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5.鏡 ★
しおりを挟む「ふ、ぅあ……っ、や、ふかいぃ……」
「俺のものもまあ大きいが、お前の胎の狭いことよ。心地はいいが、すぐにこぼしてしまうな」
山から帰ってすぐ、莢珂は久しぶりに自分で飯をたいらげた。
淫蕩に満ちた七日間の間も食事は立派な膳が運ばれていたが、山神が戯れに寄越してくるのをついばむばかりで、いつ食べたかも忘れるほどだったのだ。
相変わらず無口な女たちが運んできた膳を平らげ、満腹になって思わずうとうとしたところに女たちがそそくさと上掛けなどかけてくれるものだから、そのまま眠ってしまった。
けれど起きれば、既に莢珂は貫かれていた。
拓かれたせいで排泄のためだけに存在していたはずの後孔も男を受け入れられるようになってはいたが、さすがに眠っている間に挿入されれば違和感が勝って、すぐに起きたかもしれない。けれどずっぷりと男根を押し込まれているのは少女の狭間のほうで、腫れぼったく潤んでやわらかいそこは、痛みも異物感もなくすんなりと固く勃起したものを飲み込んでいた。
「あ、あ、んっ、ぁう」
今はそれほど激しくは動いていない。互いに横になり、莢珂の背中には山神の胸がぴったりとくっついていた。その体勢でゆるやかに腰を使われると、眠ったまま穿たれていたことに驚いた狭隘も、ほろほろと煮溶けるように熱くぬかるんでくる。
七日に及ぶ淫らな交歓で、すっかり莢珂の体は快楽を拾えるようになっていた。
激しく揺さぶられれば、腹を中から突き破られるのではないかという恐怖がある。それなのに蕩けた中を掘削するように突かれると腰から下が痺れるように気持ち良くて、前の勃起からは噴くように白濁を散らし、貫かれる花弁からはしとどに蜜を垂らす。その蜜が伝ってまぶされる後孔も、既に貫かれることを知っているためか、小さく口を開いてはくちゅっとはしたない音を立てて窄んだ。
けれど、今は激しく動いているわけではない。互いに横たわっているせいか、山神の動きもゆるやかなもので、だからこそ尚更胎の中に居座るもののずっしりとした長大さがたまらない。ここが住処とばかりに敏感な粘膜をずるずるとこすりあげ、莢珂ですら知らなかった奥の蕾をとんとんとついてくる。苦しくもあったが、その辛さも快楽として莢珂を揺さぶった。
「前も弄ってやろう」
初めは男かと憤っていた山神だが、律動のたびに前で揺られてぱたぱたと汁をこぼす茎に触れることに躊躇いはないようだった。
大きな手のひらで握りこまれると姿を消してしまう程度のものではあるが、それでも莢珂にとっては快感の源の一つでもある。触れられるだけでひりつくような刺激があって、思わず腰が引けたが、引いた腰の後ろは山神なので、より深く陽物を飲み込んでしまっただけだった。
「ぅんっ、っひ、や、ま、まえしないで……いっしょ、されるのやあ……っ」
「一緒は嫌だとて、お前の前はとろけて蜜をこぼしている。放っておくのは酷というものだ」
ざらざらと扱かれると、どこもかしこも追い詰められたようになってわけがわからなくなってしまう。それなのに山神はむき出しの肩をざらりと舐めてきたり、巨大な蛇のようなものをすっかり全部を飲み込んだせいで少しばかりその形が浮き出てしまっている下腹のあたりをとんとんと叩いてきたりするものだから、そのたびに莢珂はびくびくと大きく体を震わせた。
いつの間にか明るかった室内は、夕闇の帳が下りようとしている。山に向かったのは朝だか昼だかだったはずなのに、と朦朧とする頭で莢珂が考えていた時だった。
すすす、と音がして、無意識にその音に顔を向けると、女が入ってきていた。
「……っえ、あっ」
とろけてほろほろと崩れそうだったものが一瞬でぱっと集まったように意識が晴れて、羞恥が莢珂をなぶる。
「やま、やまがっ、ぁん、うっん……や、やまがみ、さまっ」
「なんだ」
「にょ、女人が」
「女人? ああ、俺が呼んだ。……うん? ああ、わかった。上々、上々」
目の前であられもなく繋がり、どちらのものやらわからない体液で敷布にはいくつもの染みを作っているような有様なのに、女人はまったく気にしていない様子でするすると衣擦れをさせながらやってくる。そっと屈んで山神の耳元に口を寄せると、莢珂からはその光景が下から仰ぐ形でよく見えた。
女人が手のひらを添えてなにごとか囁くと、山神はひとつ頷いて機嫌よく口をたわませた。
「昼に祓った呪いはすべて消えた。お前の村に入りこんでいる川も井戸ももう清水だ」
「すべて…ぅあんっ……すべて、ですかっ。ぁひっ、や、おくたたかないで…っ」
もう村は病に侵されないのかと莢珂が問う合間にも、山神はゆるやかに腰を使う。目の前には女人もいるのだし、羞恥は限りなかったが、それでも聞いておきたくて声を張ると、山神は心外だとばかりにぐんと深くを抉った。
「俺を疑うか。蹄陵村だけではない、念のためこの山脈一体の水脈を清めた。根源も断ったことだし、これからはなにごともない。お前、鏡を持ってこい。あとは灯りを四つ」
