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解決編
70:皇后(1)
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「うぅ……」
まどろみから意識が浮上するが、頭はぼんやりしていて、体も重い。目覚めの爽やかさは全くない。
メルセデスが瞼を開けると、そこは一年前に毎日寝起きしていた、後宮の居室だった。
高い天井。広くて柔らかなベッド。夢でも見ているのかと思ったが、感覚が現実的過ぎる。
「どうして……!」
完全に覚醒し、起き上がる。身に着けている衣服は、自宅にあったものに違いない。あの新天地から、後宮へ戻ってきたのだ。
混乱していると、すぐに居室の扉が開き、顔なじみの侍女たちがぞろぞろと入ってきた。まるで後宮の日々の続きのように、メルセデスの世話をしてくれていた彼女たちは、ベッドの横へ並んで礼を取った。
「ご無沙汰しております。レディ・メルセデス」
「は、はい……」
まともな返事も返せないメルセデスに対し、侍女たちは変わらない手際で、身支度をさせるための準備をしていく。
そしてあれよあれよという間に、質の良いドレスを纏った愛妾に整えあげられてしまった。ドレスは手枷があると着られなかった構造のものだ。
メルセデスには何が何だかわからない。眠っている間に連れてこられたのだろうか。あの国と帝国は、馬で十日はかかる距離だ。気絶したとはいえ、それほどに長い間目覚めないなどおかしな話だ。
やがて廊下の方が騒がしくなり、シヒスムンドがダビドを伴ってやってきた。
シヒスムンドは白いマントを靡かせ、中には元の軍服ではないが、似た雰囲気の黒い衣装を着こんでいる。一方のダビドは、以前より装飾を抑えた、ひざ丈の長い上着が特徴の服装に変わっている。
「目が覚めたか」
こともなげに言ったシヒスムンドは、侍女たちを下がらせ、ダビドを含めた三人だけにする。
「いったい、何が起きたのでしょうか……。あぁ、失礼いたしました。ご無沙汰しております。ダビド様」
「ああ。君は変わりないようだな。向こうでの暮らしはどうだった」
礼を取るメルセデスに、ダビドは晴れやかに笑いかける。シヒスムンドの前のため、目元の薄布は付けたままだ。
「はい。ダビド様のご配慮で、とても穏やかな生活を送ることができました……」
つい先日までは。と脳内で付け加えながら、シヒスムンドへ視線を投げかけた。
「座って話すとしよう。メルセデスはまだ調子が出んだろうからな」
まどろみから意識が浮上するが、頭はぼんやりしていて、体も重い。目覚めの爽やかさは全くない。
メルセデスが瞼を開けると、そこは一年前に毎日寝起きしていた、後宮の居室だった。
高い天井。広くて柔らかなベッド。夢でも見ているのかと思ったが、感覚が現実的過ぎる。
「どうして……!」
完全に覚醒し、起き上がる。身に着けている衣服は、自宅にあったものに違いない。あの新天地から、後宮へ戻ってきたのだ。
混乱していると、すぐに居室の扉が開き、顔なじみの侍女たちがぞろぞろと入ってきた。まるで後宮の日々の続きのように、メルセデスの世話をしてくれていた彼女たちは、ベッドの横へ並んで礼を取った。
「ご無沙汰しております。レディ・メルセデス」
「は、はい……」
まともな返事も返せないメルセデスに対し、侍女たちは変わらない手際で、身支度をさせるための準備をしていく。
そしてあれよあれよという間に、質の良いドレスを纏った愛妾に整えあげられてしまった。ドレスは手枷があると着られなかった構造のものだ。
メルセデスには何が何だかわからない。眠っている間に連れてこられたのだろうか。あの国と帝国は、馬で十日はかかる距離だ。気絶したとはいえ、それほどに長い間目覚めないなどおかしな話だ。
やがて廊下の方が騒がしくなり、シヒスムンドがダビドを伴ってやってきた。
シヒスムンドは白いマントを靡かせ、中には元の軍服ではないが、似た雰囲気の黒い衣装を着こんでいる。一方のダビドは、以前より装飾を抑えた、ひざ丈の長い上着が特徴の服装に変わっている。
「目が覚めたか」
こともなげに言ったシヒスムンドは、侍女たちを下がらせ、ダビドを含めた三人だけにする。
「いったい、何が起きたのでしょうか……。あぁ、失礼いたしました。ご無沙汰しております。ダビド様」
「ああ。君は変わりないようだな。向こうでの暮らしはどうだった」
礼を取るメルセデスに、ダビドは晴れやかに笑いかける。シヒスムンドの前のため、目元の薄布は付けたままだ。
「はい。ダビド様のご配慮で、とても穏やかな生活を送ることができました……」
つい先日までは。と脳内で付け加えながら、シヒスムンドへ視線を投げかけた。
「座って話すとしよう。メルセデスはまだ調子が出んだろうからな」
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