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17.発見-4

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「あ……」

 自分が持て余すようになった欲求と、後宮の女たちに思いを馳せた後、シュルークはあることに気がついた。突然立ち止まったシュルークに、サドリが一歩先へ行きかけて、不思議そうに立ち止まる。

「ああ、いえ、なんでもありません」

 再び歩き出せば、サドリは詮索せず付き従う。

 ――陛下が一人だけを所望されないように、私も陛下からお声がかかるのを待つ必要はないわ。

 シュルークはあまり前向きにものを考えないが、この発見は本人としてはかなり前向きだった。最近は新しい気づきが多い。
 ファルハードは他の女を抱かなくてはならないし、そもそもシュルークを抱く理由が不明なため今後も呼ばれるか分からない。彼に抱かれない夜の熱は、他の男と性交して解決すればいいのだ。

 相手をどうやって用意するか。
 独身で、誰でも抱けるほど性欲が余っていて、病気にかかっては困るので健康で清潔感があって、他言しない口の堅い男。外見の好みは特にない。

「サドリ様は実際には会話が可能ですが……」

 シュルークは隣のサドリに、前を向いて歩きながら話しかけた。マハスティの一件を除き、これまで行動を伝える以外に会話をしたことはない。
 サドリは返事をしないが、顔を少し傾けてシュルークを見ている気配がある。

「男性器も本当は維持していらっしゃるのですか?」

 突然サドリが立ち止まったので、シュルークも歩みを止めて振り返る。サドリは目を丸くしていた。耳が聞こえず話せないというのは嘘だったので、宦官なのも嘘ではないかと確認してみたのだが、想定外の質問だったようだ。

「宦官であることは事実です……」

 やがてサドリは、ばつが悪そうに答えて、また歩き出した。どうやらシュルークの質問の意図を、嘘をつかれていたことへの意趣返しと捉えたようだ。

「そうですか」

 その誤解を解く必要もないので、シュルークは簡潔に返事をして、またサドリと並んで歩いていく。

 ――ではサドリ様は性交ができないことに間違いはない。他に誰がいるかしら。

 考えを巡らせるシュルークの頭には、二人の男の顔が浮かんだ。それは、近衛兵のオーランとキアーだった。
 オーランは三十代前半の古株の近衛兵だが、妻帯しておらず宿舎暮らしだ。キアーは少し年下になるが、彼も独身である。
 宿舎から皇宮の外へ出るのは不便で、加えて交代制で勤務時間の不規則な近衛が仕事では、恋人をつくったりや女を買いに行ったりはし辛いだろう。独身の近衛兵の欲求不満については噂を聞いたことがある。そしてどちらも兵士なだけあって健康で、口が堅いから近衛に選ばれている。

 こうしてファルハードとの性交がきっかけとなったシュルークの新たな発見は、他者を巻き込んだ行動へと移っていくのであった。
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