【R-18】【完結】皇帝と犬

雲走もそそ

文字の大きさ
上 下
72 / 79

21.所有者-2 *

しおりを挟む
「陛下!?」

 立ち上がったファルハードは、座り込んでいるシュルークの胸倉を掴み、腕の力だけで起き上がらせた。シュルークの手元に置かれていた杖が絨毯を転がる。
 彼女を庇おうと腰を浮かせかけたキアーを、頭の片隅に残る冷静さが押しとどめた。視界の端では、腰に下げた剣の柄へ手をかけたオーランとサドリが目を光らせている。

「あっ」

 短い悲鳴と共に、シュルークは寝台へ押し倒された。帽子が取れて、少し驚いた表情の素顔が露わになる。

「お前が今さら、まともな女の人生を、普通の幸福を掴めるとでも思ったのか!? 愛情すら理解できない狂人の分際で!」

 寝台に膝で乗り上げたファルハードは、シュルークの胸倉を掴んだまま、覆いかぶさるように彼女を怒鳴りつけた。ファルハードがここまで声を荒げた姿を、キアーは見たことがない。おそらく、オーランとサドリも同じだろう。
 ただ唯一、シュルークだけは彼の怒りに対し落ち着いていた。

「愛情……?」

 この場においては能天気ですらある、シュルークの戸惑う様子。
 続く言葉に、今度はキアーが困惑させられた。

「キアー様の求婚をお受けすることにしたのは、愛ではありません」

 ファルハードでさえ、その返答には一瞬虚を突かれていた。
 だが、すぐに酷薄な笑みで口元を歪める。

「そうか、お前はそんな女だったな……」

 その昏い笑みは、彼の怒号以上にキアーをぞっとさせた。

 一旦シュルークの胸元から手を離したファルハードは、今度は両手をそこにかけると、強引に彼女の服の帯から上をはだけさせた。

「何をなさるのです!」

 キアーの制止の声は届かない。
 中途半端にずり上げられた下着で形を歪めながらも、シュルークの白い乳房が零れ出る。
 脚衣も、中の下着ごと剥ぎ取られて、この場の男たちに素足と下腹部が晒された。それでもシュルークは、悲鳴も上げない。ファルハードに任せている。

「キアー、お前が愛を誓った女の真の姿を、よく見ておけ」

 シュルークはファルハードの膝に乗せられ、彼の脚をそれぞれ跨ぐように、寝台の足元にいるキアーに向けて股を開かされた。無毛の秘所が見せつけられる。先ほど交わったばかりのそこは、しっとりと潤んでいた。

 ファルハードの人差し指と中指が、シュルークの膣口へずぬ、と押し入る。

「あ……」

 湿り気を帯びた微かな声。
 それを上回る音を立てるように、ぐちぐちと指は乱雑に出入りを始めた。

「んっ、う……、ふっ……」

 シュルークは血の気の薄い頬を紅潮させ、遠くへ視線を移した。眼前の将来を約束した男を見ないためではない。視覚から意識を逸らし、他に受け取っている感覚へ集中するためだ。彼女はキアーだけでなく、オーランやサドリも見ているというのに、快感を得ている。

 乱雑に感じたファルハードの指は、その実、的確にシュルークの弱点を突いていた。膣口からは透明な体液が溢れて、彼女を膝に乗せているファルハードの服を汚す。大きく開かれた腿が、閉じないよう押さえつけられているのに、びくびくと震えている。
 シュルークの悦楽の呻き声や身悶え方は、程度を増していき、早々に絶頂の手前にまで来ていた。

「ん、くぅ……、んああっ――!」

 堪えるような一瞬の前兆のあと、シュルークは甘い悲鳴を上げて絶頂を迎えた。あまりに呆気ない。
 キアーは愕然として、胸を上下させ息をするシュルークを見つめていた。キアーでは、陰核を舐めてやりながらでなくては、手技で絶頂しないのだ。それが、ファルハード相手ではこうもいともたやすく。
 嫉妬がキアーの身の内を焼いていく。だがそんなキアーに構わず、ファルハードは自身の服を寛げ、そそり立つ凶器を取り出した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...