131 / 180
人間編
53:行き違い(4) *
しおりを挟む
「ま、待ってください!」
「どうした」
「その……」
悩ましげに眉をひそめていたメルセデスは、意を決したように口を開く。
「閣下はご存じないかもしれませんが、じ、実は、こういった行為は、とても、その、恥ずかしいことらしいのです……」
詳しく聞いてみれば、どうやら他の愛妾たちとの会話の中で、性的な行為をあまり口にするものではないと教わったらしい。
言われてみれば、これまでメルセデスは、隠すべき裸体を晒すことに恥じらいを持っていたが、わりとためらいなくシヒスムンドの陰茎を舐めるなどしたので、これらの一連の行為そのものは知識のなさゆえか恥ずかしがってはいなかった。
「そうだな」
「えっ」
こともなげに同意したシヒスムンドに目を剥いている。
「だがそれは、他人に話すには、という前置きがついていたのではないか?」
「た、確かに、そうかもしれません」
メルセデスは詳細を思い出そうとするかのように考え込む。
「この行為自体は多くの男女が行っている。他人に晒さないのであれば、恥じる必要はない」
「そうですか……。てっきりそうと知らずに恥ずかしいことをしているのだと思ったのです……。さらにそのようなことをして、快感を得てしまっているだなんて許されないと思ってしまって……。それに、平然となさっていたので、閣下はご存じないものと……」
シヒスムンドが、知らずに恥ずべき行為をしてしまっているのではないかと、忠告しようとしてくれたらしい。
本人は深刻にとらえているようだが、正直なところ面白い、というより可愛く思えて、シヒスムンドは相好を崩さないように必死だった。
「他人に知られなければ、この行為は二人だけの秘密だ。何をして、どう感じても、恥じることはない」
ここで笑ってしまっては彼女を傷つけるかもしれないため、なるべく平静を装った。
メルセデスは安心したように、固く押さえていた夜着を掴む手から力を抜く。
「よかったです。してもいいことなんですね……」
「ああ」
頬にかかった髪を耳へかけてやると、メルセデスはそれを手繰り寄せて手のひらに口づけた。甘えているのだろうが煽情的で、シヒスムンドは今すぐにでも彼女を暴きたくて仕方がなくなった。
「触れても構わないか?」
「はい。たくさん、触ってください。閣下がなさりたいように……」
メルセデスの唇を自身のそれでふさぎ貪る間に、夜着をはだけさせて乳房や胸の頂を手で弄ぶ。彼女の心臓の拍動が手のひらに伝わってくる。
苦しそうにする前に口づけから解放してやり、続いて首筋に舌を這わせる。思いが通じ合った今日は、無性にこの白いうなじに痕を付けたくなった。しかし忍んできている以上痕跡は絶対に残せないので我慢しなくてはならない。
「どうした」
「その……」
悩ましげに眉をひそめていたメルセデスは、意を決したように口を開く。
「閣下はご存じないかもしれませんが、じ、実は、こういった行為は、とても、その、恥ずかしいことらしいのです……」
詳しく聞いてみれば、どうやら他の愛妾たちとの会話の中で、性的な行為をあまり口にするものではないと教わったらしい。
言われてみれば、これまでメルセデスは、隠すべき裸体を晒すことに恥じらいを持っていたが、わりとためらいなくシヒスムンドの陰茎を舐めるなどしたので、これらの一連の行為そのものは知識のなさゆえか恥ずかしがってはいなかった。
「そうだな」
「えっ」
こともなげに同意したシヒスムンドに目を剥いている。
「だがそれは、他人に話すには、という前置きがついていたのではないか?」
「た、確かに、そうかもしれません」
メルセデスは詳細を思い出そうとするかのように考え込む。
「この行為自体は多くの男女が行っている。他人に晒さないのであれば、恥じる必要はない」
「そうですか……。てっきりそうと知らずに恥ずかしいことをしているのだと思ったのです……。さらにそのようなことをして、快感を得てしまっているだなんて許されないと思ってしまって……。それに、平然となさっていたので、閣下はご存じないものと……」
シヒスムンドが、知らずに恥ずべき行為をしてしまっているのではないかと、忠告しようとしてくれたらしい。
本人は深刻にとらえているようだが、正直なところ面白い、というより可愛く思えて、シヒスムンドは相好を崩さないように必死だった。
「他人に知られなければ、この行為は二人だけの秘密だ。何をして、どう感じても、恥じることはない」
ここで笑ってしまっては彼女を傷つけるかもしれないため、なるべく平静を装った。
メルセデスは安心したように、固く押さえていた夜着を掴む手から力を抜く。
「よかったです。してもいいことなんですね……」
「ああ」
頬にかかった髪を耳へかけてやると、メルセデスはそれを手繰り寄せて手のひらに口づけた。甘えているのだろうが煽情的で、シヒスムンドは今すぐにでも彼女を暴きたくて仕方がなくなった。
「触れても構わないか?」
「はい。たくさん、触ってください。閣下がなさりたいように……」
メルセデスの唇を自身のそれでふさぎ貪る間に、夜着をはだけさせて乳房や胸の頂を手で弄ぶ。彼女の心臓の拍動が手のひらに伝わってくる。
苦しそうにする前に口づけから解放してやり、続いて首筋に舌を這わせる。思いが通じ合った今日は、無性にこの白いうなじに痕を付けたくなった。しかし忍んできている以上痕跡は絶対に残せないので我慢しなくてはならない。
1
お気に入りに追加
150
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる