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第三章 騎士学校、留学(?)編
第7話 支える人 支えられる人
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僕思う。いくらでも他に良い道があるだろうと。
サガミ曰く、正面突破しかないと。僕これ聞いて思う。
非常に…………辛い………と…(涙)
「何書いてるんですか?」
「いや、なんでもないよ。うん。」
ノートの切れ端に、今の心情を古詩みたいに書いたんだよ。別に、少しくらい、いいでしょ?
サガミのもとで、僕は試験科目の総復習をしていた。ついこの間まで、ホスロのもとで、政治のなんたるかを学んでいたが、その数倍はやる量がある。試験は五科目。言語学、数学、薬草基礎学、魔法基礎学、そして帝国史だ。この他にも、魔力測定や、面接、実技試験などがあるらしい。言語学と数学に関しては、政治とともに叩き込まれたため、下地がある。薬学基礎は、兄さん達と山でキャンプをしたときに、教わっており、今もまだ覚えている。帝国史も、屋敷にあった資料をもとに、ある程度は心得ている。
……ただ、問題が一つある。それは、魔法基礎。僕は、これが本当に大っ嫌いだ。かつてホスロに叩き込まれた(肉体的に)が、構造とか魔法式とかを覚えるのが苦手で、全然覚えていない。魔法を使役していれば普通に覚えられるようだが、僕には魔法適性が無いということが判明したために、唱えようとしても絶対に不可能なのだという。ちなみに、今いくつかの特殊魔法を使役することができるが、これはギフト〈為政者〉の効果の一つで、自分の血筋の人物の魔力を根源として、根源魔法が使えるのだ。だから、自信の魔力を使う、普通の魔法を使役することができないのだ。これが非常にネックで、帝国騎士学校の生徒は当たり前のように魔法が使役できるから、僕は今後入学できたとしても、この部分で皆よりも劣ることになる。非常に悩ましい。どう解決すべきか…。
◇
サガミのレッスンが終わり、僕は借りているサガミの屋敷の一室で、くつろいでいた。魔法基礎を効率よく学び、応用し、自分のものとするために、一体なにをすりゃいいんだろうか。うーん……
「―――お困りのようですね、タイト殿。」
「はっ……その声はっ!?」
ばっと後ろを向くと、そこには決めポーズをしたタールランド大臣、マージが立っていた。
「…………………おいくつですか?」
「別に何してもいいでしょう!? 久々の出番なんですからっ!」
ああ、そうだっけか(興味ない)。まあ、なんでもいいや。いいんだけどさ…
「なんでここにいるの?」
「実は、タイト殿が城を発たれた後のことなのですが………」
◇
それは、三日前。タイト殿が、タールランドの城を出発した直後のこと。マクドル殿が、我々にこう仰せになった。
「さて、みんな。……タイトに気づかれないように追いかけようか!?」
大臣たちは、皆驚いた様子で互いの顔を見つめた。私も例外ではない。あの落ち着きがあり、冷静な判断をしっかりと下せるマクドル殿が、突然そんなことを言い出すなんて……まさか、タイト殿に毒されたのか!?
