5 / 67
第一章 裏切りの王都編
第4話 小癪な男
しおりを挟む
マージは元々北にあるズール帝国の名高き騎士だった。上り詰められるところまで上り詰めたのだが、ある事件がきっかけで帝国を追放されることになった。
そして、帝国から見て南に位置するタールランドに忍び込み、父ルークに腕を認められて、タールランドの大臣に抜擢されたのだ。
こんなことを言うと恩着せがましいと言われるかもしれないが、少なくともマージは、行き倒れそうなところを父に助けられて感謝をしていたはずだ。それなのにも関わらず、タールランド王を裏切った。これは多分個人的な恨みではないだろう。
「間違いなく、帝国が一枚噛んでるね。」
「きっと、帝国での地位を再び保障するから、タールランドの王を暗殺せよとでも言われたのでしょうな。」
なんとも姑息な者共だ、とホスロは顔をしかめる。
「いや、多分それだけじゃないよ。」
「と言うと?」
「…………脅されてるんじゃないかな?」
「お、脅しですと!?」
一体なんのメリットがあるんだ、とホスロは言ったが、全くもってその通りだ。帝国側には脅すことによるメリットは1つもない。しかも、失敗すれば、外交政策にも影響を及ぼすだろう。それでも実行したということは、確実にうまくいきますよ~という根拠が必要になる。
今回帝国が脅した相手は、タールランドの大臣。
皮肉にも、外交大臣だ。
さっきも言ったが、脅して計画を実行に移そうとしても、もし準備している間に捕まってしまい、尋問中に帝国の名が出てきたら外交破綻にもなりかねない。
でも、脅す相手が大臣なら?
――実行犯として使う相手が大臣やその部下なら?
まちがいなく、隠蔽や隠匿魔法が使われるだろう。そして、もし捕まったとしても、大臣の権力で何もなかったことに出きるだろう。もちろん、ズール帝国に義理立てすることが前提だ。
いくら脅されているとはいえ、タールランドの騎士だ。そう簡単に仲間を売ることはないだろう。
ましてや、かつての友を。
それでも帝国に協力するのだとすれば…
「ホスロの睨んでいる通り、帝国からなにか吹き込まれているんだろうね。」
「何にせよ、大臣が帝国と結託しているという証拠を見つけなければなりませんな。」
「うん。」
そうでなければ、しらを切って逃げられてしまう。
…父の敵を、逃がすわけにはいかない。
「ホスロ、確か明日僕の成人の儀式の時に上級貴族や王族が集まるよね?」
「そうですな。講堂にたくさん集まりますぞ。」
「………そこまでに、決着をつけよう。」
身内の恥を晒すようだが、ここで証拠を突きつけて逃げられないようにするしかない。
とにかく、今は証拠を探そう。期限は、明日だ。
そして、帝国から見て南に位置するタールランドに忍び込み、父ルークに腕を認められて、タールランドの大臣に抜擢されたのだ。
こんなことを言うと恩着せがましいと言われるかもしれないが、少なくともマージは、行き倒れそうなところを父に助けられて感謝をしていたはずだ。それなのにも関わらず、タールランド王を裏切った。これは多分個人的な恨みではないだろう。
「間違いなく、帝国が一枚噛んでるね。」
「きっと、帝国での地位を再び保障するから、タールランドの王を暗殺せよとでも言われたのでしょうな。」
なんとも姑息な者共だ、とホスロは顔をしかめる。
「いや、多分それだけじゃないよ。」
「と言うと?」
「…………脅されてるんじゃないかな?」
「お、脅しですと!?」
一体なんのメリットがあるんだ、とホスロは言ったが、全くもってその通りだ。帝国側には脅すことによるメリットは1つもない。しかも、失敗すれば、外交政策にも影響を及ぼすだろう。それでも実行したということは、確実にうまくいきますよ~という根拠が必要になる。
今回帝国が脅した相手は、タールランドの大臣。
皮肉にも、外交大臣だ。
さっきも言ったが、脅して計画を実行に移そうとしても、もし準備している間に捕まってしまい、尋問中に帝国の名が出てきたら外交破綻にもなりかねない。
でも、脅す相手が大臣なら?
――実行犯として使う相手が大臣やその部下なら?
まちがいなく、隠蔽や隠匿魔法が使われるだろう。そして、もし捕まったとしても、大臣の権力で何もなかったことに出きるだろう。もちろん、ズール帝国に義理立てすることが前提だ。
いくら脅されているとはいえ、タールランドの騎士だ。そう簡単に仲間を売ることはないだろう。
ましてや、かつての友を。
それでも帝国に協力するのだとすれば…
「ホスロの睨んでいる通り、帝国からなにか吹き込まれているんだろうね。」
「何にせよ、大臣が帝国と結託しているという証拠を見つけなければなりませんな。」
「うん。」
そうでなければ、しらを切って逃げられてしまう。
…父の敵を、逃がすわけにはいかない。
「ホスロ、確か明日僕の成人の儀式の時に上級貴族や王族が集まるよね?」
「そうですな。講堂にたくさん集まりますぞ。」
「………そこまでに、決着をつけよう。」
身内の恥を晒すようだが、ここで証拠を突きつけて逃げられないようにするしかない。
とにかく、今は証拠を探そう。期限は、明日だ。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる