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2章
小話 回想、エルリデュース視点続き
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極力あの女の事は考えないようにしていた。でも気になってしまった。
そんな中数年振りに出たダンスパーティーで、偶然アルセリア伯爵家の次女と話す機会があった。
「…セレスティア・アルセリアは、伯爵家でどのような扱いを受けているんだ?いい噂はあまり聞かないが」
聞いたはいいものの、この女に期待はしていなかった。
周りから愛されて、大切にされて、何でも与えられて、幸せそうに生きていて……見るからに頭の悪そうなこの女が──オレのような…オレ達のような立場の人間がいると、そう理解できているはずがないと思ったから。
しかし、意想外にもこの女は冷静にセレスティア・アルセリアの事を口述し始めた。
理解しているのかどうかは分からないが。
その口から出た言葉はオレの想像を遥かに超えて悲惨なものだった。
オレと同じように、セレスティア・アルセリアもただ周りから疎まれているだけだと思っていたオレが馬鹿だった。
伯爵家における、セレスティア・アルセリアの扱いがこの女の言う通りならば──それは、生き地獄と形容するに相応しいものだ。
それもここ数年だけなどではなく、幼少期からずっと。
オレが初めて会ったあの日も、すでにその地獄に身を置いていたのかもしれない。
オレと同じだとか、独りぼっち同士だとか、理解し合えるとか…そんな事を言う資格がオレには無かった。
加えてオレは──あんな顔をさせてしまった。
全てを諦めたようなあの女の微笑みが、脳裏を占拠してはそれに心が握り潰されたように痛くなる。
重い鎖を全身に巻き付けられたように、体が…心が重くなる。
あの女は──セレスティア・アルセリアはオレなんかとは比べものにならないくらい苦しんでいる。
馬鹿なオレでも、それくらいは理解できた。
後日オレの傍付きをやっている、元暗殺者の男ハルドフにアルセリア伯爵家の調査任務を命じた。
アルセリア伯爵家の不正や不徳。そして、セレスティア・アルセリアに関する情報をハルドフは多く掴んできた。
調査任務から戻ってきたハルドフから報告された数々の事実は、次女の女に聞いたものよりもずっと酷くて凄惨なものだった。
その扱いは最早奴隷に等しくて、それなのにあの女はずっと笑みを絶やさず過ごしているという。
──伯爵にそう命じられているから。
それを聞いて、体全体が怒りに侵された。
つま先から指の1本1本まで。オレの体は伯爵家に対する怒りで壊れてしまいそうになった。
いつしかオレは、どうすればあの女を救えるかなどと考えるようになった。
偉そうに偽善者ぶって、救世主を気取るかのように。
ハルドフが2度目の調査の際、あの女の執事をしている男に捕まったと聞いた。
その執事は、完全に気配を消すことのできる気配遮断の魔法を使用したハルドフをいとも容易く捕縛したらしい。
しかし、どういう訳かお咎めなしで解放されたという。
「いやぁ、焦りましたよ本当に!まさかあの状態で捕まるなんて…彼は間違いなくただの人間じゃないですねぇ」
なんてふざけた様子でハルドフが報告してきた。
あまつさえ、その後も何度かハルドフが伯爵家に調査に行ったが全て見逃されていたらしい。
そこでハルドフに提案された。
あの女を伯爵家から解放出来るかもしれない方法を。
そんな中数年振りに出たダンスパーティーで、偶然アルセリア伯爵家の次女と話す機会があった。
「…セレスティア・アルセリアは、伯爵家でどのような扱いを受けているんだ?いい噂はあまり聞かないが」
聞いたはいいものの、この女に期待はしていなかった。
周りから愛されて、大切にされて、何でも与えられて、幸せそうに生きていて……見るからに頭の悪そうなこの女が──オレのような…オレ達のような立場の人間がいると、そう理解できているはずがないと思ったから。
しかし、意想外にもこの女は冷静にセレスティア・アルセリアの事を口述し始めた。
理解しているのかどうかは分からないが。
その口から出た言葉はオレの想像を遥かに超えて悲惨なものだった。
オレと同じように、セレスティア・アルセリアもただ周りから疎まれているだけだと思っていたオレが馬鹿だった。
伯爵家における、セレスティア・アルセリアの扱いがこの女の言う通りならば──それは、生き地獄と形容するに相応しいものだ。
それもここ数年だけなどではなく、幼少期からずっと。
オレが初めて会ったあの日も、すでにその地獄に身を置いていたのかもしれない。
オレと同じだとか、独りぼっち同士だとか、理解し合えるとか…そんな事を言う資格がオレには無かった。
加えてオレは──あんな顔をさせてしまった。
全てを諦めたようなあの女の微笑みが、脳裏を占拠してはそれに心が握り潰されたように痛くなる。
重い鎖を全身に巻き付けられたように、体が…心が重くなる。
あの女は──セレスティア・アルセリアはオレなんかとは比べものにならないくらい苦しんでいる。
馬鹿なオレでも、それくらいは理解できた。
後日オレの傍付きをやっている、元暗殺者の男ハルドフにアルセリア伯爵家の調査任務を命じた。
アルセリア伯爵家の不正や不徳。そして、セレスティア・アルセリアに関する情報をハルドフは多く掴んできた。
調査任務から戻ってきたハルドフから報告された数々の事実は、次女の女に聞いたものよりもずっと酷くて凄惨なものだった。
その扱いは最早奴隷に等しくて、それなのにあの女はずっと笑みを絶やさず過ごしているという。
──伯爵にそう命じられているから。
それを聞いて、体全体が怒りに侵された。
つま先から指の1本1本まで。オレの体は伯爵家に対する怒りで壊れてしまいそうになった。
いつしかオレは、どうすればあの女を救えるかなどと考えるようになった。
偉そうに偽善者ぶって、救世主を気取るかのように。
ハルドフが2度目の調査の際、あの女の執事をしている男に捕まったと聞いた。
その執事は、完全に気配を消すことのできる気配遮断の魔法を使用したハルドフをいとも容易く捕縛したらしい。
しかし、どういう訳かお咎めなしで解放されたという。
「いやぁ、焦りましたよ本当に!まさかあの状態で捕まるなんて…彼は間違いなくただの人間じゃないですねぇ」
なんてふざけた様子でハルドフが報告してきた。
あまつさえ、その後も何度かハルドフが伯爵家に調査に行ったが全て見逃されていたらしい。
そこでハルドフに提案された。
あの女を伯爵家から解放出来るかもしれない方法を。
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