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4話 新しい人生の始まりです
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私から手を離した後、一刻が惜しいとライアーは早速作業を始めた。
魔力を編み、魔法で何かを造っているらしい彼の足元を覗き込む。
「これ……人形?」
そこには、土魔法を用いて形作られていると見受けられる土の人形が寝そべっていた。
「はい。これで今からお嬢様と僕の身代わりとなる人形を造ります。その…大変申し訳ないのですが、何か身につけているものを1つ拝借しても構いませんか?」
なんでも、土人形に私の魔力や匂いを宿らせるために必要だとか。
今身につけているのものは学園の制服だから……。
「制服のリボンだけど…これでいいかしら?」
胸元についていた私の髪と似た色の赤いリボンを手渡す。
ライアーはそれを受け取ると「ありがたく使わせていただきます」と会釈し、リボンを土人形に乗せ魔法を発動する。
すると、みるみる内にその土人形が私と瓜二つの外見へと変化していった。
「…わぁっ、凄いわライアー!本当に私そっくり……!!」
それはもう細部まで作り込まれていて。土で出来ているはずなのに、髪の毛や制服の質感もほぼ私そのものという再現度だった。
しかしこれは本当に土魔法なのかしら?
これほどに高度な土魔法見たことないけれど。
ライアーが優秀なのは、主である私が1番分かっているつもりなのだけれど…優秀すぎてわからなくなってくるわね。
「お嬢様の身代わりとなるものですから。衛兵達の目を欺けるように、細部にこそこだわりました」
にこっと微笑みながら言う。
彼はどうやらあの高度な魔力操作を料理感覚で行っていたらしい。
「それでは、少し僕の身代わりも作っておきますのでお嬢様はそちらでお待ちいただけますか?」
そうやってライアーの指す方を見やる。
そこにはいつの間にか、異常なくらい真新しい純白のシーツと枕の乗ったベッドがあった。
「さっきまでかなり薄汚れていたのに、いつの間に……」
ベッドを触ると、ふかふかした最高級の感触が返ってきた。
寝っ転がりたくて体がうずうずしてきて。結局ぼふっと音をたてながら、ベッドへと体を預ける。
天使様の羽に包まれているような、そんな錯覚に陥るくらいこのベッドの寝心地は最高だった。
「気持ちいい……」
「お気に召していただけたようで幸いです」
そんな令嬢らしさを欠いた私のだらけた姿を見てライアーが微笑む。
そんな彼の足元には、すでに人形がもう1つ出来ていて。
「ねぇ、私達そっくりの人形を作るっていうのはわかるのだけれど…どうやってそれを身代わりにするのかしら?」
いくらものすごい完成度の人形でも人間とは違いがあるのだから、衛兵達にバレてしまいそうなものだけど。
しかし、あのライアーが考え無しな訳が無かった。
「それに関しては、傀儡魔法を使って人形を遠隔で操ろうかと。それに加えて幻覚魔法を使用し、要所要所をより1層人間らしく見えるようにするつもりです」
傀儡魔法に幻覚魔法…それはどちらも高等魔法と呼ばれる、精神操作系の魔法の中でも使用がかなり難しいとされる2つだ。
それを当たり前のように行使しようとするなんて………流石としか言えない。
「本当になんでもできてしまうのね、ライアーって。私には勿体ないくらいの執事だわ」
「……僕がこうして執事として生きることができるのは、お嬢様にお仕えさせていただいている時だけですよ」
そう言ってはおもむろに立ち上がる。
その人形達の下に魔法陣が浮かび上がったかと思えば、人形達が二足で直立し、肩や胸がゆっくり動き出す。
まるで本当に生きているようだった。
「さて、お嬢様。僕達はそろそろこの牢屋を抜け出しましょう」
ライアーの色々な魔法のおかげで、私達は牢屋を──王城を難なく抜け出した。
そして目にする事となる。自分と瓜二つの人形が処刑される様を。
この日、セレスティア・アルセリアは確かに処刑された。
そして、私という人間の新しい人生が幕を開けた。
魔力を編み、魔法で何かを造っているらしい彼の足元を覗き込む。
「これ……人形?」
そこには、土魔法を用いて形作られていると見受けられる土の人形が寝そべっていた。
「はい。これで今からお嬢様と僕の身代わりとなる人形を造ります。その…大変申し訳ないのですが、何か身につけているものを1つ拝借しても構いませんか?」
なんでも、土人形に私の魔力や匂いを宿らせるために必要だとか。
今身につけているのものは学園の制服だから……。
「制服のリボンだけど…これでいいかしら?」
胸元についていた私の髪と似た色の赤いリボンを手渡す。
ライアーはそれを受け取ると「ありがたく使わせていただきます」と会釈し、リボンを土人形に乗せ魔法を発動する。
すると、みるみる内にその土人形が私と瓜二つの外見へと変化していった。
「…わぁっ、凄いわライアー!本当に私そっくり……!!」
それはもう細部まで作り込まれていて。土で出来ているはずなのに、髪の毛や制服の質感もほぼ私そのものという再現度だった。
しかしこれは本当に土魔法なのかしら?
