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第一章 裏切りの王都編
第3話 不幸中の幸い
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僕は未だに信じられない。
「ど、どうしたの?」
「……ルーク様がっ………………暗殺されましたっ…!」
「え…………」
…………………父が…………………死んだ……?
とても、信じられなかった。
「ホスロ…………王宮に行こう。」
「かしこまりました…と言いたいですが、今は行くべきではないかと。」
「うっ………確かに…そうだね。」
もし暗殺の実行者が王宮内に残っているとしたら、今王宮に向かうのは良くない。ましてや、狙いが王族なら兄さんや僕たちが真っ先に殺られてしまうだろう。
というか、兄さん達は無事なのだろうか?
「ホスロ。ジーク兄さんとマクドル兄さんは?」
「2人ともご無事です。先ほど王宮に参上した際に、私がルーク様についての話を聞いた相手がジーク様でした。マクドル様もお側にいらっしゃいましたが、大分焦燥なされていますな…」
それもその筈だ。ジーク兄さんは、王筆頭補佐官として、ずっと側で父をサポートしてきた。身の回りの変化に真っ先に気づくべきだったのに、気づけなかったのは自身が未熟なせいだと思い込んでしまっているからだ。
だけども、ジーク兄さんは悪くない。暗殺なのだから、気配に気づかないのが普通だ。マクドル兄さんも、体が弱くて腕っぷしに関しては強い方ではなかったが、父によって筆の才覚を認められて文官となり、総務大臣を任せられたのだ。自分のことを見てくれてきた人が亡くなり、とてもつらいだろう。兄さん達のことを淡々と語る僕もつらい。第三王子として、本来ならば王国士官学校を任せられるのだが、僕は悠々とした生活を送りたいとずっと願っていた。その気持ちを包み隠さず話したら、持っている屋敷の1つを僕にくれて、その上資金面でも援助してくれていた。政治の考え方は違っていたが、とてもいい父親であり、とてもいい為政者であったと僕は思う。
さて、問題は暗殺を企てたのが一体どこの勢力なのかということだ。実行犯が王宮にいても、裏で糸を引く輩が同じ所にいるとは考えにくい。…最悪のパターンを予想して、事前に計画を立てておいて正解だった。これも全て、執政のいろはを叩き込んでくれたホスロのお陰だ。
「…………今回の犯人の目星は当然ついてるよね?」
「勿論ですとも。タイト様が放った間者が、昨夜王都に忍び込んできた怪しい者共を見たと言っています。流石にルーク様が暗殺されるとは思っていなかったし、追いかけて見つかっても面倒なので、追わせるのはやめさせてしまいましたがな。そのまま放っておけばよかったです。大変申し訳ありません。」
平たく頭を下げるホスロの顔は、無念さと苦痛で歪んでいた。……ホスロが悪いわけでもないのだ。
「いいんだ。あそこで引かせたホスロの手腕にはやっぱり驚かされるよ。バカはもう少し探らせるからね。」
「滅相もないです。」
「………それで?」
ホスロが意を決して、僕にその者の名を告げる。
「裏で糸を引いているのは……ナトム領主であり外交大臣でもある、マージ・アイザップです。」
え……………まさか、信じられない。
マージは、父の幼馴染だ。
「ど、どうしたの?」
「……ルーク様がっ………………暗殺されましたっ…!」
「え…………」
…………………父が…………………死んだ……?
とても、信じられなかった。
「ホスロ…………王宮に行こう。」
「かしこまりました…と言いたいですが、今は行くべきではないかと。」
「うっ………確かに…そうだね。」
もし暗殺の実行者が王宮内に残っているとしたら、今王宮に向かうのは良くない。ましてや、狙いが王族なら兄さんや僕たちが真っ先に殺られてしまうだろう。
というか、兄さん達は無事なのだろうか?
「ホスロ。ジーク兄さんとマクドル兄さんは?」
「2人ともご無事です。先ほど王宮に参上した際に、私がルーク様についての話を聞いた相手がジーク様でした。マクドル様もお側にいらっしゃいましたが、大分焦燥なされていますな…」
それもその筈だ。ジーク兄さんは、王筆頭補佐官として、ずっと側で父をサポートしてきた。身の回りの変化に真っ先に気づくべきだったのに、気づけなかったのは自身が未熟なせいだと思い込んでしまっているからだ。
だけども、ジーク兄さんは悪くない。暗殺なのだから、気配に気づかないのが普通だ。マクドル兄さんも、体が弱くて腕っぷしに関しては強い方ではなかったが、父によって筆の才覚を認められて文官となり、総務大臣を任せられたのだ。自分のことを見てくれてきた人が亡くなり、とてもつらいだろう。兄さん達のことを淡々と語る僕もつらい。第三王子として、本来ならば王国士官学校を任せられるのだが、僕は悠々とした生活を送りたいとずっと願っていた。その気持ちを包み隠さず話したら、持っている屋敷の1つを僕にくれて、その上資金面でも援助してくれていた。政治の考え方は違っていたが、とてもいい父親であり、とてもいい為政者であったと僕は思う。
さて、問題は暗殺を企てたのが一体どこの勢力なのかということだ。実行犯が王宮にいても、裏で糸を引く輩が同じ所にいるとは考えにくい。…最悪のパターンを予想して、事前に計画を立てておいて正解だった。これも全て、執政のいろはを叩き込んでくれたホスロのお陰だ。
「…………今回の犯人の目星は当然ついてるよね?」
「勿論ですとも。タイト様が放った間者が、昨夜王都に忍び込んできた怪しい者共を見たと言っています。流石にルーク様が暗殺されるとは思っていなかったし、追いかけて見つかっても面倒なので、追わせるのはやめさせてしまいましたがな。そのまま放っておけばよかったです。大変申し訳ありません。」
平たく頭を下げるホスロの顔は、無念さと苦痛で歪んでいた。……ホスロが悪いわけでもないのだ。
「いいんだ。あそこで引かせたホスロの手腕にはやっぱり驚かされるよ。バカはもう少し探らせるからね。」
「滅相もないです。」
「………それで?」
ホスロが意を決して、僕にその者の名を告げる。
「裏で糸を引いているのは……ナトム領主であり外交大臣でもある、マージ・アイザップです。」
え……………まさか、信じられない。
マージは、父の幼馴染だ。
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