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3章
44話 俺も戦おう
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リリィはその虚ろになった自我に残った数少ない願いを口にした。
それは、先程の『早く』に続く言葉だと予想されるものだった。
『早くライアーの所に』理性を失いつつあるリリィがまともに喋られるのは、今はもうこれくらいだった。
「そうでした!ライアーさんを探してたんですよ…!!ライアーさんの力をお借りしたくて…」
受付の女性は思い出したかのように言った。
忘れていた目的を果たすために、女性は様子のおかしいリリィに恐る恐るライアーの所在を聞いた。
「あの、リリィさん。ライアーさんが今どちらにいらっしゃるかご存知ですか?」
「ライアーの所に…ライアー………」
「えっと………あの、ライアーさんはどちらに…?」
何度聞いてもまともに返事をできないリリィに、女性は困惑を極めた。
そして、やがて助けを求めるようにディルレッドの方を見やる。
その視線からは『あなたリリィさんと知り合いなんですよね?私にはどうにもできないのであなたがなんとかしてしてくださいお願いします』といった理不尽が強く感じられた。
「……そのライアーとやらの力を借りたいって言ってたけど、それってどうしてなんだ?」
ディルレッドは今もなお吠え続ける彼の巨大な怪物を念頭に置きながら、受付の女性へとそんな質問をした。
(聞いておいてあれだが…恐らくあの怪物に関連している事は間違いないだろうな。この場にいる者達も、そのほとんどが冒険者ギルドに所属している冒険者だろうからな……リリィとそのライアーという男が冒険者なら、きっとギルドによる討伐隊に2人を組み込みたいという話なんだろう)
受付の女性に質問した割に、ディルレッドの頭の中では大方の予想がついているという。
この場における数少ない情報から、それらの理由をある程度だが把握出来るというのはある種の才覚ともいえる。
しかしそれはあくまでも予想の域を出ない。
だからこそ、それを確認するために問いただしたのだろう。
「そりゃあもちろん、あのモンスターの討伐に力を貸していただきたいからですよ。だってライアーさんは凄くお強いですから」
「そんなに強いのか?」
「はい!リリィさんも凄い魔道士なのですが……なんというか、今はあんまり頼りにならなさそうですね」
会ったばかりの2人のことを、まるで自分の事のように意気揚々と話す。
しかしその最中でチラッとリリィの方を見ては、不安そうに目を伏せる。
ディルレッドはその話を聞いて、相変わらず評価がうなぎ登りのライアーに嫉妬してしまう。
まだ会ったわけでもないのに、どうしてここまで嫉妬できようか。とまで考えてしまう程に。
「……よし。なら俺もその討伐隊に加わろう。こう見えて…というか、見ての通り元騎士団員だからな。一応戦えるさ」
ディルレッドが、この場にいないライアーの代わりと言わんばかりに対抗して討伐隊に参加すると名乗り上げた。
宙に浮かび続けるマントを含め、ディルレッドの身に纏うものは全てこの王国の騎士団の礼服だった。そのため、騎士団員ということは確かに見た瞬間に理解できる。
そして、騎士団は国中から集められた精鋭揃いの国家組織。
それに所属するのは難しく、そこに所属していたというだけで誉れと言われる程なのだ。
それは、先程の『早く』に続く言葉だと予想されるものだった。
『早くライアーの所に』理性を失いつつあるリリィがまともに喋られるのは、今はもうこれくらいだった。
「そうでした!ライアーさんを探してたんですよ…!!ライアーさんの力をお借りしたくて…」
受付の女性は思い出したかのように言った。
忘れていた目的を果たすために、女性は様子のおかしいリリィに恐る恐るライアーの所在を聞いた。
「あの、リリィさん。ライアーさんが今どちらにいらっしゃるかご存知ですか?」
「ライアーの所に…ライアー………」
「えっと………あの、ライアーさんはどちらに…?」
何度聞いてもまともに返事をできないリリィに、女性は困惑を極めた。
そして、やがて助けを求めるようにディルレッドの方を見やる。
その視線からは『あなたリリィさんと知り合いなんですよね?私にはどうにもできないのであなたがなんとかしてしてくださいお願いします』といった理不尽が強く感じられた。
「……そのライアーとやらの力を借りたいって言ってたけど、それってどうしてなんだ?」
ディルレッドは今もなお吠え続ける彼の巨大な怪物を念頭に置きながら、受付の女性へとそんな質問をした。
(聞いておいてあれだが…恐らくあの怪物に関連している事は間違いないだろうな。この場にいる者達も、そのほとんどが冒険者ギルドに所属している冒険者だろうからな……リリィとそのライアーという男が冒険者なら、きっとギルドによる討伐隊に2人を組み込みたいという話なんだろう)
受付の女性に質問した割に、ディルレッドの頭の中では大方の予想がついているという。
この場における数少ない情報から、それらの理由をある程度だが把握出来るというのはある種の才覚ともいえる。
しかしそれはあくまでも予想の域を出ない。
だからこそ、それを確認するために問いただしたのだろう。
「そりゃあもちろん、あのモンスターの討伐に力を貸していただきたいからですよ。だってライアーさんは凄くお強いですから」
「そんなに強いのか?」
「はい!リリィさんも凄い魔道士なのですが……なんというか、今はあんまり頼りにならなさそうですね」
会ったばかりの2人のことを、まるで自分の事のように意気揚々と話す。
しかしその最中でチラッとリリィの方を見ては、不安そうに目を伏せる。
ディルレッドはその話を聞いて、相変わらず評価がうなぎ登りのライアーに嫉妬してしまう。
まだ会ったわけでもないのに、どうしてここまで嫉妬できようか。とまで考えてしまう程に。
「……よし。なら俺もその討伐隊に加わろう。こう見えて…というか、見ての通り元騎士団員だからな。一応戦えるさ」
ディルレッドが、この場にいないライアーの代わりと言わんばかりに対抗して討伐隊に参加すると名乗り上げた。
宙に浮かび続けるマントを含め、ディルレッドの身に纏うものは全てこの王国の騎士団の礼服だった。そのため、騎士団員ということは確かに見た瞬間に理解できる。
そして、騎士団は国中から集められた精鋭揃いの国家組織。
それに所属するのは難しく、そこに所属していたというだけで誉れと言われる程なのだ。
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