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番外編
傍らに君は眠りつつ 3 ★
しおりを挟む明日は晴れるだろうか。
今穂摘が寝転がっている布団は洗わないといけない羽目になっているはずなので、からっと晴れたら助かるが、そうでなくても敷布はすべて引っぺがして洗うつもりだ。けれど、もし乾かなければ明日は一枚の布団で一緒に寝なければいけない。
(それはそれでいいけど……)
「穂摘?」
「ぅんっ、ぁっ、あーっ」
荒い息に胸を喘がせながら、ぼんやりと考えていたのはほんの一秒ほどのはずなのに、穂摘の意識がほかにずれたのをどうしてだか気付いた志郎が声をかけてくる。その吐息すら敏感な体には過ぎる刺激で、ひくっと震えた腰が甘く痺れて、穂摘は自分の少年の方からとぷりと薄いものが吐き出されたのを感じた。
枕を投げつけるようないさかいはなりを潜め、改めて抱きあおうと布団に倒れこんで、どれほど経ったのだろう。
傷つけるつもりはない、大切にすると囁いてくれた志郎は、それはそれは手間を惜しまなかった。
きざしを見せて立ち上がりかけている少年の茎をこすり、その下に隠された淡い狭間にためらいもなく舌を伸ばしたときは素っ頓狂な声をあげてしまったものだったが、今はすっかり羞恥よりも快楽が意識を支配している。法悦の余韻に震える陰茎をうらやましがってか、薄紅色の蜜口が咲きかけの蕾のような襞を震わせると、あやすようにそちらには肉厚な舌や、長い指が差し込まれる。
そうやって甘やかされた穂摘の下腹はすでにぐしょぐしょで、へその辺りは自分が放った薄い精で濡れ、少女の狭間から尻にかけては、溢れた蜜で濡れそぼっていた。一応男同士の場合はこちらでも繋がるらしいと、後蕾にも触れられており、硬く閉じていたはずのそこは、さっきまでくわえていた指を恋しがるように時折くぱっと口を開いては、すぐに窄んでちゅくんと水音を立てていた。
もうこれ以上とろかされたら、それこそ志郎を受け入れるときには力尽きてしまうかもしれない。喘ぐ胸が自分でも驚くほど上下しているのを見ながら、穂摘は乾く喉をごくんと唾で潤した。
「し、しろ、さ……」
「大丈夫か、穂摘。もう少し、慣らした方がいいな」
穂摘をとろかすだけとろかしておいて、志郎は一切なにもさせてくれない。それこそ丸太のように転がるだけの穂摘に献身的に愛撫をほどこすだけほどこしておいて、着衣の乱れすらなかった。
経験こそないが、穂摘だって知っている。まぐわいは、互いに気持ちよくなってこそだ。志郎がしてくれたのだから自分もやらなければと、震える腕をどうにか立たせ、肘で上半身を半ば起こしかけた穂摘だっが、ふいに視界に入ったものに目をむいた。
志郎の股間が大きく膨らんでいる。脚衣を履いているのだが、その前が中からの突き上げに大きく形を変えており、それこそなにか仕込んでいるのではと思う大きさだった。
このふくらみはなんだろう。まさかそんな場所にものをしまう癖はないはずだし、そうなればここに収まっているのは志郎の雄だけということになる。体がそもそも大きいのだからそちらも立派なのかもと思ってはいたが、布を強く押し上げているものは想像以上に大きい気がした。
「あの…志郎さん。前、苦しそう……」
布の下に押し込めらながらもむっくりと膨らんでいるのだ。苦しいのではと声をかけると、慌てたように志郎が腰を引いた。
「す、すまない……」
「志郎さん。俺もしたいです」
「…………それはいい、いいから……」
じわじわと志郎は体を起こして距離を取ろうとするが、されてばかりでは穂摘としても申し訳ない。それに、志郎のものがどれほど大きいのか、そんな立派なものを、志郎がしてくれたように穂摘も育ててあげられるかどうか、純粋に興味があった。
何度も達しすぎてぶるぶるする膝を叱咤し、後ずさろうとする志郎ににじり寄る。そのまま倒れこむと、後ろに逃げようとしていたはずの腕が慌てたように支えてくれた。
「穂摘、俺はいいんだ。お前が良いと思ってくれたら、俺はそれで十分だ」
