強く努力した。結果旅の後半には当初のような警戒はされなくなり、信じあえる仲間になったと思った。その夢想がここへきて露と消え、ルディにはもう心を通わせる気力がなかった。
明確な拒絶に、ゲオルグは唇を引き結び、悔いるように俯く。
「それに、ジークを助けようとして、集落の人が犠牲になってしまった。戻ることなんて許されない……」
ドラゴンによって無残に食い殺された人たちがいる。
重傷で動けないと見誤らず翼を傷つけておくか、あるいは最初からドラゴンを助けなければ、集落の人々は犠牲にならなかった。
彼らのことを思えば、ルディには大手を振って凱旋をする気など起きない。
「それは故意ではありませんでしたし、あなたは聖剣の勇者を蘇らせました。称えられるべき功績です。ジークと共に戻れば誰もあなたを責めないでしょう」
「そういう問題じゃないの……。ジークと、三人で帰って」
フローラの慰謝にも、ルディの心は動かない。
その時、成り行きを見守っていたジークが口を開いた。
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