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人間編
57:誰が為(2)
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「悪かった。もしもの話はしない」
「はい……」
顎に手を添えて顔を上げさせると、軽く触れるだけの口づけをする。
「ん……」
甘えるような声を漏らしたのを良いことに、舌を滑り込ませて、メルセデスのそれを絡めとる。メルセデスも応えてシヒスムンドが口内を嬲るのに舌を差し出してくる。
唾液を絡ませあいつつ、背中に回していた手を滑らせ、メルセデスの夜着の肩ひもを引いた時。
「あっ、だめっ!」
メルセデスがはっと目を見開き、シヒスムンドの胸を押し返してベッドの端へ逃げた。
シヒスムンドも少し冷静さを取り戻す。つい触れてしまったが、前回拒絶された件はまだ解決していない。
「すまん。思わず……。嫌がることを、するつもりはなかったのだが……」
「い、嫌ではありません」
自制心のなさにシヒスムンドが自己嫌悪に陥っていると、メルセデスは焦ったように否定する。
嫌ではないという言葉は、前回の帰り際にも言っていた。
「その……、閣下はご自分の情感を高めるために、私に触れられますが、それがすごく気持ちよくて、……自分では上手くできませんので、触ってほしいです。それに、他の誰でもなく、閣下に触れられていると思うと、表現が難しいのですけれど、とても、嬉しくて」
煽られているのだろうかと疑いつつも、おそらくメルセデスは真剣に説明をしているので、シヒスムンドは押し倒したくなる欲求を頭の外へ追い出す。
「俺が嫌いにならなかったか。前回、その、無理にしようとした」
「急なことでしたので、少し怖かったです。でも閣下が、私を中だけで達せられるようにしてくださってから、指で届かない奥が、何と申しますか、疼くようになってしまったので……、閣下をここに受け入れたら、もっと気持ちよくなるのではないかと、期待していました」
話している途中に思い出したのか、メルセデスは腿をもじもじと擦り合わせる。シヒスムンドは前回と同じ轍を踏むまいと、なるべくそれは見ないようにして、反応する自身も意識しないよう努力した。
「ただ、仮に私の体がそうなっていなくても、閣下が望まれることは全てお応えしたいです。閣下にされて、嫌だと思うことなどありません」
先ほどまでとんでもないことを言い放っておきながら、メルセデスはなぜかようやくこの段階になって、恥ずかしそうに顔を赤くした。
真摯な眼差しは、メルセデスがそれらを無理に口にしているのではなく、本心だと信じさせるに十分だった。
「よく、わかった。ならば、それでも受け入れられない理由を教えてくれ。どのような理由でも、無理強いしないと約束する」
シヒスムンドの行いに何一つ嫌なことがないというなら、拒絶の理由は別の事情があるということだ。
「膣に子種が入ると、子供ができてしまいます」
「責任は取ると言っただろう」
つまり孕んでしまえば、後宮から出して新天地へ行かせる代わりに自分の手元へ囲おうとしていた。シヒスムンドなら実行可能ではあるのだが、正直なところ熱に浮かされていて、それを実行した場合、周囲にどのような悪影響が出るのかまで熟考したとは言い難い。
「だめです! そのような危険なこと……。姦通は双方死罪という掟があるのですよ!」
「はい……」
顎に手を添えて顔を上げさせると、軽く触れるだけの口づけをする。
「ん……」
甘えるような声を漏らしたのを良いことに、舌を滑り込ませて、メルセデスのそれを絡めとる。メルセデスも応えてシヒスムンドが口内を嬲るのに舌を差し出してくる。
唾液を絡ませあいつつ、背中に回していた手を滑らせ、メルセデスの夜着の肩ひもを引いた時。
「あっ、だめっ!」
メルセデスがはっと目を見開き、シヒスムンドの胸を押し返してベッドの端へ逃げた。
シヒスムンドも少し冷静さを取り戻す。つい触れてしまったが、前回拒絶された件はまだ解決していない。
「すまん。思わず……。嫌がることを、するつもりはなかったのだが……」
「い、嫌ではありません」
自制心のなさにシヒスムンドが自己嫌悪に陥っていると、メルセデスは焦ったように否定する。
嫌ではないという言葉は、前回の帰り際にも言っていた。
「その……、閣下はご自分の情感を高めるために、私に触れられますが、それがすごく気持ちよくて、……自分では上手くできませんので、触ってほしいです。それに、他の誰でもなく、閣下に触れられていると思うと、表現が難しいのですけれど、とても、嬉しくて」
煽られているのだろうかと疑いつつも、おそらくメルセデスは真剣に説明をしているので、シヒスムンドは押し倒したくなる欲求を頭の外へ追い出す。
「俺が嫌いにならなかったか。前回、その、無理にしようとした」
「急なことでしたので、少し怖かったです。でも閣下が、私を中だけで達せられるようにしてくださってから、指で届かない奥が、何と申しますか、疼くようになってしまったので……、閣下をここに受け入れたら、もっと気持ちよくなるのではないかと、期待していました」
話している途中に思い出したのか、メルセデスは腿をもじもじと擦り合わせる。シヒスムンドは前回と同じ轍を踏むまいと、なるべくそれは見ないようにして、反応する自身も意識しないよう努力した。
「ただ、仮に私の体がそうなっていなくても、閣下が望まれることは全てお応えしたいです。閣下にされて、嫌だと思うことなどありません」
先ほどまでとんでもないことを言い放っておきながら、メルセデスはなぜかようやくこの段階になって、恥ずかしそうに顔を赤くした。
真摯な眼差しは、メルセデスがそれらを無理に口にしているのではなく、本心だと信じさせるに十分だった。
「よく、わかった。ならば、それでも受け入れられない理由を教えてくれ。どのような理由でも、無理強いしないと約束する」
シヒスムンドの行いに何一つ嫌なことがないというなら、拒絶の理由は別の事情があるということだ。
「膣に子種が入ると、子供ができてしまいます」
「責任は取ると言っただろう」
つまり孕んでしまえば、後宮から出して新天地へ行かせる代わりに自分の手元へ囲おうとしていた。シヒスムンドなら実行可能ではあるのだが、正直なところ熱に浮かされていて、それを実行した場合、周囲にどのような悪影響が出るのかまで熟考したとは言い難い。
「だめです! そのような危険なこと……。姦通は双方死罪という掟があるのですよ!」
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