「でも、俺だけされるのはいやです。俺も志郎さんに気持ち良くなってほしい。……だめですか?」
すっかり志郎の懐に入り込んで、そろりと指先でふくらみを撫でる。やはり布の下はかたく張りつめていて、熱を持ってしっとりとしていた。
志郎は穂摘の茎を舐めてくれたが、穂摘もできるだろうか。あんまり大きければ口に入らないかもしれないが、舐めることはできるはずだ。
ぐいぐいと布を押し上げているので脱がしづらい。志郎さん、と批難するように言うと、あきらめたのか、自ら脱いでくれた。
「……わあ」
むき出しにされた志郎のそれは、とんでもなく大きかった。
ぐんと張りつめた幹は太く、それこそ穂摘の手首ほどもあったし、長さもある。思わず手を思いきり広げて親指から中指までを当ててみたが、それよりもあった。
雁先なんて卵みたい、と思いながらも触れてみるが、嫌悪感はない。むしろびくりと震えた志郎の反応が嬉しくて、そっと顔を近づけてみた。
「穂摘、無理は……うっ」
ついと伸ばした舌先で触れ、大丈夫だろうかと上目で志郎を伺いながら大きな雁先を口に含んでみる。今まで感じたことのない味がしたが、嫌悪感はない。むしろぎゅっと目をつぶった志郎の表情が嬉しかった。
「んぅ……んっ、ふ、ぅん、んっ」
先端がそもそも大きいうえ、長さもあるので全部は含めない。喉の奥をついてえずいてしまわないように、間違えて歯を立ててしまわないようにしゃぶっているうちに夢中になってしまった穂摘は、志郎が体を屈めて腕を伸ばしたことにも気づかずにいた。
「ん、ん……んむっ」
不意に後蕾に感じた異物感に、閉じていた目を開けると志郎の下生えが目前だった。なにをしているのかと体を起こしたいが、苦しくない程度にゆるく上から覆いかぶさられ、身動きが取れない。育ちきって舌を強く押す陰茎をかろうじて口から出してみたが、それでも体を起こすことはできず、それなのに後ろにはぷつりと侵入された。
「ぁうっ……だ、だめ、志郎さん、俺まだ……」
「もう十分だ。あまりされると、俺も……」
「でも、まだ……んぁっ」
少し舐めしゃぶった程度だ。穂摘としてはまだまだやりたかったのに、志郎の指がぬくぬくと尻の谷間を穿つと膝が震えてしまって、それなのにもっとというように腰があがる。我慢できずに志郎の腰にしがみつくと、ようやく体を起こしてくれたが、一度引き抜かれた指は穂摘が仰向けに寝転がると、すぐにまた濡れそぼった狭隘を穿った。
「さっきよりも濡れてるな。前のが垂れて、後ろもぐっしょりだ」
「んんっ、あ、あぁっ」
くちくちと弄られるとたまらない。あぐらを掻いた志郎の膝の上に腰から下をあげられ、なすすべもないまま悶えていると、やがて指が引き抜かれた。代わりに、すっかり反りかえり、多少揺れはしても萎える気配などみじんもない志郎の陰茎が、穂摘のささやかな屹立に添うように腹のうえにどっしりと置かれた。
長く太いそれは、それこそへそまである。穂摘には人の体の中がどうなっているかはわからないが、それでもこんな大きいものが入るだろうかと思った。
すると、その考えを読んだように、志郎が穂摘の腹に触れた。
「俺のはお前のここまで入るかもしれない。……そもそもこんなに細い腰と尻に入る気がしない。もし怖かったら、嫌だと言ってくれていい」
「………」
志郎のものは張りつめて、硬く熱を持っている。さっきまで舌と口腔で慰めていたのだ。どれほど切羽詰まっているかはわかっているだけに、その申し出は志郎の精一杯なのだと思うと、太いものがどっしりと乗っている腹の奥がきゅっと引き絞られるように疼いた。
怖いと言えば、志郎は腰を引くだろう。実際どれほど奥まで入ってくるのか、そもそもこんな太いものが指しか受け入れたことのない場所に収まるのか、不安はある。けれど、彼ならばきっと、恐怖や不安だけを穂摘に残したりはしないはずだ。
「怖くは……あります。怖いです。でも、志郎さんに気持ちよくしてほしいです。……ここに、志郎さんをください」
志郎が腹に当てている手のうえから自分の手を重ねる。すると志郎は空いた方の手で自分の目元を覆い、深く息を吸い込むと、長々とそれを吐いた。