と、思ったくらいだ。『どういう意味だよっ!』
ちょっと、人の回想に口出ししないでくださいよ………ったく。
やっぱり、最初はマクドル殿がどうかされてしまったのではないかと思った人が多かったらしく、すぐにはうなずかなかった。
「しかし、マクドル殿。タイト殿は、我々がここに残ってしっかりと国を守るという約束のもと、出掛けられたのですよ?」
「うん。別に、僕たち全員で追いかけようとは言ってないよ。」
「それなら良いのですが……追いかけて、一体なにをしようっていうんですか?」
大臣達が、マクドル殿に次々と問いかける。
「いや、なにをするのかっていわれても困るなぁ。僕はただ単に、裏からタイトを支えたいんだよ。これまでだって、本来ならば僕がすべき仕事を、代わりにやってくれたからね。恩返しってわけじゃないけどさ、僕にもできることがないかなって、思ったんだよ。」
確かに、マクドル殿は小さい頃から体が弱く、なんでも思った通り、自由に何かをするということができなかった。それをよく、タイト殿は助けていたのだ。タイト殿は、もしかしたら覚えていないかもしれないが…
「し、しかし…どうやって追いかけるというんです?」
「うーん、そうだね……」
「ここは、俺に任せてくれないか?」
ドアの側には、いつの間にかジーク殿が立っていた。
「あ、兄さん。もしかして、話が聞こえていた?」
「当たり前だろ?お前ら騒がしいぞ。上の階にある俺の部屋まで聞こえてきたぞ。」
「そりゃあごめんね。でも、兄さんに任せてってどういうこと?」
「おいおい忘れたのか?…………俺のギフトを。」
「……………ああ、あれのことか。」
「それに、マージの隠匿魔法を掛け合わせれば……最強だよな?」
「は、はあ……」
私に話を振らないでくれっ! なんで私まで巻き込まれるしかないのだっ……
「し、しかし……私は、国内の財務管理をタイト殿から一任されていますので…」
「そんなもの、どうだってなるだろ?」
「さ、左様……ですか……」
むぐっ、むむむっ……メンドクサイ……『おいおいっ!少しくらいは助けるって気持ちを持てよ!』
「それに、ホスロ、お前もついてきてほしい。」
「わ、私ですか? 私にはこれといったスキルはありませんよ……」
「それでも、ついてきてほしいんだよ。…あいつのことを小さいときからずっと見ていて、俺たち兄弟よりもあいつの事を知っているお前に。もしかしたら、あいつは異国の地で困っているかもしれない。困っているときこそ、執政官を助けられる大臣でいなくてはな。」
◇
「で、今に至るわけです。今後は、我々もタイト殿を全力でサポートしますから、頼ってくださいね。」
「ああ、うん。それはありがとうだよ。ありがとうだけどさ。」
思い切り息を吸って……
「なんでジーク兄さんまでついてきてるんだよっ!」
気のせいかもしれないが、部屋の端の影が、驚いたように見えた。………………本当に気のせいかは知らんが。
「まったくもう………みんな、優しすぎるよ。」
僕は、クスクスと笑う。マージも、笑っている。
「ここに来たからには、僕のことをサポートしてもらうよっ!」
ちょっと上から目線かもだけど、遠慮無く言ってのける。
「勿論ですとも!」
マージも、それに応える。ホスロも、それに続いた………気がする。
「さあ、頑張るぞ。早速なんだけど、ここのところがよく分からん………」
「ちょっと、これ基礎問題なんじゃないんですか?」
目指せ、入試突破! みんなが揃えば、怖いものなしだ!
サガミ曰く、正面突破しかないと。僕これ聞いて思う。
非常に…………辛い………と…(涙)
「何書いてるんですか?」
「いや、なんでもないよ。うん。」
ノートの切れ端に、今の心情を古詩みたいに書いたんだよ。別に、少しくらい、いいでしょ?
サガミのもとで、僕は試験科目の総復習をしていた。ついこの間まで、ホスロのもとで、政治のなんたるかを学んでいたが、その数倍はやる量がある。試験は五科目。言語学、数学、薬草基礎学、魔法基礎学、そして帝国史だ。この他にも、魔力測定や、面接、実技試験などがあるらしい。言語学と数学に関しては、政治とともに叩き込まれたため、下地がある。薬学基礎は、兄さん達と山でキャンプをしたときに、教わっており、今もまだ覚えている。帝国史も、屋敷にあった資料をもとに、ある程度は心得ている。
……ただ、問題が一つある。それは、魔法基礎。僕は、これが本当に大っ嫌いだ。かつてホスロに叩き込まれた(肉体的に)が、構造とか魔法式とかを覚えるのが苦手で、全然覚えていない。魔法を使役していれば普通に覚えられるようだが、僕には魔法適性が無いということが判明したために、唱えようとしても絶対に不可能なのだという。ちなみに、今いくつかの特殊魔法を使役することができるが、これはギフト〈為政者〉の効果の一つで、自分の血筋の人物の魔力を根源として、根源魔法が使えるのだ。だから、自信の魔力を使う、普通の魔法を使役することができないのだ。これが非常にネックで、帝国騎士学校の生徒は当たり前のように魔法が使役できるから、僕は今後入学できたとしても、この部分で皆よりも劣ることになる。非常に悩ましい。どう解決すべきか…。
◇
サガミのレッスンが終わり、僕は借りているサガミの屋敷の一室で、くつろいでいた。魔法基礎を効率よく学び、応用し、自分のものとするために、一体なにをすりゃいいんだろうか。うーん……
「―――お困りのようですね、タイト殿。」
「はっ……その声はっ!?」
ばっと後ろを向くと、そこには決めポーズをしたタールランド大臣、マージが立っていた。
「…………………おいくつですか?」
「別に何してもいいでしょう!? 久々の出番なんですからっ!」
ああ、そうだっけか(興味ない)。まあ、なんでもいいや。いいんだけどさ…
「なんでここにいるの?」
「実は、タイト殿が城を発たれた後のことなのですが………」
◇
それは、三日前。タイト殿が、タールランドの城を出発した直後のこと。マクドル殿が、我々にこう仰せになった。
「さて、みんな。……タイトに気づかれないように追いかけようか!?」
大臣たちは、皆驚いた様子で互いの顔を見つめた。私も例外ではない。あの落ち着きがあり、冷静な判断をしっかりと下せるマクドル殿が、突然そんなことを言い出すなんて……まさか、タイト殿に毒されたのか!?
