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第四章 波乱の内政・外交編

第7話 聖なる夜に

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木材を外国から急遽取り寄せることにはなったが、タールランド城の暖炉に光が戻り、僕たちはまた温かい格好で執務できるようになった。今回の件について、先程まで審問会を行っていたのだが、審問の結果、決して悪意があってやったわけじゃなさそうだったので(審問会をやらなくても分かってたけど)、今回は始末書の代筆と残りの外国への報告書を、全てホスロが書くということで処分が決定した。審問会が終わって、執務室へと続く廊下を、僕とホスロの二人で歩いていた。

「タイト様。結局、今回審問会を開いたのは、面倒臭い仕事を全て私に押し付けるためだったのでは?」
「おいおい、人聞きか悪いなー(棒)。僕が人に仕事を押し付ける人間に見えるかー(棒)。」
「胸に手を当てて、じっくりと考えてみることをオススメしますな。」

なんて話をしながら、執務室に戻るために、一度外へと出る。この城の三階、特に中央部は、周りを見渡せるバルコニーになっているため、どうしても一度は外に出なければならないのだ。

「やっぱり、夜はより寒いね。」
「そうですな。もうすぐ年末ですからな。」
「そっか………一年は過ぎ去るのが早いね。」
「そうですな。」

バルコニーの手すりまで近づき、ツトゴの街を見る。すると、辺りには色々な飾りつけがしており、人々は皆やけに楽しそうに宴を開いていた。

「そういえば、今日は“聖夜祭”か。」

聖夜祭は、神、人々、聖霊、魔物の世界が、四陣営…つまり、四つの世界に区分されるよりも前に、神が、人々がピンチの際に奇跡を起こし、見事助け出したという神話時代の逸話から誕生した。今は確かに神々とこの世界は分断されてしまっているが、今日この日だけは過去起こった四陣営大戦を気にせず、神に感謝しようという意図も込められている。この逸話が完全なフィクションかと言われると、そういうことでもなかったりする。出所は分かっていないが、しっかりと文献も残っているのだ。聖夜祭とは言うが、大抵の人々はこの祭の本意を知らない。時代が流れるにつれ、その由来を知る者が僕たち王族や、学者、それに教会関係者に絞られるのも、また歴史上何度も同じことが繰り返されてきているからね。歴史の流れとして、仕方がないだろう。

「タイト様、我々も街に繰り出しますか?」
「今日ぐらいは、いいよね?」

僕らは互いに顔を見て、細く笑みを浮かべた。



「さぁ、酒のつまみ、ビーンズの塩茹でが安いよ安いよ~!!」
「オールタイムがいつもの半額だよ~!!」
「聖夜祭特別セールだ~! さぁ、よったよった!」

商人たちは、威勢よく売り出している。周りの人々の喧騒が、商人たちの声と混ざり、暗い夜を照らしている。

「やっぱり、みんな楽しんでるね。」
「そりゃあそうでしょうな。一年に一度の」
「確かに………って、どんだけ食べ物買ってきてるんだよ。」

見ると、ホスロの両手はたくさんの食べ物で埋まっていた。

「大丈夫ですぞ。タイト様の分も買っておきましたから。」
「あはは、ありがと。」

他愛もない会話をしながら、僕らはダモスの中央広場へと歩いていく。

「……座ってゆっくりできるところがないね。」
「タイト様の名前を使えば、一発で空きますぞ?」
「おいおい、それは権力乱用だろ………っと、あ。ホスロ、見てよ、あそこ。」

僕は、中央広場の端の席を指差した。

「おお、ちょうど二人がけのテーブル席が空きましたな。」

よっこいせ、と座る。さっきまで誰かが座っていたのか、椅子の座っていた面だけが温かかった。

「ふぅ~。やっと椅子に座れましたな。今日は立ちっぱなしで腰にきてますよ…。」
「ま、他国に自国の資源を全て流しちゃうようなことをしなければ、審問会に召喚されることもないのにね。」

あはは、と苦笑いしていた。

「まあ、そんなことは忘れて…お酒でも飲みましょうや。」
「あのさあ…………ま、いっか。今日くらいは。」

コップを手に取り、一口飲む。ぐっと、体の奥が温かくなる感覚をおぼえた。周りがとても寒いために、お酒がより美味しく感じられた。

「はい、ホスロ。」

ホスロのコップにお酒をついであげる。

「ありがとうございます。」

手に取ったらすぐに飲み干してしまった。

「…………っぷはぁ! くぅ~染みますなぁ~!」

はしたなく大声をあげる。

「それにしても、今年は色々ありましたなぁ。」
「そうだね。ある意味、充実していたよ。」

僕は、この一年を振り返る。

本来ならば、今頃僕は一領主として執政をしていたのだろう。だけど、父さんが〈ムーン〉の罠にまんまとはまり、暗殺されてしまった。僕が犯人の証拠をなんとか炙り出し、一件落着………と思ったのだが、二人の兄、ジーク兄さんとマクドル兄さんが僕に王の座に就くように薦めてきて…………。結局は王ではなく、あくまでも王代理の執政官として、この国の舵取りをみんなと一緒にやっていくことになった。就任して間もなく、〈ムーン〉が国内で悪事を企んでいるらしいという噂を聞き、現場に向かうと、〈ムーン〉の指導者である、父さんの兄、カルメン・タールがいた。なんとかして捕まえようとしたが、避けられてしまい、自分の弱さを目の前に突きつけられた。その矢先、帝国騎士学校に忍び込み、裏口就職斡旋について調べるように頼まれて、留学生となり、短い間ではあったけれど、たくさんの知識を得ることができて。この一年を過ごして、改めて僕は人に支えられ、そしてまた僕が人のことを支える存在であると思った。
僕は、この一年で、成長できた。間違いなく、ね。

「来年もいい年になるといいな。」
「タイト様、今年一年お疲れさまでした。」
「お疲れさま。」

チン、と乾杯をし、酒を酌み交わした。
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