「志郎さん?」
「なんでもない………」
なにかを堪えるようにもう一度深く深呼吸を繰り返すと、志郎はようやく手を顔からはずし、一度腰をひいて腹のうえから雄芯を退かした。そしてまた、穂摘に覆いかぶさるように上体を倒す。狭間に熱いものが触れた。
「あ……」
触れているだけで焼けそうな灼熱のかたまりが、指しか受け入れたことのない蜜口に軽く触れては逃げていく。そのたびに腰が震えるが、単純に刺激に反応するのと同時に、期待と不安が肌を粟立たせた。
「っあ、あ………」
ぬぐ、とひときわ強く押し当てられると、つぼんでいるようだった花処は健気に口を開きだす。押し出されるように声が出て、穂摘は自分の腰が無意識にそるのを感じた。
「ああ、あ、は……ひあっ」
いちばん張り出したところがじりじりと肉輪を広げたかと思うと、ずるんと残りの先端が埋まる。ずんと入口のあたりが重くなった気がした。
異物感はひどいし、まだ半分も収めていないというのに圧迫感もすごい。それなのに、胸のあたりから広がってくるふわふわとした多幸感の方がそういったものを包んでしまって、穂摘は自分に覆いかぶさっている男の首に手をまわした。
互いに息遣いだけだったが、穂摘の動きになにかを感じ取ったのか、雁先が埋まってからは動かなかった志郎が、ようやく動きだした。
「あ、あ、あっ、……あ、大き…んんぅっ」
舐めまでしたものの、信じられないほど太い幹がずるずると穂摘のなかへ埋まっていく。誰かに散らされるどころか、自分でさえめったに触れることのなかった稚い花弁は熱とうるみで真っ赤に熟して、時折陰茎に巻き込まれるように内側に引き込まれては、しっとりと蜜にまみれてまた出てくる。そのたびにまた熱い幹をやわらかく挟んではわなないて、入り切っていない幹を愛撫した。
穿たれているのは少女の花処だったが、少年の証も勃ちあがっていた。二人の間でふるりと揺れては蜜のような少量の先走りをぱたぱたと散らし、時折志郎の腹筋に先端がすれると、また違った快楽が背筋を甘くとろかした。
まるで大蛇が体のなかを這いずるようだ。太くてみっしりとしたものが、入ってくる。けれど臆病なその大蛇は身勝手に動き回ったりはしない。少し進んでは止まり、割り開かれた胎がなじむまで待って、また動きだす。
ゆったりとした動きではあるものの、決して退くことはせず、奥へ奥へと進んでいく。内側から開かれる分、何かが押しだされるようで、声は抑えるまでもなくあふれた。
「は、ぅ……はっ、ああ、あ……ぅ、んん」
「……っく、う」
「ひんっ……」
とん、と奥が持ちあげられた。ぐいっと押されると痛いような苦しいような感じがしたが、それに気付いたのか、志郎の動きが止まった。
「ああ……行き止まりだ」
ずっしりとした重みが下腹の奥に横たわっている。どくどくと脈打っているのがどちらかわからないほどぴったりとはまって、それなのに腹の中に温石を抱えたようで、たまらない熱さと疼きは腰から背筋をたどって、じわじわと体を侵食した。
あの大きなものは、どれほど入ったのだろう。ずいぶんと奥まで入ったように思うが、全部収まったのだろうか。ちゃんと自分は、志郎を受け止められただろうか。そんなことを思わず考えていると、不意に志郎が動きだした。
「あっあ、あ、ひあっ、しろ、さっ」
「穂摘、っう、……うぐ…っ」
熱のかたまりがずるずると出て行ってはまた戻ってくる。長いだけではなく太さもあるので、様々なところがこすれては、そこからじわっと快楽が滲んだ。
「っふ、あ、おく、奥……っ」
とん、とん、と小突かれると少し痛かったのが、徐々に心地よくなってくる。突き上げられる苦しさも、奥からなにかが迫りくるような焦燥感にかき消された。
風が少し吹くだけの静かな夜に、湿った水音が間断なく響く。恥ずかしいと思ったが、真っ赤になっているのは自分だけではない。切羽詰まった顔をして、志郎が穂摘を見ていた。
「穂摘、穂摘……」
