【R-18】【完結】魔女は将軍の手で人間になる

雲走もそそ

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人間編

48:侵入経路について(1)

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「――というわけだ。予想通りだったか?」
「そうですね。確信はありませんでしたが……」

 メルセデスはシヒスムンドから結界の実験の結果を共有された。

「私がこの実験で知りたかったのは、城の者の認識している、つまり地上にある出入り口以外が、存在を許されるかという点でした」

 結果は是。新たに作った出入り口も、結界には許された。

「とはいえ、今回のような方法では、穴をあけたときに一旦検知されてしまいます。ですから、検知されない出入り口の残る可能性は、過去からある既存の誰も知らない通路です。あるとすれば地下ですね。それなら、結界には出入り口として認識されていますから検知されずに通行できます」
「仮にそんなものがあれば、城へ侵入し、後宮へも忍び込んで、侍女の殺害が可能ということか? だが後宮の出入りの厳重さは説明した通りだ。城勤めでもない第三者を通すわけがないし、後宮の壁の警備も穴はない」
「それも必要ありません。その通路が、後宮の中へ続いていれば」

 メルセデスは、シヒスムンドが通ってきた秘密の通路へ視線を向けた。

「まさか……。いや、馬鹿な……」
「以前おっしゃっていましたよね。秘密の通路は、城を築いた時からあって、複数存在すると。この部屋のものだけでなく、もう一本、城壁の外と後宮のどこかをつなぐ道が存在するのではないでしょうか」

 シヒスムンドは黙り込んでしまった。

 有事の際の脱出を主な目的として、代々皇帝にのみ、その存在や開き方、目的地へ着くための正しい道順等の詳細が受け継がれてきた秘密の通路。大前提として、それは極秘の存在なのだ。
 メルセデスへ明かしたことは例外中の例外で、皇帝が暗殺されてしまった場合には、国家のさらなる混乱を避けるため、口封じとして殺されることになっている。

「陛下は通路のすべてをご存じですか?」
「いや……。先帝は多くを遺さなかった。だが、皇帝しか知らないことのはずだ」

 もしも害意のあるものに通行方法が知れていたら。暗殺者が城のどこへでも自由に侵入できる。その可能性にシヒスムンドは慄いているのかもしれない。
 メルセデスはかぶりを振る。

「歴代の皇帝が、誰一人として、秘密を洩らさなかったと断言できますか。例えばその通路は、直接皇帝の居所には繋がっていないから、話してしまっても自分の命は脅かされない、とか」
「代わりに、中に衛兵を置かない、身を守るすべのない女だけの後宮への道を教えたとでも? 何のために?」
「それはわかりません。ただ、少なくとも陛下は安全です。陛下が無防備になる場所への通路は漏れていないか、刺客にそれは使えなかったはずです」
「……そうだな。陛下はまだ生きている」

 それが漏れて通行可能であれば、刺客はわざわざ後宮で網を張ることなどせず、とっくに皇帝を暗殺してしまっているだろう。
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