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3章
51話 何だこの会話
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リリィをライアーの所に連れていった事が正解だったというのはあくまでも結果論に過ぎず、そこにはかなりの危険が伴う事はライアーも、ディルレッドも理解している。
だからこそライアーはディルレッドに感謝している反面、怒りを抱いている。
「僕は貴方様を許したわけではありません」
「別に俺も許されたいわけではない」
「ですが…お嬢様をしばしの間だけでも守ってくださった事には感謝してます」
「じゃあもうちょっとそれらしい反応してくれよ」
ライアーは泣きじゃくるリリィの背中を擦りながら、嫌々ディルレッドと会話を続ける。
今ここに、仲間の輪に入りたいディルレッドVS自分達の世界を踏みにじられたくないライアーによる、大人気ない仁義なき戦いが幕を開けようとしていた。
「嫌です」
「だから嫌ですじゃねえよ」
ライアーはいつものように溢れ出る語彙力を活用するわけでもなく、どこかわがままな子供のように嫌ですとだけ繰り返した。
ディルレッドもまた、さっきと同じ反応を繰り返した。
話せど話せど結局この会話に行き着いてしまうような、そんな終わりのない押し問答が繰り広げられる。
そうやってギャーギャーと意味の無い言い争いをしていた2人の頭からはとある事項が失念していた。
それは、今もその猛威を振るわんとする怪物──巨人兵の事だった。
それまでの間、やけに静かだった巨人兵が突如空に向け雄叫びをあげる。
大地が震え、雨雲が1部だけ消し飛び、木々がなぎ倒される。そんな最大出力ともいえる咆哮まともにくらったライアー達は、脳や神経や骨の髄にまで響くその音に体を壊されそうになる。
「お嬢、様…を……お守りしなければ…!!」
膝をつき薄れゆく意識の中、必死にその咆哮の流れてくる自身の後方へと魔力障壁を展開した。
できる限り、少しでもリリィへの被害がマシになるようにとリリィの耳を塞ぎながら。
咆哮の波動で、ライアーの体表に残っていた鱗のようなものがポロポロと落ちる。
その尖った耳からは血が滴り、耳としての機能を失いつつある。
一方、ディルレッドは必死に頭蓋を抑えるようにしてその場に蹲っていた。
あまりの激痛に悶絶し、叫びそうになっていた。穴という穴から血が溢れ出し、内蔵も飛び出してしまいそうなくらいだった。
(ぅ…ぁっ…!いっ、て……口、めっちゃ…血のあじ、する……!!)
そう思ったのもつかの間、ディルレッドの口から血が溢れ出す。
辛くて、痛くて、痛いのに。死ぬわけにはいかないし、何より死ねないのだ。
この辺り一帯にはずっと雨が降っていた。
それは、万物を潤し癒す聖女が残した治癒魔法だった。
それを浴びている限り、人間は何があろうと死なない。
何故なら、負傷すると同時に高速で体が回復していくのだから。
逆に言えば──永遠に苦しみ続けなければならない。
痛みとはある程度受ければ神経が麻痺し、痛みを感じなくなったりもするという。
体が壊れたとして、もう壊れるものが無くなれば壊れる事は無いし、その方が辛くないのかもしれない。
しかしこの雨のせいで、全ての傷は即座に癒され、全ての壊れた内蔵は元通りになり、その人間の限界が半永久的に訪れなくなってしまったのだ。
だからこそライアーはディルレッドに感謝している反面、怒りを抱いている。
「僕は貴方様を許したわけではありません」
「別に俺も許されたいわけではない」
「ですが…お嬢様をしばしの間だけでも守ってくださった事には感謝してます」
「じゃあもうちょっとそれらしい反応してくれよ」
ライアーは泣きじゃくるリリィの背中を擦りながら、嫌々ディルレッドと会話を続ける。
今ここに、仲間の輪に入りたいディルレッドVS自分達の世界を踏みにじられたくないライアーによる、大人気ない仁義なき戦いが幕を開けようとしていた。
「嫌です」
「だから嫌ですじゃねえよ」
ライアーはいつものように溢れ出る語彙力を活用するわけでもなく、どこかわがままな子供のように嫌ですとだけ繰り返した。
ディルレッドもまた、さっきと同じ反応を繰り返した。
話せど話せど結局この会話に行き着いてしまうような、そんな終わりのない押し問答が繰り広げられる。
そうやってギャーギャーと意味の無い言い争いをしていた2人の頭からはとある事項が失念していた。
それは、今もその猛威を振るわんとする怪物──巨人兵の事だった。
それまでの間、やけに静かだった巨人兵が突如空に向け雄叫びをあげる。
大地が震え、雨雲が1部だけ消し飛び、木々がなぎ倒される。そんな最大出力ともいえる咆哮まともにくらったライアー達は、脳や神経や骨の髄にまで響くその音に体を壊されそうになる。
「お嬢、様…を……お守りしなければ…!!」
膝をつき薄れゆく意識の中、必死にその咆哮の流れてくる自身の後方へと魔力障壁を展開した。
できる限り、少しでもリリィへの被害がマシになるようにとリリィの耳を塞ぎながら。
咆哮の波動で、ライアーの体表に残っていた鱗のようなものがポロポロと落ちる。
その尖った耳からは血が滴り、耳としての機能を失いつつある。
一方、ディルレッドは必死に頭蓋を抑えるようにしてその場に蹲っていた。
あまりの激痛に悶絶し、叫びそうになっていた。穴という穴から血が溢れ出し、内蔵も飛び出してしまいそうなくらいだった。
(ぅ…ぁっ…!いっ、て……口、めっちゃ…血のあじ、する……!!)
そう思ったのもつかの間、ディルレッドの口から血が溢れ出す。
辛くて、痛くて、痛いのに。死ぬわけにはいかないし、何より死ねないのだ。
この辺り一帯にはずっと雨が降っていた。
それは、万物を潤し癒す聖女が残した治癒魔法だった。
それを浴びている限り、人間は何があろうと死なない。
何故なら、負傷すると同時に高速で体が回復していくのだから。
逆に言えば──永遠に苦しみ続けなければならない。
痛みとはある程度受ければ神経が麻痺し、痛みを感じなくなったりもするという。
体が壊れたとして、もう壊れるものが無くなれば壊れる事は無いし、その方が辛くないのかもしれない。
しかしこの雨のせいで、全ての傷は即座に癒され、全ての壊れた内蔵は元通りになり、その人間の限界が半永久的に訪れなくなってしまったのだ。
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