顔の横に手のひらが置かれて、そのしっかりとした逞しい手首に思わず顔を寄せる。けれどすぐにもう片手で頬を撫でられた。促されるように視線を戻すと、力強い腰の動きとは裏腹に、触れるだけのようなやわらかい口づけが落ちてきた。
「ふあっ……は、志郎さ…、…んん……」
穂摘がつま先立ちをして手を伸ばしても頭には届かないほどの巨躯である志郎に覆いかぶさられながら口づけをされると、まるで食べられてしまうようだ。けれど、口づけに感じいった体が勝手に胎を締め付けると、その中に収められた志郎の楔が絞めつけられて、びくびくと動く。その動きは穂摘に微弱な快楽を与えると同時に、胸をきゅうっと引き絞られるような甘さをもたらした。
ちゅ、ちゅ、とついばむような口づけをくり返しながら、志郎がまた動きだす。
おそらくは全て埋まっているわけではないのだろう。突き上げられると奥まで穿たれる深さは様々で、けれどもう少し、という感じもある。
出来るだけ体の力を抜きたいが、そうすると今度は徐々に下腹のあたりにわだかまりだした熱が暴れてしまいそうで、実際、体を揺さぶられるたびにゆらゆらと動く茎の先端からは粘り気のあるものが時折ぴゅっと飛んでは穂摘や志郎の腹に垂れていた。
「志郎、さ、っあ……も、全部入りました……っ?」
奥を突かれるたびに、奥が爛れて溶けていくような感覚がする。けれどそれももう持ちそうにない。むずむずとしたものはすでにそこまで迫ってきていた。
「全部、はっ、無理だ」
志郎の声が上ずっている。無理と言われ、奥を突かれて実際無理なのだとは思うが、悦楽に浮いた頭では納得ができない。
「全部、ぜん、ぶっ、いれてっ」
「無理だっ」
「むい、じゃ、んぁっ、……ないっ! いれて、志郎さ…」
胎が動くのを感じる。意識して力を込めているわけではないが、もっと食わせろというようにうごめいている。
「うっ……」
ぐっと志郎がうつむいて、つないだままだった手が強く握られる。挟まれた指のふしが痛い、と思ったのも束の間、ずんとひときわ強く貫かれた。
「ぇあっ」
思わず背がのけぞった。まっすぐ頭まで貫かれたようで、ぐらりと視界も揺れる。
「あ、はあっ……あっあっ、うんっ、ぐ、ふあっ」
腹がやぶけそうに強く穿たれる。手がほどかれて、代わりに両腕で掻き抱かれた。突き入れられると肌があたり、ぱんとくぐもった音が鳴った。
(ぜんぶ、はいった……?)
さっきまでは繋がった場所の肌はあたらなかった。空間があったが、今はもうなくなり、押し当てられると隙間なくくっつく。苦しくないと言えば嘘になるが、全身があわさるとたまらなくて、首にすがりついた。
「ふぅ、うんっ、はっ、あ、―――あ…」
「ほづみ、穂摘っ……」
「んーっ…あっ、あ、おな、か、あついぃ……っ」
突きこまれるたびに熱が溜まっていって、その甘い熱がぐるぐるとわだかまっていく。みっちりと肉杭が埋まっているというのに、隙間から零れたものか、ぬめった蜜がしとどに溢れて、出し入れされるたびに水音を激しくした。
なにかが迫っている。少年の茎で達したことは何度かあったが、胎で達したことはない。これがその感覚なのかがわからないまま追い詰められた。
「っあ、あ、あー……っ!」
「うっ……」
大きく膨れ上がった悦楽が腹の深い場所ではじけたようだった。解き放たれたものが頭を真っ白に染め、体から力を奪っていく。腿が無意識にびくびくと震え、それに連動するように志郎を収めた胎もうごめいた。
達した穂摘を抱きしめ、志郎は最奥を突いたまま動かなかった。突き入れた腰は時折びくっと震える。そのたびに、胎の奥が熱くなった。
「ん、う、ぅん……」
胎の深みにどくどくとなにかを注がれているが、隙間なくみっちりと埋まった杭のせいで漏れることはない。薄い腹の奥に溜まっていくものは、志郎の精液だろう。胎に潜り込んだままの陰茎も十分に質量があるので、それも相まって、心なしか腹が膨らんだ気さえする。達して体から力が抜けた時に志郎の首に絡めていた腕も落ちてしまったが、それをどうにか動かして、自分の指先の感触ですら過敏に震える肌をなぞる。
「……おなか、いっぱい―――…」
