66 / 73
3章
59話 ハッピーエンドです
しおりを挟む
巨人兵があっさりと死に、残すところ敵らしい敵はモンスター達数十体となった。
別に大して苦労などしてないが、何せ数が多いためディルレッドはそこそこ面倒くさくなってきていた。
「あー……後どれくらいだ?まだ結構いるし…疲れてねえけど疲れた…」
例のごとく聖天雨の影響で常に体だけは癒され続ける状態にあるため、肉体的疲労だけは訪れず、その反動とばかりに精神的疲労だけが波のように押し寄せる。
「手伝って差し上げた方がよろしいでしょうか?」
大勢のモンスター達を1人で処理しているディルレッドを空中で見下ろしながら、ライアーは言った。
その態度に苦虫を噛み潰したような表情をしながらディルレッドは吐き捨てた。
「お気持ちだけで結構」
「そうですか。それは残念です」
(絶対残念って思ってないだろうな…)
ディルレッドの予想は正しく、ライアーは微塵も残念とは思っていなかった。
笑顔を作りながら口だけで物を言っていた。
しかし、ライアーは一切残念がってはいないんだが、どういう訳かモンスターを斬り始めた。
「おい、お前何考えてんの?」
「貴方を置いて戻ると、お嬢様にいらぬ心配をかけてしまうやもしれませんので」
「あっそ」
不可解な行動に疑問を抱いたディルレッドは、訝しげにライアーを見た。
リリィの事を懸念しての言動に、聞いておきながら興味無さそうに答える。
その後はというと、2人は特に会話をする事も無く黙々とモンスター達を狩り続けた。
「ふぅ…これで全部か」
「そのようですね。では僕はもう戻りますので、後はご自由に」
「俺も戻るからな?!」
モンスターを全て倒した2人はは、剣をゆっくり収めた。
そして、そそくさと戻ろうとするライアーに続いてディルレッドもリリィの元へと足を踏み出した。
「お嬢様!お怪我などはございませんか?」
ライアーが視界にリリィの姿を捉える。
すると、水を得た魚のように生き生きとしながらリリィに駆け寄った。
「私は何も無かったけど…ライアーは?貴方こそ、怪我とかはしてないの?」
心配そうにライアーの顔を覗き込んだ。
しかしライアーは服こそボロボロだったが、その体には一切傷という傷は残っていなかった。
「心配には及びません。この通り、すこぶる調子が良いので!」
「そっか…なら、良かった……」
リリィはほっと胸をなでおろした。
そして安心しきってしまったリリィは、溜まりに溜まった疲れ等から、糸の切れた人形のように気を失い倒れ込んでしまう。
「……ゆっくりと休んでください、お嬢様」
それを支えたライアーは、リリィを抱き上げて街に向けて歩き出す。
その際、後ろでバツが悪そうにしていたディルレッドに少しだけ声を投げかけた。
「どうせ着いてくるおつもりなのでしょう?」
ディルレッドは顔にかかる雨を袖で拭ってから答えた。
「そのつもりだけど」
「なら、勝手にどうぞ。今はお嬢様を安全な所で静養させる事が最優先ですので…貴方の事にまで気を配る余裕はありません」
「そうさせてもらうよ」
こうして、長いようで短い巨人兵との戦いは無事に終わった。
リリィはライアーに今まで聞けなかった事を聞けて。
ライアーはリリィとこれからも一緒にいる事ができる。
ディルレッドはずっと探していた初恋の少女に会えた。
これはまさしくハッピーエンドと言えよう。
そのために多くのモンスターが犠牲となってしまったのだが。
それは、まぁ、仕方ないという事で。気にしないで、リリィ達の話を続けようじゃないか。
ほんの少し。ほんの少しだけ──リリィ達のお話を。
別に大して苦労などしてないが、何せ数が多いためディルレッドはそこそこ面倒くさくなってきていた。
「あー……後どれくらいだ?まだ結構いるし…疲れてねえけど疲れた…」
例のごとく聖天雨の影響で常に体だけは癒され続ける状態にあるため、肉体的疲労だけは訪れず、その反動とばかりに精神的疲労だけが波のように押し寄せる。
「手伝って差し上げた方がよろしいでしょうか?」
大勢のモンスター達を1人で処理しているディルレッドを空中で見下ろしながら、ライアーは言った。
その態度に苦虫を噛み潰したような表情をしながらディルレッドは吐き捨てた。
「お気持ちだけで結構」
「そうですか。それは残念です」
(絶対残念って思ってないだろうな…)
ディルレッドの予想は正しく、ライアーは微塵も残念とは思っていなかった。
笑顔を作りながら口だけで物を言っていた。
しかし、ライアーは一切残念がってはいないんだが、どういう訳かモンスターを斬り始めた。
「おい、お前何考えてんの?」
「貴方を置いて戻ると、お嬢様にいらぬ心配をかけてしまうやもしれませんので」
「あっそ」
不可解な行動に疑問を抱いたディルレッドは、訝しげにライアーを見た。
リリィの事を懸念しての言動に、聞いておきながら興味無さそうに答える。
その後はというと、2人は特に会話をする事も無く黙々とモンスター達を狩り続けた。
「ふぅ…これで全部か」
「そのようですね。では僕はもう戻りますので、後はご自由に」
「俺も戻るからな?!」
モンスターを全て倒した2人はは、剣をゆっくり収めた。
そして、そそくさと戻ろうとするライアーに続いてディルレッドもリリィの元へと足を踏み出した。
「お嬢様!お怪我などはございませんか?」
ライアーが視界にリリィの姿を捉える。
すると、水を得た魚のように生き生きとしながらリリィに駆け寄った。
「私は何も無かったけど…ライアーは?貴方こそ、怪我とかはしてないの?」
心配そうにライアーの顔を覗き込んだ。
しかしライアーは服こそボロボロだったが、その体には一切傷という傷は残っていなかった。
「心配には及びません。この通り、すこぶる調子が良いので!」
「そっか…なら、良かった……」
リリィはほっと胸をなでおろした。
そして安心しきってしまったリリィは、溜まりに溜まった疲れ等から、糸の切れた人形のように気を失い倒れ込んでしまう。
「……ゆっくりと休んでください、お嬢様」
それを支えたライアーは、リリィを抱き上げて街に向けて歩き出す。
その際、後ろでバツが悪そうにしていたディルレッドに少しだけ声を投げかけた。
「どうせ着いてくるおつもりなのでしょう?」
ディルレッドは顔にかかる雨を袖で拭ってから答えた。
「そのつもりだけど」
「なら、勝手にどうぞ。今はお嬢様を安全な所で静養させる事が最優先ですので…貴方の事にまで気を配る余裕はありません」
「そうさせてもらうよ」
こうして、長いようで短い巨人兵との戦いは無事に終わった。
リリィはライアーに今まで聞けなかった事を聞けて。
ライアーはリリィとこれからも一緒にいる事ができる。
ディルレッドはずっと探していた初恋の少女に会えた。
これはまさしくハッピーエンドと言えよう。
そのために多くのモンスターが犠牲となってしまったのだが。
それは、まぁ、仕方ないという事で。気にしないで、リリィ達の話を続けようじゃないか。
ほんの少し。ほんの少しだけ──リリィ達のお話を。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
276
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる