【R-18】【完結】皇帝と犬

雲走もそそ

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18.助言-2 *

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「……どういう意味だろうか」

 一瞬言葉に詰まったオーランは、眉間のしわを深くする。
 他方のシュルークは、彼に自分の要求が伝わらなかったこの時点でようやく、自分が男女間での性交の誘い方を知らないと気がついた。
 人前で大っぴらに性的な話題を出さないという一般常識は知っている。だからこうやって人目を忍び、誰にも知られないようにオーランを呼び出したのだ。そして性交そのもののやり方も知っている。だが、始め方だけは知らなかった。はっきり頼んだのに、なぜか伝わらなかった。オーランが性交の意味も知らないはずはないだろうから、始めるための手順が違うのだ。
 ファルハードとは性別も立場も違うので、シュルークでは彼の始め方を踏襲できない。ファルハードはシュルークを部屋に呼びつけて服を脱げと命令するが、シュルークはオーランに命令を聞き入れてもらえる立場にない。

 そこでシュルークは、ひとまず彼に自分の要求をさらに具体的に理解させることにした。
 一旦立ち上がると、丈の長い服の、帯から下の前を割り開き、中の脚衣の紐を解いて足元へ落す。下着も脱ぎ捨て、再び寝台に腰かけると、不自由でない左足の方だけを寝台へ上げ、膝を立てた。
 そうして露わになった自分の秘所へ手をやり、陰唇を広げてオーランに膣口を示す。

「こちらに、オーラン様の陽物を挿入して、可能であれば私が絶頂に至るまで動かしてください。射精もしてくださって結構です」

 オーランの表情が引きつる。
 陰毛は処理してあるので、見た目に何か不快感があったのではなく、要求を理解できてその上での懸念があるのかもしれない。シュルークはそう思って事前に考えてきた対策を説明する。

「妊娠がご懸念であれば、後宮を担当する侍医から避妊薬を処方されておりますので、ご安心ください。仮にそれでも身ごもった場合は堕胎の処置を受ける予定です」

 妊娠した場合はファルハードと彼のどちらの種になるのか不明だが、いずれであっても産む気はない。彼も現在未婚ということは子供は欲していないだろうと想像しての解説である。

「……なぜだ?」
「陛下の寝所へ幾度か侍るうちに、性交の快楽を知ったのです。思いのほかよいものでした。頻度を今より多く欲しいのですが、陛下にお願いするわけには参りません」

 聞くところによると、オーランは面倒見の良い性格らしい。それはつまり、困っている者は助けてしまう性分ということだ。なので素直に頼めば応じてもらえると、シュルークは本気で考えていた。

「……随分な誘い文句だ」

 しばし考え込んでいたオーランは、やがて呆れたようにそう言って、上着を脱いで上半身だけ裸になった。
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