【R-18】【完結】皇帝と犬

17.発見-1

　ファルハードに突然凌辱され、それを寵愛の始まりと勘違いして嫉妬したマハスティに襲われ、彼女とそれを唆したディアナが追放されてから、シュルークを取り巻く状況は大きく変わった。
　女官を含む官吏や使用人たちからは、皇帝の妾になるのだろうかと探るような奇異の目で見られ、後宮の女からは彼女たちとファルハードの寵愛を競う相手になるのかと敵意の目を向けられた。
　ファルハードの娘を一人産んだマハスティと、最近のお気に入りだったディアナの即座の処分。気まぐれながら女たちには柔軟だったはずの皇帝の決断が、皆の疑念を大きくしてしまった。
　元敵国の将軍の娘であるシュルークは、過去の行いでファルハードから恨みを買っており、どうやら復讐のために生かされている。ファルハードはその復讐を継続するために、愛した女を二人も追放した。彼女らへの情に勝るほどの怨恨のようだ。
　ところが、ファルハードはシュルークを痛めつける方法に性交という手段を用いた。そのせいで、特に後宮の女たちには、妃二人が許されなかったのは皇帝が女官長を寵愛し始めたからではないかと疑われるようになったのだ。

　シュルークは後宮の女たちにとって、後宮の管理者から皇帝の寵愛を奪い合う敵になった。その結果、彼女たちは女官長としてのシュルークの指示を聞かなくなってきてしまった。シュルークは指示伝達の際、なるべく他の女官を介するようにしているが、直接彼女らに会わなくてはならないときもある。それなのに敵対されては業務に差し障る。
　女たちにはきちんと説明した。シュルークが身ごもっても、男との接触監視がされていないため皇帝の子とは認められず妃として扱われることはなく、彼女たちと競合しないと。それで納得する女も少しはいたが、大半はマハスティと同じく、皇帝の子の母になるだけではなく彼の寵愛が欲しいようで、不穏な空気は収まらない。
　無給の労働と皇宮内に閉じ込められる不自由と、度々される犬扱い。それに体の関係が加わったぐらいで、シュルークは寵愛を得たとは思っていなかった。性交で痛めつけられたし、あれから犬扱いは無くなったとはいえ恨まれていることには変わりない。
　後宮で妃たちに優しく接し、閨では愛を囁き手厚く抱くファルハードを知っているため、シュルークはなぜ彼女たちから皇帝の寵愛を疑われるのか理解できなかった。彼女たちへの扱いとはまるで違うというのに。
　しかしシュルークは、ここへきて後宮の女たちへの理解を深めるに至る、新たな発見をした。