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夢じゃなかった編
18.逃げられない(3)
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「ドラゴンの魂だけを破壊するの。そうすればドラゴンの肉体には、あなたの魂しか入っていないことになる。ドラゴンの体はあなたのものになるはず」
「魂だけを破壊ってそんなこと……」
「できる。夢の主の体は、むき出しの魂。それはドラゴンも同じ。夢魔の他人の夢へ侵入する力を使えば、あいつの魂を直接攻撃できる」
ドラゴンがルディへ唆した魂の破壊を、逆にドラゴンの方へ仕掛けるのだ。
「ただ、すんなりとはいかないと思う。いくつか問題があって、まずドラゴンの夢には今のところ入れないから、現実で上手く丸め込んで、私をあいつの夢に招かせなければならない」
人間相手ならば勝手に侵入できるが、高位の魔族であるドラゴン種は生物的に優位性がありすぎるのか、下級魔族の夢魔の力では弾かれてしまう。実際ルディはドラゴンの夢の手前まで行ってみたが、全く入れなかった。
「次に、夢の中でドラゴンへ怪しまれずに接近する必要がある。怪しまれると、夢魔は夢の主に拒絶されたら瞬時に追い出されてしまうようになってるから、攻撃どころじゃない。そして、これが一番難しいんだけど、私一人でドラゴンを倒さないといけない」
夢魔の力は夢への侵入と、その夢の明瞭化と、夢魔の姿を夢の主の望む姿へ変えること。夢魔が自らの意思で自分を強化するような力はない。
そして夢魔の体は、夢の主の願望が特になければ、夢魔の現実での姿を取る。つまり、現実と同じ程度の能力になる。
同じく夢の主の魂も、願望で上書きされない限り、現実の形になる。しかし瀕死のドラゴンの場合、回復したいという願望があるはずなので、それが夢魔の力で反映され、五体満足の全盛期の姿になると想定される。つまり、四人がかりでどうにか倒せた万全の状態になってしまう。
不意を突いて一太刀浴びせたとしても、致命傷を負わせることは難しいだろう。そうなれば、拒絶を受けて夢からはじき出されるか、もしくはそのまま夢の中で戦闘を始めるかのどちらかになる。
夢の中の体は魂そのものというのは夢の主だけでなく、夢魔側にも当てはまる。肉体は夢の主の願望により変化するが、その中身は夢魔の魂が入っている。夢の主も、夢魔も、お互い夢の中で相手に殺されれば魂が破壊され二度と戻らない。
例え夢の中であっても、現実と変わらない命懸けの挑戦だ。
「夢魔というと夢の中では万能のような印象すらあるが、意外とそうでもないんだな……」
「うん。すぐに離脱できる力はあるけど、逃げたらもう一度ドラゴンの夢に入れる保証はないし……。万能なのは、願望を反映される夢の主の方かな。普通はあなたほど自由には操れないけど」
「俺も戦えたらいいんだが、ドラゴンの夢か……」
上手く願えば何でも叶ってしまう。
しかしそれは夢魔の侵入した夢の性質をよく理解し、強い願望がある者だけだ。常人ならば好みの姿になった夢魔を抱いて終わるぐらいだが、ジークはかつてルディから夢についての説明を受け、願えば叶うと知っている。そのおかげで先ほど逃亡から戻ってきたとき服を着ていた。
「魂だけを破壊ってそんなこと……」
「できる。夢の主の体は、むき出しの魂。それはドラゴンも同じ。夢魔の他人の夢へ侵入する力を使えば、あいつの魂を直接攻撃できる」
ドラゴンがルディへ唆した魂の破壊を、逆にドラゴンの方へ仕掛けるのだ。
「ただ、すんなりとはいかないと思う。いくつか問題があって、まずドラゴンの夢には今のところ入れないから、現実で上手く丸め込んで、私をあいつの夢に招かせなければならない」
人間相手ならば勝手に侵入できるが、高位の魔族であるドラゴン種は生物的に優位性がありすぎるのか、下級魔族の夢魔の力では弾かれてしまう。実際ルディはドラゴンの夢の手前まで行ってみたが、全く入れなかった。
「次に、夢の中でドラゴンへ怪しまれずに接近する必要がある。怪しまれると、夢魔は夢の主に拒絶されたら瞬時に追い出されてしまうようになってるから、攻撃どころじゃない。そして、これが一番難しいんだけど、私一人でドラゴンを倒さないといけない」
夢魔の力は夢への侵入と、その夢の明瞭化と、夢魔の姿を夢の主の望む姿へ変えること。夢魔が自らの意思で自分を強化するような力はない。
そして夢魔の体は、夢の主の願望が特になければ、夢魔の現実での姿を取る。つまり、現実と同じ程度の能力になる。
同じく夢の主の魂も、願望で上書きされない限り、現実の形になる。しかし瀕死のドラゴンの場合、回復したいという願望があるはずなので、それが夢魔の力で反映され、五体満足の全盛期の姿になると想定される。つまり、四人がかりでどうにか倒せた万全の状態になってしまう。
不意を突いて一太刀浴びせたとしても、致命傷を負わせることは難しいだろう。そうなれば、拒絶を受けて夢からはじき出されるか、もしくはそのまま夢の中で戦闘を始めるかのどちらかになる。
夢の中の体は魂そのものというのは夢の主だけでなく、夢魔側にも当てはまる。肉体は夢の主の願望により変化するが、その中身は夢魔の魂が入っている。夢の主も、夢魔も、お互い夢の中で相手に殺されれば魂が破壊され二度と戻らない。
例え夢の中であっても、現実と変わらない命懸けの挑戦だ。
「夢魔というと夢の中では万能のような印象すらあるが、意外とそうでもないんだな……」
「うん。すぐに離脱できる力はあるけど、逃げたらもう一度ドラゴンの夢に入れる保証はないし……。万能なのは、願望を反映される夢の主の方かな。普通はあなたほど自由には操れないけど」
「俺も戦えたらいいんだが、ドラゴンの夢か……」
上手く願えば何でも叶ってしまう。
しかしそれは夢魔の侵入した夢の性質をよく理解し、強い願望がある者だけだ。常人ならば好みの姿になった夢魔を抱いて終わるぐらいだが、ジークはかつてルディから夢についての説明を受け、願えば叶うと知っている。そのおかげで先ほど逃亡から戻ってきたとき服を着ていた。
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