と、思ったくらいだ。『どういう意味だよっ!』
ちょっと、人の回想に口出ししないでくださいよ………ったく。
やっぱり、最初はマクドル殿がどうかされてしまったのではないかと思った人が多かったらしく、すぐにはうなずかなかった。
「しかし、マクドル殿。タイト殿は、我々がここに残ってしっかりと国を守るという約束のもと、出掛けられたのですよ?」
「うん。別に、僕たち全員で追いかけようとは言ってないよ。」
「それなら良いのですが……追いかけて、一体なにをしようっていうんですか?」
大臣達が、マクドル殿に次々と問いかける。
「いや、なにをするのかっていわれても困るなぁ。僕はただ単に、裏からタイトを支えたいんだよ。これまでだって、本来ならば僕がすべき仕事を、代わりにやってくれたからね。恩返しってわけじゃないけどさ、僕にもできることがないかなって、思ったんだよ。」
確かに、マクドル殿は小さい頃から体が弱く、なんでも思った通り、自由に何かをするということができなかった。それをよく、タイト殿は助けていたのだ。タイト殿は、もしかしたら覚えていないかもしれないが…
「し、しかし…どうやって追いかけるというんです?」
「うーん、そうだね……」
「ここは、俺に任せてくれないか?」
ドアの側には、いつの間にかジーク殿が立っていた。
「あ、兄さん。もしかして、話が聞こえていた?」
「当たり前だろ?お前ら騒がしいぞ。上の階にある俺の部屋まで聞こえてきたぞ。」
「そりゃあごめんね。でも、兄さんに任せてってどういうこと?」
「おいおい忘れたのか?…………俺のギフトを。」
「……………ああ、あれのことか。」
「それに、マージの隠匿魔法を掛け合わせれば……最強だよな?」
「は、はあ……」
私に話を振らないでくれっ! なんで私まで巻き込まれるしかないのだっ……
「し、しかし……私は、国内の財務管理をタイト殿から一任されていますので…」
「そんなもの、どうだってなるだろ?」
「さ、左様……ですか……」
むぐっ、むむむっ……メンドクサイ……『おいおいっ!少しくらいは助けるって気持ちを持てよ!』
「それに、ホスロ、お前もついてきてほしい。」
「わ、私ですか? 私にはこれといったスキルはありませんよ……」
「それでも、ついてきてほしいんだよ。…あいつのことを小さいときからずっと見ていて、俺たち兄弟よりもあいつの事を知っているお前に。もしかしたら、あいつは異国の地で困っているかもしれない。困っているときこそ、執政官を助けられる大臣でいなくてはな。」
◇
「で、今に至るわけです。今後は、我々もタイト殿を全力でサポートしますから、頼ってくださいね。」
「ああ、うん。それはありがとうだよ。ありがとうだけどさ。」
思い切り息を吸って……
「なんでジーク兄さんまでついてきてるんだよっ!」
気のせいかもしれないが、部屋の端の影が、驚いたように見えた。………………本当に気のせいかは知らんが。
「まったくもう………みんな、優しすぎるよ。」
僕は、クスクスと笑う。マージも、笑っている。
「ここに来たからには、僕のことをサポートしてもらうよっ!」
ちょっと上から目線かもだけど、遠慮無く言ってのける。
「勿論ですとも!」
マージも、それに応える。ホスロも、それに続いた………気がする。
「さあ、頑張るぞ。早速なんだけど、ここのところがよく分からん………」
「ちょっと、これ基礎問題なんじゃないんですか?」
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