【R-18】【完結】魔女は将軍の手で人間になる

雲走もそそ

文字の大きさ
上 下
6 / 180
魔女編

5:後宮の洗礼(1)

しおりを挟む
 


 俺を咲樹から受け取ったレイは、下へは降ろさずに、そのまま自分の腕に座らせるように俺を抱える。
 咲樹は、自力でガルムからヒラリと降りた。
「何であの状況で普通にしてられるのよ」
 咲樹がレイを睨む。
 あの状況?
「獣化してると、風の抵抗とかあまり感じなくなるんです」
 風の抵抗?話が全然見えないのだが。
 とりあえず、そろそろ降ろして欲しい。

「新幹線のかと思ったわよ!」
「目も開けてられないって、危うく首から上がなくなるとこだったじゃん!」
「あのスピードじゃ、ただの枝も凶器よ!」
「貧弱な召喚師サモナーじゃ、呼吸困難必至じゃんか!オレの事も少しは考えてあげて!」

 けたたましく話すミロとココアに、何かはわからないが大変だった事だけは理解した。
 でもミロ、貧弱ではないよな。前に舞闘家からサモナーに転職したって言ってたし。
「オレちゃんの舞闘家は、ココアの武闘家と違って、優雅に舞うように戦うんだよ」と自慢げに言ってたよな。
 その後、ココアが自分の一撃必殺の素晴らしさを延々と語って、二人で戦闘談義してたよな。
 ウザい酔っ払い二人の面倒を、オーベに押し付けたのでよく覚えている。


 ワイワイとが話していると、衛兵が一人、コッソリと近付いて来る。
 目が合った。
「あの~、それで話を聞いても良いですかね?」
 多分責任者なのだろう。他の衛兵よりも鎧がちょっと豪華だ。
 頷いてみせると、衛兵の視線がリルへ向く。
 そうだよな。見た事のない魔獣モンスターだし、ガルムよりも大きい魔獣なんてでは見ないだろう。

「すまん。もっと街から離れた所で一度止まるつもりだったのだが……」
 俺の予想以上に速かった。車位のスピードかと思いきや、ココアの言葉を引用すると新幹線並みだったらしい。
「これは、俺の従魔だ。これからギルドに登録する」
 俺の言葉に合わせて、リルがペコリと頭を下げる。空気を読む事はできるらしい。

「身分証はお持ちでいらっしゃいますでしょうか?」
 ちょ、言葉遣いが更に馬鹿丁寧に!
 ギルドカードを渡すと、既に見慣れた行動をされる。だから、何度見直しても年齢は変わらないっての。
 いっそ現実リアルの免許証みたいに、写真付きにした方が良いのじゃないか?
「お返しいたします」
 両手でカードを返された。

「このまま冒険者ギルドの方へ、おいでになられますでしょうか?」
「そのつもりだ。それから、俺はただの冒険者だから、その言葉遣いはやめてくれ」
 背筋がムズムズするから、その馬鹿丁寧な言葉遣いはやめて欲しい。
「いや、しかし……」
 衛兵の視線がチラリとリルを見る。ガルムは先程の伏せ状態で大人しくしているからか、衛兵の今の関心はリルだけだ。
 そのリルは、初めて見るものに興味津々なのか、お座り状態で周りをキョロキョロ見回し、目をキラキラさせている。
 これがはたから見たら、獲物を狙うギラギラした目に見えているのかもしれんが……


しおりを挟む
script?guid=on
感想 12

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

嫌われ女騎士は塩対応だった堅物騎士様と蜜愛中! 愚者の花道

Canaan
恋愛
旧題:愚者の花道 周囲からの風当たりは強いが、逞しく生きている平民あがりの女騎士ヘザー。ある時、とんでもない痴態を高慢エリート男ヒューイに目撃されてしまう。しかも、新しい配属先には自分の上官としてそのヒューイがいた……。 女子力低い残念ヒロインが、超感じ悪い堅物男の調子をだんだん狂わせていくお話。 ※シリーズ「愚者たちの物語 その2」※

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...