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2章
12話 冒険者になりましょう
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ライアーの今までの十数年近くの努力を、私は傍で見てきたにも関わらず全否定してしまったようなものなのだろう。
後悔から懺悔の沼に浸りたくなる。
しかしそうは問屋が卸さない。
私は、1人贖罪に身を賭したかったのだが、先導するライアーがこなれた様子で受付へと辿り着く。
そして、テキパキと冒険者ライセンス発行の手続きを初め出すものだから、私はそんな事を自分だけ考えているのが申し訳なくなって。
それ以上は考えるのをやめてしまった。
「今からお二人様のライセンス発行を致します。それでは、こちらの水晶に順番に手を乗せてくださいますか?」
目の前にとても綺麗な魔水晶が置かれる。
「わかりました…僕からでも構いませんか?」
更にライアーは、小声で「何か良からぬ仕掛けがあるかもしれないので、僕が確認しておきます」と耳打ちしてきた。
私は小さく頷く。すると、ライアーはゆっくりと水晶に手を乗せて。
ガラスのような魔水晶が、瞬く間に力強く輝く青色の光を宿す。
「これは…!?」
その光を見て、受付の女性が驚嘆の声を上げる。
「神官や宮廷魔導師相当の魔力量なんて…?!ほ、本当に冒険者で宜しいのですか?!」
受付の女性が額に汗を浮かべながら、突然謎の確認を取ってくる。
それに対して、ライアーはすました顔で答える。
「もちろん問題ありませんよ」
「そうですか…?それでは、今から仮ライセンスを発行します」
そうやって受付の女性は魔水晶の下に置かれた魔道具を操作する。
すると、ゆっくりとその魔道具から淡い魔力が溢れ出し、カードのような形状を編む。
「えーっと…それではライセンスの個人情報項目の方の確認を行わせていただきます」
カードを手に取り、それに目を落としながら読み上げる。
「名前はライアーさん、種族は人族。職業の方はいかがなされますか?」
ライアーの種族…きっと何かしらの隠蔽工作を行ったのかしら。
受付の女性が読み上げた表示されているそれは、本来の彼の種族とは異なっているもの。
しかしどうやって……?と頭を捻っていると、ライアーが選べる職業の項目を見て吟味していて。
「そうですね……では、剣士にします」
「わかりましたでは剣士に…えぇえ!?剣士ですか?!魔道士ではなく!!?」
にこやかに佇むライアーに向けて受付の女性は叫ぶ。
その保有魔力量から、きっとライアーは魔道士系の職業を選ぶと思っていたのだろう。
しかしライアーは魔道士とは対局に位置するような、純粋な技術で戦う事を主とする剣士を選択した。
だからこそ、受付の女性はそれはもう思い切り驚いているのだと思う。
「あまり魔法を扱うのに慣れていなくて……剣士の方で宜しくお願い致します」
たとえ嘘でも、ライアーが魔法に慣れていないと言うのであれば…きっとこの世界の大半の人が、魔法を使えないという判定になると思う。
それくらい、彼の魔法の知識やその技術は、世間から賢者と評されてもおかしくないくらいなのだ。
何故かライアーは目立つ事を嫌い、そういった事は全くしないようなのだけれど。
「わかりました、剣士の方で登録しておきますね……はい。仮ライセンスの発行の方は完了しました。それではそちらの方もどうぞこちらへ」
受付の女性は、何か煮え切らないようにライアーへとライセンスを手渡す。
そして私の方を見て、笑顔を作り直す。
私は促されるがまま魔水晶の前に立ち、受付の女性の案内を待つ。
後悔から懺悔の沼に浸りたくなる。
しかしそうは問屋が卸さない。
私は、1人贖罪に身を賭したかったのだが、先導するライアーがこなれた様子で受付へと辿り着く。
そして、テキパキと冒険者ライセンス発行の手続きを初め出すものだから、私はそんな事を自分だけ考えているのが申し訳なくなって。
それ以上は考えるのをやめてしまった。
「今からお二人様のライセンス発行を致します。それでは、こちらの水晶に順番に手を乗せてくださいますか?」
目の前にとても綺麗な魔水晶が置かれる。
「わかりました…僕からでも構いませんか?」
更にライアーは、小声で「何か良からぬ仕掛けがあるかもしれないので、僕が確認しておきます」と耳打ちしてきた。
私は小さく頷く。すると、ライアーはゆっくりと水晶に手を乗せて。
ガラスのような魔水晶が、瞬く間に力強く輝く青色の光を宿す。
「これは…!?」
その光を見て、受付の女性が驚嘆の声を上げる。
「神官や宮廷魔導師相当の魔力量なんて…?!ほ、本当に冒険者で宜しいのですか?!」
受付の女性が額に汗を浮かべながら、突然謎の確認を取ってくる。
それに対して、ライアーはすました顔で答える。
「もちろん問題ありませんよ」
「そうですか…?それでは、今から仮ライセンスを発行します」
そうやって受付の女性は魔水晶の下に置かれた魔道具を操作する。
すると、ゆっくりとその魔道具から淡い魔力が溢れ出し、カードのような形状を編む。
「えーっと…それではライセンスの個人情報項目の方の確認を行わせていただきます」
カードを手に取り、それに目を落としながら読み上げる。
「名前はライアーさん、種族は人族。職業の方はいかがなされますか?」
ライアーの種族…きっと何かしらの隠蔽工作を行ったのかしら。
受付の女性が読み上げた表示されているそれは、本来の彼の種族とは異なっているもの。
しかしどうやって……?と頭を捻っていると、ライアーが選べる職業の項目を見て吟味していて。
「そうですね……では、剣士にします」
「わかりましたでは剣士に…えぇえ!?剣士ですか?!魔道士ではなく!!?」
にこやかに佇むライアーに向けて受付の女性は叫ぶ。
その保有魔力量から、きっとライアーは魔道士系の職業を選ぶと思っていたのだろう。
しかしライアーは魔道士とは対局に位置するような、純粋な技術で戦う事を主とする剣士を選択した。
だからこそ、受付の女性はそれはもう思い切り驚いているのだと思う。
「あまり魔法を扱うのに慣れていなくて……剣士の方で宜しくお願い致します」
たとえ嘘でも、ライアーが魔法に慣れていないと言うのであれば…きっとこの世界の大半の人が、魔法を使えないという判定になると思う。
それくらい、彼の魔法の知識やその技術は、世間から賢者と評されてもおかしくないくらいなのだ。
何故かライアーは目立つ事を嫌い、そういった事は全くしないようなのだけれど。
「わかりました、剣士の方で登録しておきますね……はい。仮ライセンスの発行の方は完了しました。それではそちらの方もどうぞこちらへ」
受付の女性は、何か煮え切らないようにライアーへとライセンスを手渡す。
そして私の方を見て、笑顔を作り直す。
私は促されるがまま魔水晶の前に立ち、受付の女性の案内を待つ。
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