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3章
28話 雨降って地固ま…る?
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空に──天に金色の巨大な魔法陣が光り出す。
やがて、ぽつぽつと小さな雫が空から降り注ぐ。
その量は時が経つに連れ、まさしく雨と呼べる程までに増える。
ある程度雨が降り始めたかと思えば、金色の魔法陣はその姿を消した。
それと同時に、私の目の前にあった炎はみるみるうちに息を潜めていく。
無事に鎮火する事に成功し、安堵のあまりその場に座り込む。
「……よかったぁぁ…!何とかなった……」
そうやって魔法陣が消えてもなお降り続ける雨に打たれながら、ほっと胸を撫で下ろす。
すると、後ろの方から雨音に交じってパシャパシャと水と草花を踏みしめる音が聞こえてきて。
「お嬢様!何かお怪我などは…!?」
突然発動した聖魔法に驚いたらしいライアーがこちらに駆け寄ってくる。
聖魔法、及び光属性の魔法は基本的には癒す魔法だ。
だからこそ、それが発動したから私が何か怪我を負ったものと考えているのだろう。
しかし…何て答えよう。
正直に「火事になったから聖魔法で鎮火しようとした」なんて言った日には……確実に、聖魔法の使い方が間違っているとお説教をくらってしまう。
それに、こんな燃えるものしかない場所で考え無しに広範囲の炎の魔法を使った事もバレてしまう。
二重の意味で、実は鬼教師なライアーに怒られてしまう。
それはいやだ。下手をすれば「お嬢様に冒険者など…やはりまだ早かったのですね」って冒険者を辞めさせられる気がする。
それも絶対にいやだ。
どうしたらいいんだろう。
一難去ってまた一難というやつだ。ようやく火を消せたのに、また新しい場所に火が上がってしまいそうだ。
「…お嬢様?もしやお声を発する事が出来ないほど重症なのですか?!今すぐ依頼を切り上げて治癒魔道士の元へ──」
「大丈夫っ!大丈夫だから!!」
ライアーが本当に心配をしてくれているから、罪悪感がまた押し寄せる。
しかし、治癒魔法が扱えないライアーは、私を治癒魔道士なる人の元へ連れていこうとする。
私が重症だとおもっているから。
こんな風に私の事を考えてくれる彼を自分勝手に騙すなんてこと、やはり出来ない。
そうやって不誠実になりたくない。
「大丈夫…なのですか?だとすれば、この雨はいったい何故……」
空から無尽蔵に降り注ぐ聖なる水滴。
それを指し彼は言う。
「それは、ね──」
私はライアーに事の顛末を話した。
スライムを倒そうと張り切って広範囲の炎魔法を発動した事。
それよって火事が起きてその規模が広がりつつあった事。
私には鎮火する手段が全然無くて、やっとの思いで発動できたのがこの魔法だったという事。
私の話を聞いているライアーの顔がみるみるうちに呆れているような、残念なものを見るような、そんな顔に移り変わっていく。
ついにはため息をついて私の前に向き直る。
「お嬢様…言いたい事は山ほどありますが、今は1つだけ──どうして、僕の事を呼んでくださらなかったのですか?」
切れ長で綺麗な瞳が私を見つめてくる。
この瞳には、全てを見透かされているような錯覚さえ起こしてしまう。
たとえ嘘をついてもきっとバレてしまう。そんな予感がした。
やがて、ぽつぽつと小さな雫が空から降り注ぐ。
その量は時が経つに連れ、まさしく雨と呼べる程までに増える。
ある程度雨が降り始めたかと思えば、金色の魔法陣はその姿を消した。
それと同時に、私の目の前にあった炎はみるみるうちに息を潜めていく。
無事に鎮火する事に成功し、安堵のあまりその場に座り込む。
「……よかったぁぁ…!何とかなった……」
そうやって魔法陣が消えてもなお降り続ける雨に打たれながら、ほっと胸を撫で下ろす。
すると、後ろの方から雨音に交じってパシャパシャと水と草花を踏みしめる音が聞こえてきて。
「お嬢様!何かお怪我などは…!?」
突然発動した聖魔法に驚いたらしいライアーがこちらに駆け寄ってくる。
聖魔法、及び光属性の魔法は基本的には癒す魔法だ。
だからこそ、それが発動したから私が何か怪我を負ったものと考えているのだろう。
しかし…何て答えよう。
正直に「火事になったから聖魔法で鎮火しようとした」なんて言った日には……確実に、聖魔法の使い方が間違っているとお説教をくらってしまう。
それに、こんな燃えるものしかない場所で考え無しに広範囲の炎の魔法を使った事もバレてしまう。
二重の意味で、実は鬼教師なライアーに怒られてしまう。
それはいやだ。下手をすれば「お嬢様に冒険者など…やはりまだ早かったのですね」って冒険者を辞めさせられる気がする。
それも絶対にいやだ。
どうしたらいいんだろう。
一難去ってまた一難というやつだ。ようやく火を消せたのに、また新しい場所に火が上がってしまいそうだ。
「…お嬢様?もしやお声を発する事が出来ないほど重症なのですか?!今すぐ依頼を切り上げて治癒魔道士の元へ──」
「大丈夫っ!大丈夫だから!!」
ライアーが本当に心配をしてくれているから、罪悪感がまた押し寄せる。
しかし、治癒魔法が扱えないライアーは、私を治癒魔道士なる人の元へ連れていこうとする。
私が重症だとおもっているから。
こんな風に私の事を考えてくれる彼を自分勝手に騙すなんてこと、やはり出来ない。
そうやって不誠実になりたくない。
「大丈夫…なのですか?だとすれば、この雨はいったい何故……」
空から無尽蔵に降り注ぐ聖なる水滴。
それを指し彼は言う。
「それは、ね──」
私はライアーに事の顛末を話した。
スライムを倒そうと張り切って広範囲の炎魔法を発動した事。
それよって火事が起きてその規模が広がりつつあった事。
私には鎮火する手段が全然無くて、やっとの思いで発動できたのがこの魔法だったという事。
私の話を聞いているライアーの顔がみるみるうちに呆れているような、残念なものを見るような、そんな顔に移り変わっていく。
ついにはため息をついて私の前に向き直る。
「お嬢様…言いたい事は山ほどありますが、今は1つだけ──どうして、僕の事を呼んでくださらなかったのですか?」
切れ長で綺麗な瞳が私を見つめてくる。
この瞳には、全てを見透かされているような錯覚さえ起こしてしまう。
たとえ嘘をついてもきっとバレてしまう。そんな予感がした。
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