これほどに高度な土魔法見たことないけれど。
ライアーが優秀なのは、主である私が1番分かっているつもりなのだけれど…優秀すぎてわからなくなってくるわね。
「お嬢様の身代わりとなるものですから。衛兵達の目を欺けるように、細部にこそこだわりました」
にこっと微笑みながら言う。
彼はどうやらあの高度な魔力操作を料理感覚で行っていたらしい。
「それでは、少し僕の身代わりも作っておきますのでお嬢様はそちらでお待ちいただけますか?」
そうやってライアーの指す方を見やる。
そこにはいつの間にか、異常なくらい真新しい純白のシーツと枕の乗ったベッドがあった。
「さっきまでかなり薄汚れていたのに、いつの間に……」
ベッドを触ると、ふかふかした最高級の感触が返ってきた。
寝っ転がりたくて体がうずうずしてきて。結局ぼふっと音をたてながら、ベッドへと体を預ける。
天使様の羽に包まれているような、そんな錯覚に陥るくらいこのベッドの寝心地は最高だった。
「気持ちいい……」
「お気に召していただけたようで幸いです」
そんな令嬢らしさを欠いた私のだらけた姿を見てライアーが微笑む。
そんな彼の足元には、すでに人形がもう1つ出来ていて。
「ねぇ、私達そっくりの人形を作るっていうのはわかるのだけれど…どうやってそれを身代わりにするのかしら?」
いくらものすごい完成度の人形でも人間とは違いがあるのだから、衛兵達にバレてしまいそうなものだけど。
しかし、あのライアーが考え無しな訳が無かった。
「それに関しては、傀儡魔法を使って人形を遠隔で操ろうかと。それに加えて幻覚魔法を使用し、要所要所をより1層人間らしく見えるようにするつもりです」
傀儡魔法に幻覚魔法…それはどちらも高等魔法と呼ばれる、精神操作系の魔法の中でも使用がかなり難しいとされる2つだ。
それを当たり前のように行使しようとするなんて………流石としか言えない。
「本当になんでもできてしまうのね、ライアーって。私には勿体ないくらいの執事だわ」
「……僕がこうして執事として生きることができるのは、お嬢様にお仕えさせていただいている時だけですよ」
そう言ってはおもむろに立ち上がる。
その人形達の下に魔法陣が浮かび上がったかと思えば、人形達が二足で直立し、肩や胸がゆっくり動き出す。
まるで本当に生きているようだった。
「さて、お嬢様。僕達はそろそろこの牢屋を抜け出しましょう」
ライアーの色々な魔法のおかげで、私達は牢屋を──王城を難なく抜け出した。
そして目にする事となる。自分と瓜二つの人形が処刑される様を。
この日、セレスティア・アルセリアは確かに処刑された。
そして、私という人間の新しい人生が幕を開けた。
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