指先がたどり着いた下腹は、明らかにぽこりとしていた。そろりと撫でると、下腹の奥深くがひくりと震えた。
「穂摘……大丈夫か」
「ん、ふあ……」
汗みずくになった志郎がようやく体を起こすと、薄暗いながら腹の様子が見える。やはり膨らんでいて、そこを撫でると志郎がごくりと唾を飲んだ音が聞こえた。
「……穂摘」
「はい……んんっ」
声がどうにも掠れてしまっている。隣家とも多少離れているからといって、大きな声をあげすぎたかもしれないと今更ながら赤面していると、志郎ががっしりと肩を掴んできた。
「こ……っ」
「こ?」
「こ、お……」
「こお…?」
どうしたのだろうと思っているうちに、未だ埋まったままの杭が力を戻してたぎってくる。くんっと奥を突かれて、びくっと腰が震えた。
「んあっ……、あ、あっ…また、おっきくなっ……」
「ほ、ほづみっ……、うっ、……ああ―――…」
どくんとまた奥に放たれる。塗りこめるように志郎の腰が動き、まだ敏感な狭隘がその動きに弄られて、穂摘の腹の奥がまた熱く疼いた。
「っふ、う……」
とぷとぷと濃いものが奥にずっしりと溜まる。ようやくもすると止まったようで、慌てたように志郎が腰を引いた。
「あっ、あーっ……んっ、はあ……」
蓋となっていたものが引き抜かれ、ずるずると敏感な襞が擦られる。ぬぽっと粘った音を立てて先端まで抜けると名残惜し気に蜜口がくぱ、くちゅんと開閉し、それからどろりと白濁が溢れてきた。
「あっ…、…あ、出ちゃ……」
思わず脚をすり合わせようとしたが、まだ脚の間には志郎がいる。なすすべもなく志郎の白濁がこぼれていってしまうと、膨らんでいた腹はすっかり平らになった。
布団はすっかりびしょびしょで、こんなにも大量を腹に注がれていたのかと思うも、驚きよりも残念な気持ちが穂摘の表情を曇らせる。けれど、それも長くは続かなかった。
「穂摘。こっ、こ、ここ、子を……いつか、俺の子を……産んでくれるか」
跪いた状態の自分の腿に穂摘の脚をのせたまま、土下座でもしそうに背筋を伸ばして、志郎は言った。薄暗いうえ、寝転んだままの穂摘と体を起こしている志郎の間には距離があり、顔色まではさだかではない。けれど、その表情は緊張に満ちていた。
「今じゃなくていい。お前が授かりたいと思ったときに……」
産んでくれるだろうか、と蚊の鳴くような小さな声が、静かな夜の空気に溶けそうになりながらも穂摘の耳には届いた。
さっと風が吹いて部屋に吹き込み、穂摘は思わずぶるりと震えた。
「冷えはいけない、体にさわ……」
「ください、志郎さん」
傍に放り出されていた薄手の掛布で志郎が穂摘を包もうとしたが、それをさえぎって、穂摘は声をあげた。
「いつかじゃだめです。今がいい……俺が、授かれるなら」
さっきまで満たされていた場所は、そもそもなにも入ったことのない場所だったはずだ。それなのに、あの熱が埋まっていないことが寂しい。それに、中にたっぷりと出されたものが零れていってしまったとき、確かに穂摘は思ったのだ。せっかく出してもらったのに、残念だと。
「もっとください。ここと……俺が、志郎さんを受け止められる場所に、全部」
すっかり空になってしまった胎にも欲しいが、手間をかけることをいとわない志郎は後ろも丁寧にほぐしてくれた。そこでも受け止めきれるなら、命が宿る場所でなくても欲しい。
今日は初夜。たっぷりと抱きあって、自分は志郎のものになり、志郎は自分のものになったのだと実感したかった。
「……穂摘」
大きな体が覆いかぶさってくる。逞しい両腕で抱きすくめられるとほっとした。
この腕に抱きしめられる日々はこれから始まる。けれど、初めての夜は今日しかないのだ。
「ぁ、あ……志郎さん―――……」
一度出て行ってしまった熱い杭が、またもぞもぞと入口をくすぐった後、くぷりとその太い先端をくぐらせてくる。苦しかったはずのそれが徐々に狭隘を広げていく圧迫感を、はあ、と呼吸を逃すことで受け入れながら、志郎の言ったいつかが、きっと来てくれる近い未来を願った。
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