命令をうけて、女人がするすると部屋を出て行く。彼女の眼下では莢珂と山神がまぐわっていたのに、美しい顔にはいっさいの驚きもなく、むしろ莢珂が目に入っていないのではと思うほどだった。
「やま、がみさまっ」
「うん?」
「ぬいて……ぬいて、くださっ……ぁあっ」
「まだだめだ。前がいやか?」
「そ、じゃなく、てぇっ……」
山神は女人に鏡と灯りを持ってくるように言ったのだ。戻ってきたら、またこの交合を見られてしまう。考えるだけでも顔が熱くなるようで、せめて抜いてくれと懇願したが、そうこうしている間に女人が五人あらわれ、一人が枕元に人の顔ほどもある円い鏡をおき、残りの四人は各々手に持っていた瓦灯と呼ばれるつりがね状の陶器の中に火を灯した行燈を部屋の隅にそれぞれ置いた。
「……っ」
ひとりで戻ってくると思っていたのに、五人にも増えるとは思っていなくて、繋がったままの莢珂はどうしようもない。とっさに引き寄せた上掛けで腰のあたりを覆ったが、その動きにも五人の女人はいっさい反応せず、それぞれ衣擦れの音を立てながら静かに部屋を出て行った。
女人たちはどれほどいるのかわからないが、どの顔も美しい。それこそ、村の若者の中では整っているという程度の莢珂などとは比べようもなかった。
この屋敷に仕えているのだろうが、莢珂などを贄にするより、よっぽど彼女らを相手にした方が楽しめるのでないだろうか。そんなことを考えたところで、ずんと突かれて下腹から脳髄まで痺れが走った。
「ひっ」
「ああ、突いてしまったな」
「や、あ、ふかいぃ……」
腕を伸ばしたついでに突かれてしまったようでも、莢珂にはたまらない刺激になる。ぎゅっと体を竦めていると、引き寄せられた鏡が目の前にきた。
飾りなどまったくない、ただの円い鏡面は部屋の四隅からの明かりを反射している。見たことがないほど磨きこまれてはいたが、鏡がどうしたのかとそれを見ていると、山神の大きな手のひらが鏡面を払うように撫でた。
ゆらりと揺れたのは、見間違いではなかった。
まるで水面のように鏡面がさざめいて、いくつもの波紋が浮かび上がる。やがてその揺れが治まると、そこには夕闇に包まれた農村の風景が映し出されていた。
「む……むら…?」
「蹄陵村だ。見たい場所はあるか」
「あ、んっ……そ、村長の家を…妹がいるんです、茗鈴が…」
山神の指の先がずるりと鏡に沈む。水をかき混ぜるようにぐるぐると動かして手を抜くと、ゆらゆらと揺れていた鏡面はやがて静まり、人が四人座っている座敷の光景が映った。
「めいりん……」
座敷にいたのは、村長とその妻、その向かいに村長夫妻の娘である苑麗と茗鈴だった。それぞれの前には膳があり、夕餉をとっているようだった。
茗鈴を養女にして育てると言ってくれた村長を、信用していないわけではなかった。生まれた時からあれやこれやと親切にしてくれたし、村人に慕われる人格者だ。けれど、それでも茗鈴の最後の家族として自分の目で見るまでは安心できなかったのだ。
「よかった……ごはんも、いただけてる…」
苑麗と茗鈴の膳はほとんど同じだ。茶碗に少しの米があり、わずかな菜が浮く汁ものもある。その前には魚を焼いたものと煮た筍と豆の皿がある。むしろ目の前に座っている村長夫妻の方が魚がないなど一品少なく、けれど二人とも微笑んでなにごとか話をしていて、娘ふたりは笑っていた。
着ているものも、ボロや薄いものではない。むしろ新しいものを着せてもらっていて、家では買ってやれたことのない淡い桃色の羽織りが良く似合っていた。
「妹は健在か」
「はい、可愛がっていただいているようです」
「うれしいか」
「もちろんです。山神様、ありがとうございます。…信じていないわけではなかったですが、妹が心配だったので……」
鏡の中では、なにごとか言われた妹がころころと笑っている。
可愛がられているのだとほっとして、その笑顔を見ていると、鏡の横に伏せられたままだった山神の手がざらりと鏡を撫でた。
「あっ」
今度は、鏡面はさざめきはしなかった。代わりにつるりとしたただの鏡になり、この部屋の天井を写していた。
「山神様、もう少し……」
「今日はお前の願いを叶えてやった。それ以上のこともした。俺には贄を貪る権利がある」
「でも……」
莢珂から村に戻ることは出来ない。戻るすべもわからないのだ。せめてもう少し見せてほしいと肩口を振り返ると、なだめるように目尻をべろりと舐められた。気付かないうちに涙がこぼれそうになっていた。
「また明日、見せてやる」
「ほんとうに…?」
「嘘は言わん。いいから、お前はこちらに集中しろ。そら、胎を破るぞ」
「えっ、あ、や、あうぅ……っ」
鏡をずいと遠ざけられ、代わりに収まったままだった山神の雄蕊が動き出す。
(茗鈴、よかった……)
ゆるく揺すられ、快楽にじわじわと飲み込まれそうな意識の端で思う。けれどその安堵も、穿たれる孔が後蕾になった頃には掻き消えて、今宵も莢珂は快楽の狭間に墜ちるように失神して眠りに浸ることになった。
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