【R-18】【完結】魔女は将軍の手で人間になる

雲走もそそ

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人間編

53:行き違い(4) *

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「ま、待ってください!」
「どうした」
「その……」

 悩ましげに眉をひそめていたメルセデスは、意を決したように口を開く。

「閣下はご存じないかもしれませんが、じ、実は、こういった行為は、とても、その、恥ずかしいことらしいのです……」

 詳しく聞いてみれば、どうやら他の愛妾たちとの会話の中で、性的な行為をあまり口にするものではないと教わったらしい。
 言われてみれば、これまでメルセデスは、隠すべき裸体を晒すことに恥じらいを持っていたが、わりとためらいなくシヒスムンドの陰茎を舐めるなどしたので、これらの一連の行為そのものは知識のなさゆえか恥ずかしがってはいなかった。

「そうだな」
「えっ」

 こともなげに同意したシヒスムンドに目を剥いている。

「だがそれは、他人に話すには、という前置きがついていたのではないか?」
「た、確かに、そうかもしれません」

 メルセデスは詳細を思い出そうとするかのように考え込む。

「この行為自体は多くの男女が行っている。他人に晒さないのであれば、恥じる必要はない」
「そうですか……。てっきりそうと知らずに恥ずかしいことをしているのだと思ったのです……。さらにそのようなことをして、快感を得てしまっているだなんて許されないと思ってしまって……。それに、平然となさっていたので、閣下はご存じないものと……」

 シヒスムンドが、知らずに恥ずべき行為をしてしまっているのではないかと、忠告しようとしてくれたらしい。
 本人は深刻にとらえているようだが、正直なところ面白い、というより可愛く思えて、シヒスムンドは相好を崩さないように必死だった。

「他人に知られなければ、この行為は二人だけの秘密だ。何をして、どう感じても、恥じることはない」

 ここで笑ってしまっては彼女を傷つけるかもしれないため、なるべく平静を装った。
 メルセデスは安心したように、固く押さえていた夜着を掴む手から力を抜く。

「よかったです。してもいいことなんですね……」
「ああ」

 頬にかかった髪を耳へかけてやると、メルセデスはそれを手繰り寄せて手のひらに口づけた。甘えているのだろうが煽情的で、シヒスムンドは今すぐにでも彼女を暴きたくて仕方がなくなった。

「触れても構わないか?」
「はい。たくさん、触ってください。閣下がなさりたいように……」

 メルセデスの唇を自身のそれでふさぎ貪る間に、夜着をはだけさせて乳房や胸の頂を手で弄ぶ。彼女の心臓の拍動が手のひらに伝わってくる。

 苦しそうにする前に口づけから解放してやり、続いて首筋に舌を這わせる。思いが通じ合った今日は、無性にこの白いうなじに痕を付けたくなった。しかし忍んできている以上痕跡は絶対に残せないので我慢しなくてはならない。
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