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2章

15話 試験を受けましょう

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 仮ライセンスを発行してもらったその夜は、ギルド近くの宿屋に泊まって日を越した。
そして次の日。私達は正式な冒険者ライセンス取得試験を受けることになった。

 試験内容は現役の冒険者扮する試験官との模擬戦。
そこでどれだけ上手く立ち回れるかで合否が決まるという。
 まぁ簡潔に言うと、試験官に合格!と言わざるを得なくなるくらい実力を発揮すれば良い。

「合格出来るように精一杯頑張らなくちゃ!」

 冒険者ギルド内の一角にて試験への案内を待つ間、胸の前に握りこぶしを作って気合いを入れる。

「気負い過ぎても空回りしてしまうだけですよ、お嬢様。何事も少し肩の力を抜いた方が上手くいくと言うものですし」
「はっ…それもそうね……ちょっとだけリラックスしてみるわ」

 その言葉に従って、少しばかり深呼吸をする。
そうやって肩を小さく上下させていると、ライアーが背中を押してくれた。

「ライセンスの取得試験と言っても、そこまで仰々しいものでは無いと聞いておりますし…お嬢様なら絶対に合格出来ると思いますよ」

 私の実力を把握しているであろう彼にそう言って貰えると、どこからともなく勇気が湧いてくる。

「あなたにそう言って貰えると、本当に心強いわ」
「…僕なんかの言葉でよければ、いくらでも語り聞かせましょう。そうする事で、お嬢様の肩の荷が少しでも軽くなるのなら」
「それじゃあもう少しだけ頼んでもいいかしら?」
「謹んで拝命致します」

 そこから、私は想像以上に饒舌なライアーの褒め言葉の雨に打たれ続けた。
聞いてて恥ずかしさのあまり何度も顔を覆ったりもした。

 そんな恥ずかしすぎるある種の拷問を受けていると、受付の女性が申し訳無さそうな顔で現れて。

「あのー…試験の案内をしようと思ったんですが…その、お邪魔……でしょうか?」
「──いえ。邪魔などではありません。案内の程、お願いしてもよろしいですか?」

 それに対してはライアーがわざとらしいくらい微笑を浮かべて対応していたのだけれど、どこか不自然に間を置いて答えたようにも見えた。

「試験はこちらで受けていただきます。彼が今回の試験官の、Bランク冒険者のマヴィルさんです」
「おう俺がマヴィルだ。アンタらが今日試験を受ける新米だな?ま、気楽に行こうぜぃ」

 女性の案内でギルドの奥へと入っていく。途中の扉を抜けると、小さな修練場のような場所に出た。

 そこに待っていたのは、試験官と紹介された大剣を携えた筋骨隆々の冒険者。
快活に歯を見せて笑っているが、その立ち姿からはやはり歴戦の冒険者たる覇気を感じる。

「剣士のライアーです。どうかお手柔らかに」
「あっ、ええと…魔道士のリリィです。よろしくお願いします!」

 ライアーがスっとお辞儀をしたものだから、慌てて私もそれに倣う。

「冒険者になるって割には礼儀とかしっかりしてんなァ」
「マヴィルさん…やる気がないのはわかりましたから、せめて試験本番はもう少しちゃんとしてくださいね?」
「分かった分かった」

 試験官の方と受付の女性によるなんとも緊張感の無いやり取りを前にして、私自身少し気が抜けてきてしまった。

「全くもう……ごめんなさい、ライアーさん。リリィさん。それでは早速今から試験を行わせていただきます。試験内容ですが…試験官が合格と判断するまでの間、模擬戦闘を続けてもらいます。ただし、試験官が不合格と判断した場合でも試験は中断されます」

女性による試験内容の説明に神経を集中させる。

「以上が基本的な決まりです。ちなみに、どちらが先に試験を受けますか?」

 そうやってこちらに視線を移す。
私とライアーは1度互いを見合い、その後ライアーが1歩前へ出て。

「それでは、僕が先に受けてもよろしいでしょうか?」


 これにより、私たちの冒険者ライセンス取得試験がついに始まったのであった。




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