上 下
53 / 79

16.待望-4 *

しおりを挟む
「……陛下?」

 物思いにふけるうちに、組み敷いた体を放置していたようだ。青白い肌に血を巡らせ汗ばむシュルークが、不思議そうに声をかけてきた。

「……声をかけるな」
「あっ……、は、い……」

 潤んで絡みつく隘路に猛る自身で押し入り、己の快感を追求しつつも、彼女が反応する場所にも擦りつける。激しい行為は女の側の消耗が大きいため、ファルハードはいつもゆっくりと肌を重ねる。
 奥深くの弱い場所へ触れるように押し捏ねれば、シュルークの吐息と微かな声はその都度熱く高まっていった。

「う……、あぁ、あ……」

 一度目に凌辱したときは、目立った効果がなかったためそれで終わりにするつもりだった。しかしその後、どうも彼女が、また犯されるのではないかと僅かに怯える素振りを見せた。
 ファルハードは普段女を痛めつけるようなことはしていない。常からシュルークにしたように妃たちを抱いていると思われるのは癪だった。それで何となく、二度目に寝台へ引き込んだのだ。
 犯されることは受け入れ大人しくしつつも、固くなった体。それをファルハードは大勢を抱いてきた手管で解し、シュルークを未知の快楽で戸惑わせた。何をしても響かなかった彼女が、初めて揺らいだ瞬間でもあった。以前のシュルークとは違うが、ファルハードには感じるものがあった。

 そして何より――、

「あっ、く、ぅ、くる……、んッ――!」

 びくん、と体を震わせて、シュルークは絶頂を迎えた。
 この時いつも、身を寄せているファルハードへ無意識にしがみつく。

「ん……、ぅ……」

 ファルハードの男根を締めつける膣壁は、まだひくひくと強く痙攣しており、その絶頂の余韻の波が来るたびにシュルークは呻き声を漏らす。
 繋がった場所と触れ合う肌に集中し、残り二度三度と抽送を繰り返すと、ファルハードも彼女の中で達した。

「ふぅ……、ふぅ……」

 絶頂の緊張から弛緩へ移ったシュルークは、高まった心拍を落ち着けるため、ようやく深く息をする。
 だが平常心にはほど遠く、自分がファルハードの首へ縋りつくように、両肩へ腕を回していることには気がついていない。
 その無自覚のままに、シュルークの手は、ファルハードの耳の後ろをそっと撫でた。

 ――大好きよ。

 媚も、男女の性愛も含まない、透明すぎる愛の言葉が、もう何年も経つのにあの時のままで頭の中へ響く。
 最初にそうされた時はやめろと言った。女官長は命令には忠実だ。それでも行為の果ての無我へ達すると、シュルークはファルハードにしがみついて、耳の後ろを撫でる。後から咎めても、本人に自覚はない。
 この変わった場所を撫でる行動は、シュルークが飼い犬にしていたことである。つまりこれは、彼女のどこかに、失われたはずの記憶が眠っている証左に他ならなかった。
 消えてなどいない。表層にはなくとも、彼女の中に残存する。

 完全に消えたならまだしも、残っているならいつか戻るかもしれない。ならば、まだ処刑するには早い。消えかけていた道が、また見えるようになった気がした。
 そうしてファルハードはシュルークを繰り返し寝台に上げ、彼女の記憶の欠片を垣間見て、自らの決断に間違いがないことを確認するようになった。

 シュルークの胎内へ種を放ち終えてからも、そのまま抱き合っていると、やがて彼女の息遣いが穏やかになり、しがみつく腕の力が抜けてきた。
 追い出さなくても、朝までには勝手に目を覚まして帰っていく。だからファルハードは、彼女を起こさず、自分もそのまま眠りに就いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

処理中です...