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2章

小話 14話ライアー視点

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 僕自身の情報を上手く隠蔽と上書きし、お嬢様の御本名に関しても今の名前で表示されるように、同じくして隠蔽と上書きを行ってライセンスを発行する事ができた。

 これで何事もなく、僕達2人のは誰にも知られることなく冒険者となれる。
お嬢様の『冒険者になりたい』という望みを叶える事ができる。

そうやって、とりあえずは安堵した。

 そもそもお嬢様がご自身の望みを言われる事はほとんど無かった。
 基本的にお嬢様は受動型のお方で、人に何か言われるまで御自身は何もなさらない方だった。

 そうあるべしと旦那様に躾られたから、お嬢様はあまり御自身の意志を持たないようにしていた。

 そんなお嬢様が、以来──少しずつ、御自身の望みを言ってくださるようになった。

 そして今はその望みのうちの1つでもある『冒険者になりたい』という望みを叶えようと、こうして冒険者ライセンスの発行をしていた。

 そこで、正式なライセンス取得試験をいつ受けるのかという話題があがった際、お嬢様がやけに静かに長考し始めた。

 やがてお嬢様の興味はギルド内に併設されている酒好きの溜まり場へと向いたのか、そちらの方を瞳を輝かせて見つめていた。

 多分、お嬢様は色々と勘違いしていると僕は思う。
冒険者になる事にも試験が必要だと聞いて、なにやら明後日の方向に勘違いしてしまっていそうで、心配になってくる。

 ……お嬢様は少々、いやかなり冒険者というものに夢を見ている節がある。

 何せお嬢様の中にある冒険者の知識と言えば、幼い頃妹様と読んでいらしたの絵本が大半を占めているでしょうから。

 物語のようなキラキラした世界は、冒険者達の界隈には存在しないという事を…一体どう伝えればよいのか。

 後になって現実を突きつけられるよりかは、早いうちに僕から話しておいた方がいいだろうとは思っていても、夢を壊すような真似をして、せっかくのお嬢様の望みを叶えられなければ──死んで詫びたくなる。

 いや、僕がいなくなればお嬢様を守る者が居なくなってしまうから、お嬢様が生きている内は絶対に死なないけども。

 兎にも角にも…お嬢様の夢を壊すか望みを壊すか。
選べるのはどちらか1つだけだ。
早く選べ、ライアー。お前はここまで優柔不断な性格では無いだろう。

 そう頭を悩ませていると、受付の女性が話しかけてきた。

 それには当たり障りのないよう受け答える。
しかし…小声で話しているという訳でもないのに、お嬢様は全くこちらに気が付かない様子だった。

 一体どれだけ集中していらっしゃるのか…そしてどれだけ勘違いをしていらっしゃるのだろうか ……。

 表情や仕草からある程度思考を予測する事は出来ても、心を読むことは流石に出来ない。
 
 しかし、お嬢様とはもう長い付き合いになる。完全に心を読めるという訳ではないが、それこそある程度は何を考えているのか分かるようになった。

 だからこそ、今お嬢様がそれはもう盛大な思い込みで勘違いをしてしまっているのではと思ったのだ。

 さて…冒険者ライセンス取得試験の方、何事もなく無事に終わるように務めなくては。



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