【R-18】【完結】皇帝と犬

雲走もそそ

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06.最後の手段-3 *

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 ファルハードがそれを振り払うかのように目を逸らしたかと思えば、シュルークは仰向けに押し倒されていた。

「う……」

 後ろへ纏め上げていた髪が、ぐしゃりと乱れる感触。
 一旦錯乱が途絶えたから、この逃れられない状況でも少し落ち着いていた。例えるなら、突然殺されるのではなく、処刑の日取りが決まったかのような。恐ろしくとも、覚悟しなくてはならないとわかった。

 ファルハードの手が、立襟の釦を外していく。
 彼の琥珀色の瞳の鋭さが、シュルークを絨毯へ磔にする。シュルークは恐怖を耐えるために、体の両脇へ投げだした手をぎゅっと握りしめた。
 浅く短くなった息で、必死に酸素を取り込む。部屋に充満した香の甘さが、空気を薄くしているように感じられた。

 男の手が、帯はそのままにシュルークの服の前をはだけ、下着を押し上げる。
 シュルークは顔を背けようとしたが、ファルハードが前から顎を掴んで正面を向かせた。

「目を逸らすな」

 低く脅すような声が、シュルークの恐怖心を追い立てて言うとおりにさせた。

 シュルークの顔から胸元へ右手を移したファルハードは、乳房を乱暴に揉みしだいた。彼の手の中で無残に形を変える乳房は、痛むが耐えられないほどではない。シュルークは唇を引き結んで耐えた。
 だが、顔を下ろしたファルハードが乳輪ごと先端を口に含み、舐ったかと思った次の瞬間、シュルークは全身を強張らせて悲鳴を上げた。

「いッ……!」

 噛みつかれたのだ。歯を軽く立てるようなかわいいものではない。すぐに解放されたが、白い肌には唾液と、くっきりと赤く歯形が残っている。
 もっと痛みと傷を与えられるかもしれない。震える呼吸を必死に落ち着かせようとしながら、シュルークはファルハードの挙動を見守るしかなかった。

 スカートのようになっている服の下部を捲り上げられ、中の脚衣の腰ひもを手探りでほどく。目の前でいつも脱いでいるのだから、構造はよく分かっているのだろう。
 脚衣を少しずり下ろしてから、下着の前も開かれて、脚衣と一緒に脚から引き抜かれた。

 その拍子に浮いた脚を掴むと、ファルハードは間へ割って入った。彼に性器を見られて今さら恥じらいなどない。ただただ、恐ろしい。

「う、あ……」

 身を屈めたファルハードが、あわいをぞろりと舐めた。
 その不快な感触に、シュルークは呻き声を漏らす。

 シュルークの認識では一度も使っていないはずの秘所へ、舌が押し込まれた。抵抗してはならないと理解していても、先ほどから脚は全力で閉じようとしている。だが、ファルハードは隘路の浅い場所を唾液で濡らし終えるまで、その抵抗を苦もなく押さえつけた。

 体を起こしたファルハードの手が離れて、すぐさまシュルークは身を丸めるように脚を閉じた。皇帝の手を煩わせてはいけないなどとは、頭から消し飛んでいた。
 この先は、怖くて、おぞましくて、痛い。それをシュルークは知っていた。記憶はないが、知識がある。その知識は、過去の体験から来ているのだ。体験の記憶を失って、知識だけが残っている。
 それを今夜、ファルハードにもたらされた恐怖が理解させた。
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