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人間編

58:武運の祈願(2) *

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「あっ、またっ、い、いく……! ん――!」

 何度目かわからない絶頂を、メルセデスは背筋を逸らして受け止めた。
 繰り返す絶頂が理性を溶かしてしまったようで、目はうつろだ。

「上手にいけたな」

 褒めて頭に口づけつつ、シヒスムンドは愛撫する手を休めない。達した直後の敏感な膣を太く筋張った指三本でかき回すと、膣壁が絡みつき涎を零す。

「まっ、待って、くだ、さ……、だめっ」
「何が駄目なんだ? もうやめるか?」
「あぁっ!」

 メルセデスの足に力が入り、また達しそうになった時に、シヒスムンドは指を引き抜いた。ここまで押し上げておいて、直前で止められたことに、メルセデスは混乱しながら半分泣いている。

「や、やめないで」
「だが、駄目なんだろう?」
「だって、出ちゃいます、から……!」

 呂律の回らない舌と崩れた口調で訴えているのは、少し前に、達した直後にすかざず責め立てた時、盛大に噴出した潮のことだ。粗相をしたのだと勘違いして随分慌てていた。誤解は解いたのだが恥ずかしいらしく、快楽と羞恥のせめぎあいの中、達した直後の愛撫を必死で止めようとしてくる。

「やめてほしいなら、もういかせてやらないが」
「へ……? あぁん!」

 肉芽をぐり、と親指で押せば面白いように体が跳ねる。だが、絶対に達しない程度で加減している。

「や、いやぁ!」
「嫌なら仕方がないな。やめるか」
「あ……」

 体を離し、隣へ仰向けで寝転がる。まるでもうこれきりにして寝入るかのように。
 それを見てメルセデスは本当に放置されるものと思って焦っている。

「閣下ぁ……」
「……」

 普段の落ち着き払った様子からは想像もできない、迷子の子供のような途方に暮れた憐れさと、発情した雌の甘さを併せ持った声に、シヒスムンドの逸物もぴくりと反応する。そもそも、これが先ほどから天井へ向けて立ち上がり、先走りを滲ませているのを見れば、途中でやめるつもりは毛頭ないとわかりそうだが、何せ今のメルセデスは冷静でない。
 目を閉じて知らないふりをしていると、メルセデスがにじり寄ってくる気配がする。そして、彼女に近い側の腿にねっとり濡れる感触があり、目を開けた。
 メルセデスが片側の腿に跨って、愛液でとろけた膣を、シヒスムンドに擦りつけている。

「ごめんなさい……。はぁっ。こんなになって、しまってるんです……。もう、やめてって、聞かなくてっ、いいですから……。は、んっ……」

 擦りつけて肉芽から快感を得ているが、それも弱いようで、もどかしそうに腰を揺らす。

「お願いです……。いかせてください……」

 その媚態と泣きそうな声に、我慢が利かなくなったのはシヒスムンドの方であった。
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