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2章
18話 取得試験受験者、リリィ続き
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「まぁたまにある事だが…しくったな……これじゃあろくに魔法使えないは…ず………」
試験官の顔が赤橙色に照らされる。そこには驚愕が色濃く浮かんでいた。
それは、宙に君臨した巨大な爆炎の球体によるものだった。
その真下には魔法陣を維持する事に注力する少女が1人。
彼女は落ちこぼれであろうとした。
しかし彼女には、その努力を嗤うかのような強大な魔力とそれを操る技術があった。
だが今は違う。もう落ちこぼれである必要は無くなった。
彼女は──常識と自重を知らなかった。
更に、過度に勘違いを重ねてしまっていた。
物語のような冒険者に憧れて、冒険者が全てそうだと思い込む彼女は、最初から全力を出してしまった。
それは爆心地を無理やり炎の檻で閉じ込めたかのような火属性の極等魔法。
多大な魔力と引替えに、街一つ滅ぼす程の火力を地に降らす災厄の魔法。
そうとは知らずに、彼女は使ってしまったのだ。人々に絶望を押し付けるその魔法を。
「『煉獄の果てに朽ち果てよ!炎──』」
その巨大な球体を試験官へと向け振らせようとする。
彼女に悪気は無い。悪意だって無い。ただ純粋に、盛大に、異常に空回りしてしまっているだけなのだから。
それが試験官に降り注ぐ直前、その魔法は一瞬にして気化してしまった。
身動きひとつ取れず呆然と立ち尽くす試験官の前に佇むは、黒い燕尾服を身に纏う執事の男で。
「──お嬢様、流石にこれはやりすぎですよ」
あれほどの質量と魔力を持った魔法を、一体どうやって刹那のうちに消滅させたのか。
しかし執事にとってはそんなもの些細な事だった。
突如ライアーは試験を無視してリリィへとお小言を並べ始めた。
魔力配分がおかしいだの規模がおかしいだの…言ってることが全て自分の体を気にしての事だから、リリィは尚更それを聞き流せないようで。
その後もしばらく、ライアーは説教を続けていた。変わらず立ち尽くす2人のギルド関係者を放置して。
「……なん、だったんですか…今の…」
「あんなの戦場ぐらいでしか見たことねぇぞ………しかもあの嬢ちゃん、あんだけの魔法を杖無しでやりやがった」
「嘘でしょ…!?」
「あの男もヤバかったが…嬢ちゃんも中々にやべぇな」
受付の女性と試験官は、つい先程眼前に現れた絶望とそれを使う少女へと知らぬ間に恐怖を抱いていた。
リリィは冒険者へと過剰な憧れを抱いていた。そんな物語に出てくるような冒険者が、冒険者が、実在するはずがないのに。
しかし、今この時。リリィは図らずともその勇者のような事を成してしまった。
実在するはずのない、物語の冒険者のように。
彼女はその強力すぎる力を以て、華々しく冒険者になれたのだった。
そしてこの日は、後に巷で噂となる3人組冒険者パーティの創設者2人が冒険者となった──始まりの日なのである。
試験官の顔が赤橙色に照らされる。そこには驚愕が色濃く浮かんでいた。
それは、宙に君臨した巨大な爆炎の球体によるものだった。
その真下には魔法陣を維持する事に注力する少女が1人。
彼女は落ちこぼれであろうとした。
しかし彼女には、その努力を嗤うかのような強大な魔力とそれを操る技術があった。
だが今は違う。もう落ちこぼれである必要は無くなった。
彼女は──常識と自重を知らなかった。
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それは爆心地を無理やり炎の檻で閉じ込めたかのような火属性の極等魔法。
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そうとは知らずに、彼女は使ってしまったのだ。人々に絶望を押し付けるその魔法を。
「『煉獄の果てに朽ち果てよ!炎──』」
その巨大な球体を試験官へと向け振らせようとする。
彼女に悪気は無い。悪意だって無い。ただ純粋に、盛大に、異常に空回りしてしまっているだけなのだから。
それが試験官に降り注ぐ直前、その魔法は一瞬にして気化してしまった。
身動きひとつ取れず呆然と立ち尽くす試験官の前に佇むは、黒い燕尾服を身に纏う執事の男で。
「──お嬢様、流石にこれはやりすぎですよ」
あれほどの質量と魔力を持った魔法を、一体どうやって刹那のうちに消滅させたのか。
しかし執事にとってはそんなもの些細な事だった。
突如ライアーは試験を無視してリリィへとお小言を並べ始めた。
魔力配分がおかしいだの規模がおかしいだの…言ってることが全て自分の体を気にしての事だから、リリィは尚更それを聞き流せないようで。
その後もしばらく、ライアーは説教を続けていた。変わらず立ち尽くす2人のギルド関係者を放置して。
「……なん、だったんですか…今の…」
「あんなの戦場ぐらいでしか見たことねぇぞ………しかもあの嬢ちゃん、あんだけの魔法を杖無しでやりやがった」
「嘘でしょ…!?」
「あの男もヤバかったが…嬢ちゃんも中々にやべぇな」
受付の女性と試験官は、つい先程眼前に現れた絶望とそれを使う少女へと知らぬ間に恐怖を抱いていた。
リリィは冒険者へと過剰な憧れを抱いていた。そんな物語に出てくるような冒険者が、冒険者が、実在するはずがないのに。
しかし、今この時。リリィは図らずともその勇者のような事を成してしまった。
実在するはずのない、物語の冒険者のように。
彼女はその強力すぎる力を以て、華々しく冒険者になれたのだった。
そしてこの日は、後に巷で噂となる3人組冒険者パーティの創設者2人が冒険者となった──始まりの日なのである。
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